(『天然生活』2024年7月号掲載)
いちごのジャムをつくる

ジャムはフランス語でコンフィチュール。果実の砂糖煮を意味します。
「ジャムは菓子づくりの基本だと思っています。手をかけて煮ることによって出てくる果物の香り、色、そして風味。材料もつくり方もシンプルだからこそ、基本に忠実な作業が大事」
そんな説明を交えながら作業を進める河田勝彦さんの手元には‟とちおとめ”。いろんな品種のいちごが出回っていますが、ジャムにするなら酸味と甘味のあるものを選ぶことが必須です。
へたを落とし、縦4等分にカットを終えたら計量し、いちごの重量に対して75%のグラニュー糖を加えます。
「ジャムはつくり手のいろんな表現方法がありますけど、糖度が低いものは、僕はジャムとは呼びません。ジャムの定義は糖度65~70%まで煮詰めたもの、その糖度に仕上げるために僕は75%のグラニュー糖(果物に対して)を加えます。
これは長年の経験から果物の味と香りを最大限に引き出し、一番おいしいと思う割合の数値です。もし1対1の割合であれば煮詰める時間は短く、また砂糖の量を少なくすれば火にかける時間は長くなり、ジャムは変色していきます」

どこまで煮るかの見極めは、指で触って糸を引く状態
鍋は熱伝導がよく、火が均一に入る銅製が最適ですが、ホウロウやステンレス製でも大丈夫です。
ただ果肉を煮ているとあくがわあっと沸いてきたり、鍋の内側に果肉がついてこげやすくなるため、適当な深さと厚みのある鍋を使うこと。
そして絶えずかき混ぜながら煮ていくためにレードルを使います。木べらは直前に使ったもののにおいが移っているので、金物やゴムべらがおすすめです。
いちごとグラニュー糖を鍋に入れたら火にかけますが、ひと晩おいて火にかけてもOK。店では大量につくるので前日に砂糖をまぶし、浸透圧で繊維が壊れ、水分が出てきたところで加熱します。
砂糖が溶け、水分が出てきたら火を強め、絶えず全体をかき混ぜながら火加減を調整し、煮ていきます。白い泡はあくで雑味のもととなるのでていねいにすくい取ること。やがて透明感が出て、つやととろみが出てきたら一旦火を止め、皿に少量取り、指で触って濃度を見極めましょう。

「糖分が増えてくると果物に含まれるペクチンの働きでねっとりとしてきます。指につけて粘りけのある糸が引けば仕上がりのサイン。この状態が糖度65%です。これ以上火を入れるとかたくなり、鍋肌についた果肉があっというまにこげついてしまうので気をつけてください。
ここまで煮詰めることで果物のエキスがぎゅっと凝縮されて、香りも味も引き立つ。だから甘いだけじゃないんです。甘さ控えめ、糖度の薄いものが人気を集めていますが、砂糖の量を控えれば素材の味が出てくるという単純なものではありません」
そういって河田さんはレモンの果汁をしぼり、最後に加えます。
「酸味を加えることで味が締まるのです。それと色が長く安定し、やわらかさも長く保たれますから」
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▼オーボンビュータン・河田勝彦さん そのほかのお話はこちら
〈撮影/星 亘 構成・文/水野恵美子〉

河田勝彦(かわた・かつひこ)
1944年生まれ。1967年パリに渡り、菓子屋、レストラン、ホテルなどで約10年修業。その合間各地の郷土菓子を食べ歩く。帰国後1981年、東京・尾山台に「オーボンヴュータン」を開店。フランス伝統菓子の第一人者。

オーボンヴュータン
東京都世田谷区等々力2-1-3
☎03-3703-8428
営業時間:10:00~17:00
㊡火・水曜日





