(『天然生活』2025年1月号掲載)

子育てで迷うとき、悩むとき、背中を押してくれた言葉
かく考えてみれば意志の発展完成は直ちに自己の発展完成となるので、善とは自己の発展完成であると言うことができる。
即ち種々の能力を発展し円満なる発達を遂げるのが最上の善である
西田幾多郎著『善の研究』より
日本の哲学者で明治の終わりに独創的な哲学を打ち立てる。
「生きるとは何か、善とは何か、他者とどう関わるべきか。人間としての根本的な問題定義は一見難しく感じますが、実は日々の生活にも密接に関係していると感じました」
初版は1911年。有名な哲学書なので前々から知ってはいたのですが、いいまわしの難解さに正直、立ち読み止まりでした。
のちにNHKテキストの「100分de名著」シリーズから『善の研究』が出版され、解釈付きなことも手伝ってスルスルと内容が入ってきました。
「善とは?」という普遍的な問いに対する答えは、すがすがしいくらいの自由さや解放感で胸がすく思いでした。
わが家には3人の子どもがいますが、皆もって生まれた個性や気質があります。
同じ親から生まれて同じ環境下で育ったにもかかわらず、感じ方や捉え方は違う。
その凸凹を均等にすることなく受け止める。
「こんなこともできないの?」と、普通や平均を物差しにすることなく、どんと構えていられるようになったのは、この言葉のおかげです。
<イラスト/平野瑞恵 取材・文/結城 歩>

根本きこ(ねもと・きこ)
「波羅蜜」の料理担当。2011年から沖縄で暮らし、今帰仁(なきじん)でカフェ「波羅蜜(パラミツ)」を夫の潤士さんと営む。著書は「カレー、ときどき水餃子」(KADOKAWA)。インスタグラム@paramitajunji
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです





