• さまざまな工夫で、自然の恵みを生かしながら暮らす。そこにはお金には代えられない喜びがありました。今回は、八ヶ岳南麓に暮らし、人間も自然も豊かに生きる生活を実践する生活庭園研究家・四井千里さんの、環境にやさしい豊かで楽しい節約生活を拝見します。
    (『天然生活』2025年3月号掲載)

    豊かな土をつくることが自分たちにとっての貯蓄

    四井さんの毎日は、仕事と暮らしが切れ目なくつながっています。春から秋にかけては野菜の植え付けや収穫など、畑で大忙し。農閑期の冬はストーブ用の薪づくりや、保存食づくりに勤しみます。加えて、動物の世話や日々の家事など、休むひまはありません。

    画像: 飼っているのは名古屋コーチン。ヤギの「ゆき」とともに暮らす小屋は、堆肥小屋でもある。動物たちの排泄物や毎日入れる野菜くずが土に還る

    飼っているのは名古屋コーチン。ヤギの「ゆき」とともに暮らす小屋は、堆肥小屋でもある。動物たちの排泄物や毎日入れる野菜くずが土に還る

    「でも、どれも楽しみながらしていること。やらなければいけない仕事だという感覚はあまりないし、週末にどこかへ遊びに行きたいとも思わないですね」

    ときには近所の人と一緒に味噌づくりをするなど、ここには困ったときには助けを求められる心強いコミュニティもあります。そして何にも代え難いのは、さまざまな動植物が集まる豊かな土です。

    「おいしい野菜がたくさんとれることはもちろん、菜園からエネルギーをもらえるんです。毎日土に向かうことに幸せを感じています」

    画像: 日当たりのいい軒下に柿と大根を吊るして干す。「大根は毎年収穫したうちの半量を干してたくあんにします」。それでも余った野菜はご近所に配る

    日当たりのいい軒下に柿と大根を吊るして干す。「大根は毎年収穫したうちの半量を干してたくあんにします」。それでも余った野菜はご近所に配る

    東京で育ち、会社勤めの経験もある四井さん。母親が保存食をつくる姿を見て育ったり、自身も庭でハーブを育てたりするなど、昔から自然の中で手を動かし、自ら何かを生み出す暮らしには愛着がありました。けれど、田舎暮らしを始めた当初は、苦労も多かったといいます。

    「現金収入が減ったうえ、いまほど畑の収穫もなかったこともあり、毎日大変でした。移住前は『お金がなくても幸せになれる』と思い込んでいたけれど、生活してみて、お金の大切さも実感しました」

    画像: オーブン付きの薪ストーブも活躍

    オーブン付きの薪ストーブも活躍

    とはいえ、お金ばかり追い求めていると疲弊してしまい、心身のバランスが崩れてしまう、と四井さん。ベースにしているのは、豊かな土を維持していくことです。

    「土がいい状態であれば、何があったとしても食べていける。ここでの暮らしを通じて、そのことに気づかせてもらった気がします。土を豊かにして、それを維持していくことが、私たちにとっての“貯蓄”なのかなと。自然の多様性を壊すのではなく、それに寄り添った暮らしをすることでより豊かにしていく。そうすることが、結局は一番の幸せであり、安心にもつながる気がしています」

    画像: 庭の草花をドライにして、家の中に飾っている。「冬場などの時間があるときに、リースをつくるのが楽しみのひとつです」

    庭の草花をドライにして、家の中に飾っている。「冬場などの時間があるときに、リースをつくるのが楽しみのひとつです」



    〈撮影/山田耕司 取材・文/嶌 陽子〉

    四井千里(よつい・ちさと)
    2007年より八ヶ岳南麓に暮らし、自然とともにある暮らしを夫の真治さんと一緒に「未来の暮らし研究所」などを通じて発信。フラワーアレンジメントやハーブ蒸留などの暮らしの手仕事教室を開催している。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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