(『天然生活』2025年3月号掲載)
香りでゆるめる、ハーブとアロマ
標高1100メートルの高原にある、小さな西洋薬草店。「蓼科ハーバルノート・シンプルズ」の扉を開けると、ふわりとやさしい香りに包まれました。
思わず肩の力が抜けて、リラックス。「これはどのハーブともいえない、ショップだけの香りなんですよ」と、萩尾エリ子さんは話します。
「少し緊張した面持ちで訪ねてくださる方も、ここに入るとひと呼吸して、お顔がふっとゆるみます。ここに来られない方にも、そんな安らいだ時間をもっていただけたらと思うんです」
夏の光を蓄えた針葉樹で、呼吸を深め、活力を養って
ストレスが多く、緊張を抱えがちな現代人にとって、体をゆるめることは養生の基本であり、これからやってくる春への準備にもなる、と萩尾さん。
とくに、厳しい冬が終わりに近づき、春はもう少し、というころは「疲れもたまり、うつうつとふさぎがちになりやすいときですね」と話します。
「ここぞ、というとき力を出すためにも、ゆるめて休むことは大切。ハーブや精油の力を借りて、まずは呼吸を深くし、体の内からも外からも抱きしめるように温めてあげましょう」
しかし、凍てつく薬草店の庭にはまだ、ハーブの姿はみあたりません。そんなときにと萩尾さんが手を伸ばしたのが、針葉樹の枝。
ぽきんと手折ると、さわやかで心地よい香りがすうっと鼻を抜けていきます。

落葉樹が葉を落とした冬の森林浴。針葉樹のエネルギーを枝葉から受け取って。「力をもらえる香りです」
「モミの木やヒノキ、松など、1年を通して色鮮やかな葉を茂らせる針葉樹は、呼吸が深まるのを助けながら、活力を与えてくれる芳香を秘めているんです。夏の間に、たくさんの光を蓄えていたのでしょうね」
数種類の針葉樹を組み合わせると、まるで森を歩いているような、立体的で奥深い香りに。
サシェにして湯たんぽに忍ばせれば、熱とともにほんのり香りが立ちのぼり、使用後はバスハーブとしても活用できます。
深呼吸でめぐりをよくし、しっかりと温まったら、仕上げに甘い飲みものを。熱々を口にすれば、おなかにポッと灯がともります。
「摂生もいいけれど、寒さの残るこの時季くらい、自分にやさしくしてもいいんじゃないかしら。四季とともに移ろう体の声に耳を傾けながら、穏やかに淡々と、日々を歩いていきたいものです」
<監修/萩尾エリ子・永易理恵 撮影/ミズカイケイコ 取材・文/玉木美企子>
萩尾エリ子(はぎお・えりこ)
ハーバリスト。ナード・アロマテラピー協会認定アロマ・トレーナー。日々ショップという場から植物の豊かさを伝えることを喜びとする。著書に『風の飲みもの、光のおやつ』(扶桑社)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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