5月は疲労回復のための養生で心身を元気に
新生活が始まって1カ月。五月病という不調があるように、5月は鍼灸院でも「疲れが抜けない」という悩みで訪れる方が増えます。
見て見ぬふりをしてしまうからこそ、気づかないうちに積み重なっていく……それが「疲労」の正体です。
みなさんが“なんとなくやっていること”が、実は疲れを長引かせていることも。心当たりのあるものから少しずつ見直して、自分らしい「元気」の保ち方を見つけてみてくださいね。
OK習慣 01
他人の目が気になるときは
「気にしている自分」を受け入れる

職場や学校などで新しい人と接するこの時期。周囲の目を気にするあまり、「あの一言、変だったかな」「嫌われたかも」と、ネガティブな考えがぐるぐるとめぐってしまうことも。
他人の目を気にし続けると、脳の危険センサーである扁桃体が刺激され続けます。扁桃体が過剰に反応すると、小さなことでも「怖い」と感じやすくなり、不安・緊張・疲弊のループに。
「気にすること」でエネルギーを使い果たしている方は、“また気にしている自分”に気づくこと。それだけで十分です。気にしている自分をそっと観察すると、脳の危険センサーが静まり、エネルギーの漏れが止まります。
自分の内側に意識を戻し、「私は私らしく」「自分のペースで大丈夫」と自分を取り戻すような言葉を心のなかで唱えるのも、心身が楽になりますよ。
OK習慣 02
できるだけ3食を整える。忙しいときはバナナも◎

新しい環境で忙しく、「ごはんを食べる余裕がない」と食事を抜きがちな方は多いのではないでしょうか。実は、食べなさすぎも疲れの大きな原因に。
カロリーが慢性的に不足すると、体はコルチゾールというストレスホルモンを過剰に分泌し、自律神経が乱れます。「眠れない」「イライラする」「やる気が出ない」といった状態は、もしかしたら食事が足りていないサインかもしれません。
肉体も精神もエネルギーを使う春は、とくにエネルギー消費が激しいので食事から補うことが大切。
まずは、できるだけ朝・昼・夜の食事を整えること。とくに不足しがちなのが、炭水化物。糖質は、脳と体を動かす最も重要なエネルギー源です。不足すると糖を分解する力自体が弱まり、食べても回復しにくい体になることも。
忙しくて時間がない日は、バナナやストックしやすい干し芋などの炭水化物を含む間食を挟むのもOK。エネルギーが切れない状態をキープしましょう。
OK習慣 03
栄養ドリンクやサプリは本当に必要なものだけを

健康や疲労回復のために栄養ドリンクやサプリメントを取り入れているけれど、なんだか疲れが取れない……。そんな方ほど、何種類も取り入れていることがあります。
サプリメントは、肝臓で代謝・解毒されます。種類が多いほど肝臓に負担がかかりやすく、慢性的に飲み続けることで、疲労感やだるさにつながることも。栄養ドリンクも、一時的に体の調子を支えてくれるかもしれませんが、ひんぱんに取り入れるのはおすすめしません。
東洋医学では、外側から補い続けることに頼りすぎると、体がみずからエネルギーをつくる力が弱まると考えます。サプリメントを選ぶときは「足りていないものだけ」が基本です。
いま取り入れているものを一度見直して、本当に必要なものだけを残し、少しずつ減らしていくのがポイント。体の声を聞きながら、「引き算の養生」を始めましょう。
OK習慣 04
頭のなかで考えごとが止まらないときは深呼吸を5回

仕事のことや人間関係、明日の段取り……何かと変化が多いこの時期は、気づけば四六時中、頭のなかで考え事をしがち。
脳は体重のわずか2%ほどの器官ですが、全エネルギーの約20%を消費するといわれています。ぐるぐると考えているときは、さらに膨大なエネルギーを使い続けているのです。
考え事が続くと呼吸も自然と浅くなり、血流の悪化につながって疲労感や頭痛、肩こりの原因に。夜になっても考え事が止まらないと、睡眠が浅くなり、眠っていても体が回復しない状態になってしまいます。
脳の消耗を止めるには、過去でも未来でもなく「いま、ここ」の自分に還ること。おすすめは、丹田呼吸。仕事の合間や寝る前に5回ほど繰り返してみるだけでも、自律神経が静かに整いますよ。
〈丹田呼吸のやり方〉
おへその下に手を当て、鼻からゆっくり息を吸ってお腹を膨らませ、口からゆっくり吐き切る。お腹に意識を向けることがポイント。
OK習慣 05
「体にいいこと」をがんばりすぎない

食事制限や毎日の運動など、どれも「体にいいこと」のつもりでも、がんばりすぎると体が疲れる原因に。また、始めたからには完璧にやらなければというプレッシャー自体が自律神経を乱し、ストレスになっていることも。
東洋医学の根本にある考え方は「中庸(ちゅうよう)」。何事も偏らず、バランスの中心にあることが健康の基本と考えます。
眠いなら寝る。食べたいものを食べる。ある程度は体のわがまま(本能)に従い、自分がご機嫌でいること。それが最高の養生です。
「今日の自分は何を求めているだろう?」と、自分自身に投げかけてみましょう。
「食べたい」「休みたい」「動きたい」体はすでに答えを知っています。その声を無視せず、自分を満たすことから始めてみてくださいね。
〈文・久保和也〉
久保和也(くぼ・かずや)

鍼灸師。東京・押上スカイツリー前「クボ鍼灸院」代表。世界中医薬学会アレルギー疾患専門委員理事。世界中医薬学会連合会耳鼻咽喉口腔科専門委員会理事。妻の産後の体調不良をきっかけに、東洋医学の道へ。鍼灸の力でより多くの人を元気にしたいと、東洋医学専門の鍼灸院を開業。一人ひとりの生き方や思考ともていねいに向き合い、身体的な不調の改善だけでなく、心の不調の改善も大切にしている。SNSでは暮らしに生かせる東洋医学を発信(総フォロワー16万人)。雑誌やメディアなど多数出演。近著に『ツボとお灸でからだが整う まいにちの東洋医学』(朝日新聞出版)。
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