• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。10匹の保護猫と暮らしていても、大きなけんかはほとんどありません。その理由は、猫同士の相性だけではなく、部屋づくりにもありました。

    寝はじめると集まってくる猫たち

    わが家には、10匹の猫がいます。

    10匹、というと、たいていの人に驚かれます。

    「けんかしないの?」
    「なわばり争いは?」

    たしかに、10匹もいれば、何かしら揉めごとが起きても不思議ではありません。

    おやつの取り分、窓辺の席、ソファのまんなか、私の膝。争いの火種は、あちこちに転がっています。

    ところがわが家では、不思議なほど大きなけんかが起きません。

    とくに男の子5匹は、まるで血がつながっている兄弟のようです。

    ソファでは猫だんご。ベッドでも猫だんご。暑い日でさえ猫だんご。人間なら「ちょっと離れてくれる?」といいたくなる距離で、彼らは満足そうにくっついています。見ているこちらのほうが暑いくらいです。

    画像: でかお(きじ白)を中心に集まるボーイズ

    でかお(きじ白)を中心に集まるボーイズ

    その中心にいるのが、17歳のでかおです。

    でかおは最年長。猫エイズのキャリアでもありますが、うちに来てからの11年、発症することなく穏やかに暮らしてきました。そしていまでは、若い子たちを見守るお父さんのような存在です。

    誰かがそばに来ると、でかおはせっせと毛づくろいをします。顔をなめ、頭をなめ、時には「もういいです」といわれていそうなくらい、念入りになめます。

    わが家の猫社会に役職があるなら、でかおはきっと「代表取締役お父さん」です。業務内容は、見守り、毛づくろい、そして昼寝。(笑)

    画像: なぜか人気のケージまわり

    なぜか人気のケージまわり

    では、なぜ10匹いても平和なのか。

    もちろん、猫たちの相性もあると思います。

    けれどもうひとつ、部屋のつくりも関係しているのではないかと気づきました。

    わが家には、キャットタワーが3つあります。高いところが好きな子は上へ。少し離れて見物したい子も上へ。「今日は人間とは距離を置きたい」という顔の子も上へ。

    画像: キャットタワーでちょうどいい距離感

    キャットタワーでちょうどいい距離感

    猫にとって高い場所は、ただの遊び場ではなく、ちょっとした社長室なのかもしれません。そこから家のなかを見わたし、「本日の人間の動き、異常なし」と確認しているように見えます。

    ソファもあり、ベッドも1階と2階にふたつあります。

    ひとりで寝たい子。誰かとくっつきたい子。まんなかに陣取りたい子。なぜか人間の寝る場所だけを正確に占領する子。それぞれが、自分の好きな場所を選んでいます。

    画像: ベッドシーツの中に入った子をちょいちょい

    ベッドシーツの中に入った子をちょいちょい

    たまたまリビングが吹き抜けになっていることも、猫たちにはよかったのかもしれません。上から下を見張れる。下から上を見上げられる。誰かがごはんを待っている気配も、人間が台所に立った気配も、すぐに共有されます。

    おやつ前などは、まるで社内連絡網です。ひとりが動く。ふたりが気づく。3匹が集まる。気づけば10匹が「そろそろでは?」という顔をしています。

    猫のなわばりというと、どうしても「取り合い」を想像してしまいます。でも、もしかすると大切なのは、取り合わなくていいだけの選択肢を用意しておくことなのかなと感じます。

    「ここしかない」と思わなくていいこと。
    「そこをどいて」といわなくてもいいこと。

    その余裕が、猫たちの平和を守ってくれているのだと、今日も、ほっと息をつくのです。

    画像: 暑い夏でもぴったり寄り添って

    暑い夏でもぴったり寄り添って

    ◇ ◇◇ ◇◇


    画像: お気に入りのぼろぼろも大切にする

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ、大阪在住。作家、家族療法カウンセラー。夫と10匹の元保護猫と暮らす。心の病や生きづらさを抱えるなか、不治の病をもつ一匹の猫との出会いをきっかけに、「命は、生きているだけで愛おしい」ということを知る。以来、生きづらさのなかにある小さな希望を、ノンフィクションや小説、エッセイに綴りつつ、NHKの福祉番組への出演、全国での講演などでも活動。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日』(KADOKAWA)など。

    note:https://note.com/sakiseri

    ブログ「ちいさなチカラ」



    This article is a sponsored article by
    ''.