先取り準備と家事動線の確保で「使える」家に
自分はどんな暮らしがしたいか、何をしているときが楽しいか、
どう家事を進めたいかがわかれば、自然と「使える家」になります。
一級建築士として数多くの住宅設計を手がけてきた田中ナオミさん。
夫婦で暮らす住まい兼事務所も、みずから設計を担当しました。
田中さんが考える「家」は「道具」。
そこに住む人にとって便利で使い勝手がいいことが一番大切だといいます。
「人によって『使える』の基準は違います。自分はどんな暮らしがしたいのか、何をしているときが楽しいか、好きな家事の進め方はどういうものか。それがわかっていれば自然と、自分にとっての『使える』家に整えていけるはずです」
田中さんの場合、住み手として重要視しているのは家事をするうえでの動線がいいこと。
できる家事は先取りして進め、ときにはふたつ以上を同時進行させながら、自分のために使える時間を捻出してきました。
そうやって得た時間でジムに行ったり、存分に仕事をしたり、畑で作業をしたりするのが何よりの楽しみ。

料理をしながら洗濯も同時にしたい田中さんにとって、洗濯機は冷蔵庫の横がベストポジション。キッチンカウンターの中には洗剤や柔軟剤を置く棚を設置し、その場から動かなくても洗濯に関する一連の動作ができるようになっている

ほかの家事をしている間も、すき間時間を見つけては夕食の支度を先取り。味噌汁のだしをとったり、煮ものに味を含ませたり

子どものころはよくいわれた「明日の支度」を大人になったいまも実践中。そのひとつが朝食用の食器を前日に準備して出しておくこと。夫婦ふたり分の茶碗、汁椀、土鍋をカウンターに並べておく。台所に立ったついでにできる先取り家事を増やせば、次のアクションが楽に
「家事をしやすくするには、まずものの場所がちゃんと決まっていること。これは絶対ここにあるという前提で動けるとそれだけでかなり時短になります。私は酔っぱらっていても、帰ってきたらバッグの中のものを定位置に戻すんですよ。われながら偉いなと思っています(笑)」

サングラスや財布などの小物はトレイにまとめてテーブル上に常備
ものの場所が定まっていることでやりやすくなるのが、明日の支度。
天気予報をチェックして、予定に合わせた荷物を準備し、選んだバッグの中に入れ、洋服と靴のコーディネートを考えておけば、起きたら何も考えずに用意したものを身につけて出かけるだけ。
朝のドタバタ解消と忘れ物防止に役立っています。

「翌日のバッグは、スポーツジムと仕事用を準備してダイニングにスタンバイ。洋服はウォークインクローゼットの入り口にまとめて置いておきます。それが一番、効率がいいから、見栄えよりも『使える』かどうかを優先して整えていますね」
本記事は、『暮らしのまんなか vol.42』(扶桑社ムック)からの抜粋です。
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家事や暮らし、部屋づくりのアイデアが満載。
11人の「整える」が登場します。
家族、仕事、自分時間など、暮らしのまんなかにある大切にしているものをお聞きするため、みなさんのご自宅におじゃました。今回登場してくださったのは、「北欧、暮らしの道具店」の佐藤友子さん、「日用美」の浅川あやさん、金工作家の川地あや香さん、建築家の田中ナオミさんをはじめとする11人。「整える」を軸に、日々の工夫とアイデアを伺いました。第1章は「暮らしを整える」、第2章は「家を整える」、第3章は「心と体を整える」です。料理は、ウー・ウェンさんの「心と体をゆるめる料理」。読み物は、健康寿命をのばすお風呂の入り方です。今号から、文筆家・一田憲子さんのエッセイ連載がスタートします。
<取材・文/片田理恵 撮影/濱津和貴>
田中ナオミ(たなか・なおみ)
一級建築士、NPO法人家づくりの会会員、一般社団法人住宅医協会認定住宅医。1999年、「田中ナオミアトリエ一級建築士事務所」を設立。住み手を笑顔にする住宅設計者として活躍。著書に『60歳からの暮らしがラクになる住まいの作り方』(主婦と生活社)など。
http://nt-lab.na.coocan.jp/
<訪ねた人>
片田理恵(かただ・りえ)
編集者・ライター。大学卒業後、出版社勤務を経てフリーランスに。住まいや食、子育てなど、暮らしをテーマにした取材・執筆を手がける。2023年より、司書としても活動中。






