(別冊 天然生活『小川糸さんの春夏秋冬を味わうシンプルな暮らし』より)
夏は体を休めて、元気を入れる
夏になると、森の緑がいっそう生き生きとし始めます。朝日の美しさが際立つのもこの季節です。
山で暮らしてみてわかったのは、夏はとにかく雨がよく降るということ。予定を立てづらいという面はあるものの、雨の恵みを感じることもしばしばです。
「雨が降った翌日の苔の緑が美しくて。急に夕立が来ることも多いですが、そのあとで涼しい風が吹くのも気持ちいいんです」

夏は外で過ごすことも多い。「とくにこの時季は川や滝などの水辺に行きたくなります」。自然に囲まれた環境では、蚊取り線香が欠かせない

夏の日差しを暑く感じるときもあるものの、朝晩は涼しくてさわやか。とくに気温の高い日は、ガラス窓の下にある細い窓を開けて風を通す
標高が高い山の夏は、ほんのつかの間です。夏の気配を感じるのは7月下旬からで、8月のお盆を過ぎたらもう秋がやってきます。
「初めてここで過ごした夏、いつも通りに平日は仕事をして週末に休んでいたら、あっという間に夏が終わってしまったんです。友人を招く日が週末に限られてしまうのも、なんだか余裕がもてずにストレスを感じてしまって」
そこで、短い夏を思う存分満喫するため、小川さんは1カ月ほどの夏休みをとることにしました。
日の出とともに起きるのはいつもと変わらず、でもそのあとは一日中自由に過ごします。
暑い日は朝から日帰り温泉に行って汗を流し、午後からは庭でビールを飲みながら読書をしたり、ゲストを招いて一緒に水辺に遊びに行ったりと、この1カ月は夏にしかできないことを楽しむ時間。
ときには夜更かしをして映画を見ることもあります。いつもの規則正しい生活から少し離れて、心身を思い切り解放するのです。

「ふだんは忙しくてなかなかできない読書や映画鑑賞などにも時間をとることができるんです。遊びに来た友人と、お酒を飲みながらじっくり語り合えるのもこの時期。そんなふうにして、外からのさまざまなものを吸収するようにしています」
そうやってたくさんの刺激を受けながら、心身をリセット。しっかりと充電し、再び小説の執筆に集中する秋に備えるのです。
<撮影/有賀 傑 取材・文/嶌 陽子>
本記事は別冊天然生活『小川 糸さんの春夏秋冬を味わうシンプルな暮らし』からの抜粋です
美しい山暮らしの中で見つけた、小さな暮らしと小さな幸せ
2022年から山小屋で暮らし始めた作家の小川糸さん。物語を紡ぎ、暮らしを整え、土に触れる小さな暮らしを実践しています。山小屋での春夏秋冬の季節の移ろいはとても美しく、どの瞬間もキラキラと輝いています。小川糸さんの味わいある暮らしのエッセイや家時間の工夫、季節の食材を使ったレシピもご紹介します。
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小川 糸(おがわ・いと)
デビュー作 『食堂かたつむり』(2008年)以来、『ツバキ文具店』『ライオンのおやつ』など、30冊以上の本を出版。作品は英語、韓国語、中国語、フランス語、スペイン語、イタリア語などに翻訳され、さまざまな国で出版されている。公式サイト「糸通信」https://ogawa-ito.com/ では不定期で日々の出来事を綴っている。





