• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。連休の猫との過ごし方。

    子どもの日に、猫のためのサプライズ

    子どもの日が近づくころになると、町のあちこちで、こいのぼりや柏餅を見かけます。子どものいるご家庭は、きっとにぎやかに過ごすのだろうなあと、そんな光景を想像します。

    わが家には、子どもがいません。その代わりに、元保護猫が10匹います。

    子どもの日だからといって、何か大きなことをするわけではないのですが、せっかくなら、うちの子たちが少しでもごきげんになるような一日にしたいな、と思います。

    この時期になると、なんとなくペットショップをのぞいてしまいます。何かひとつ、猫が喜びそうなおもちゃやおやつはないかなと探す時間も、私にとっては小さな季節の楽しみです。

    先日は猫ベッドを見ていたら、廃盤商品だったのか、3400円のものが700円になっていました。こういう思いがけない出会いがあると、なんだかこちらまでうれしくなります。

    家に持ち帰って置いてみると、猫たちはすぐに集まってきました。

    慎重ににおいをかぐ子もいれば、ためらいなく入って丸くなる子もいます。誰かが使っているのを見て、あとからそっと入る子もいて、その様子を見ているだけで、頬がゆるみます。気づけば、そのベッドはみんなのお気に入りになっていました。

    画像: お買い得ベッドに行列が!

    お買い得ベッドに行列が!

    いつもよりちょっと遊ぶ時間を長めに

    ちゅーるも、いつもより少しだけ多めに買っておきます。

    袋の気配だけでそわそわしはじめる姿を見ると、そんなに楽しみにしてくれるのかと、幸せな気持ちになります。

    画像: ちゅーるをもらって大満足の「でかお」

    ちゅーるをもらって大満足の「でかお」

    遊びの時間も、いつもより少し長く。ほんのわずかなことなのに、一日の手ざわりが変わるのです。

    人の子どもを祝う日みたいに、立派な飾りつけをするわけではありません。

    でも、新しいベッドにおさまる背中や、おやつを待つまっすぐな目や、遊び疲れて眠る姿を見ていると、これはこれで、ちゃんと「うちの子の日」だなと噛みしめるのです。

    特別なことはできなくても、いつもの日を少していねいに過ごすだけで、暮らしの中には小さな祝日が生まれます。

    子どもの日を、猫の日にしてしまう。そんなささやかな発想の変換が、わが家にはよく似合っている気がします。

    画像: 新しいおもちゃに熱くなる「サチ」

    新しいおもちゃに熱くなる「サチ」

    何気ない日々を、子どもの日や猫の日のようにする小さな工夫

    ・いつもより少しだけ良いおやつを用意する
    特別なごちそうでなくても、いつもより少しだけうれしいものがあるだけで、その日はちゃんと特別になります。猫にとってはもちろん、用意するこちらの気持ちまでやわらかくしてくれます。

    ・新しいベッドやおもちゃをひとつ迎える
    大きな買い物でなくても大丈夫です。小さな変化がひとつあるだけで、猫たちの反応が生まれて、家の空気まで新しくなります。気に入ってくれるかな、と考える時間もまた、しあわせな時間です。

    ・遊ぶ時間をいつもより少し長くする
    忙しい毎日の中では、つい「またあとでね」となってしまうこともあります。でも、ほんの5分でも多く向き合うと、その時間が一日の大事な思い出になります。猫も人も、気持ちが少し満たされます。

    ・写真を一枚だけでも残しておく
    何気ない寝顔や、ふとしたしぐさは、その日だけのものです。上手に撮れなくてもかまいません。あとから見返したとき、その日の空気や、自分のやさしい気持ちまで一緒によみがえってきます。

    ・「いてくれてありがとう」と声に出してみる
    猫には言葉の意味は分からなくても、声のやわらかさはきっと伝わる気がします。

    画像: そばにいるだけでありがとう

    そばにいるだけでありがとう

    そして、いちばん届くのは、自分自身かもしれません。

    当たり前の毎日が、当たり前ではないのだと、そっと思い出させてくれます。

    こうして書いてみると、特別な日をつくるのに、特別なことはあまりいらないのだなと思います。

    少しだけ目を向けること、少しだけ手をかけること、その小さな積み重ねで、いつもの一日はちゃんとあたたかな記念日になる……。

    子どもの日も、猫の日も、きっとそういうやさしい気持ちから始まるのでしょうね。

    画像: 一緒にお昼寝するのも、休日の楽しみです

    一緒にお昼寝するのも、休日の楽しみです

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    画像: 何気ない日々を、子どもの日や猫の日のようにする小さな工夫

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

    ブログ「ちいさなチカラ」



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