本をこよなく愛する本屋店主5名の、心に響いた一冊をご紹介。店主のまっすぐな言葉で本の魅力をお届けします。紹介してくれるのは、本と静かに向き合える余白の時間を大切にするtwililight店主・熊谷充紘さん。熊谷さんの心に響いた“この一冊”、今回は『全ての装備を知恵に置き換えること』です。
熊谷さんが選ぶ“この一冊”
『全ての装備を知恵に置き換えること』
読み継がれてほしい本を教えてくれた、熊谷さん。今回おすすめしてくれたのは、石川直樹著『全ての装備を知恵に置き換えること』です。

『全ての装備を知恵に置き換えること』(石川直樹著 集英社文庫)
中学生のころ、ここには何もないと思って、大学は絶対に上京してひとり暮らしをしようと決めた。
いざ東京で暮らし始めてみて実感したのは、ここには何もかもあるようだけれど、自分自身が空っぽだったら、どこにもアクセスできないということだった。
東京出身の友人は、長い休みがあるたびに日本の辺境に出かけて心の底から楽しんでいるようだった。私は無力な自分を認めたくないばかりに、ずっと環境のせいにしていたのだ。
友人に文化人類学の本などを教えてもらい、少しずつ、自分がいまいる足元にも、長い歴史があり、何もない土地などないと気づくようになる。そんななかで出合ったのが『全ての装置を知恵に置き換えること』だった。
石川直樹さんにとって、東京も海も山も極地も空も同じ旅先のひとつだった。
自分の価値基準で判断をせず、身の回りの環境を受け入れて、自分の変化を受け入れること。
あらためて取り出した地元の地図が急に魅力的に見え出したあの瞬間を、いまも忘れていない。
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天然生活2025年12月号では、「本屋店主の心に響いた、この一冊」を紹介しています。twililight・熊谷充紘さんをはじめ、魅力的なお店を営む5名に、歩みを照らしてくれた本を教えていただきました。あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。
〈文/熊谷充紘〉
熊谷充紘(くまがい・みつひろ)
東京・三軒茶屋で本屋・ギャラリー・カフェを併設した「twililight」を営む。2011年3月11日の震災を機に会社員を辞め、編集やイベント企画を経て、2022年3月11日に店舗をオープン。選書・執筆・出版を手がけ、本と静かに向き合える余白の時間を空間に反映する。自社で復刊した「体の贈り物」はこの秋重版に。
HP:https://twililight.com/
インスタグラム:@twililight_






