野草をしっかり干すと、苦味やえぐみが取れて、飲みやすくなります。どくだみとミント、よもぎとローズマリーなど、意外なものが、実は好相性です。
(『天然生活』2016年8月号掲載)
身近な葉っぱを干してつくる、ひと味違うお茶
どくだみ、よもぎ、びわや柿の葉……庭や裏山などに生えている草木を干して野草茶にすると、いつもとひと味違う、おいしいお茶ができるのをご存じですか?
「私が『七草』で野草茶を出すようになったのは、『ここに来たからこそ飲めるお茶はありませんか?』と、なじみのお客さんにいわれたのがきっかけ。それまでは、番茶や緑茶など、定番のお茶を出していたのですが、“七草ならでは”ということで、身近なよもぎやどくだみ、食材として使うせりやみつばの根っこ、ローズマリーやミントなどのハーブを乾燥させてブレンドしてみたところ、料理とも相性がよかったんです」
前沢リカさんがつくる野草ブレンドは、体によい効果がある、という健康志向ありきではなく、食事中にもおいしく飲めるお茶。
「慣れるまでは、ふだん飲んでいる番茶や緑茶に少し混ぜてみる、というのがよいと思います。たとえば、どくだみだけの野草茶だと、独特の苦味やクセがあって飲みにくいけれど、はと麦にどくだみを少し足せば、どくだみが、ほどよいアクセントに。慣れれば、おいしく感じる煮出し時間もわかってくるし、あれを加えたらおいしいかも、というアイデアも浮かんできます。まずは愉しみながらつくってみるのがおすすめです」
※草を採取する場合は土地の所有者の許諾を受け、農薬などに注意してください。
七草店主に教わる野草茶のつくり方
「七草」店主の前沢さんは、お店でお茶を出すとき、みずから干した野草をブレンドしているそう。少しの手間で、身近な素材がおいしい野草茶に。
基本の干し方
1 洗う
水を入れたボウルに野草をひたし、10~15分、放置。汚れが浮いたら指で汚れを取り除き、最後にすすぐ。
2 軽くふく
乾いたふきんの上に野草をのせ、もう一枚のふきんで、上からやさしく押す。多少濡れたままでも大丈夫。
3 ざるに並べる
少し間隔をあけて、写真のようにざるに並べる。大きい葉や、つる植物は、小さく切って干すと乾燥が早い。
4 干し上がり
完全に乾くと、こんなに小さく。十分乾かせば、1年ほどの長期保存も可。保存は缶や保存袋などで。
ポイント
ひもで吊るしても
どくだみやよもぎなどひもで吊るせるものは結んで干しても。何本か束ねて干せばスペースも取らない
びわの葉の注意点
葉の裏側に細かい毛があるびわは、固めに絞った濡れぶきんで、葉脈に沿って毛をこすって落とす
香りも愉しいブレンド茶
分量の目安は、どのブレンド茶も沸騰させたお湯1リットルに対して、茶葉の合計が5g程度になるように。香りや色の違いも、愉しんで。
ブレンドするもの
緑茶、番茶、ウーロン茶、麦茶、はと麦茶など、家にある定番のお茶をベースに、ハーブやしょうが、スパイスなどをお好みでブレンドして。「パウダー状のスパイスは、お湯に溶けず、口あたりが悪くなるので、おすすめしません」
前沢さんちの定番「王道のブレンド茶」
摘んで干した身近な4種類の野草を、同量でブレンド。「よもぎの草餅のような香りと、どくだみの味がアクセントに。毎日、飲みたい王道のお茶です」
エスニックや中華にも合う、夏向きの味
びわの葉と番茶をベースに、刺激的なスパイス数種類をブレンド。カレーとの相性も抜群。ラッシーやチャイと比べ、カロリーが気にならないのもうれしい。
冷やしてもおいしい、さわやかブレンド
「レモンのさわやかな香りと、月桂樹の香りが、柿の葉の香ばしさを引き立てます」。ジメジメした梅雨の鬱陶しさを吹き飛ばす、すっきりした後味も魅力。
どくだみとミントの意外なハーモニー
どくだみとミント?と一瞬、驚くけれど、はと麦が両者を包み込むようにまとめてくれる。乾燥ではなく生のミントを使うと、いっそうフレッシュに。
和と中華、お互いの持ち味を引き立てて
上品な凍頂ウーロン茶と和菓子的なよもぎの香りがバランスよし。「あえてほかの野草は混ぜず、2種のみにしました。香りの相性のよさを愉しんで」
淡く、さっぱり。おやつとも好相性
ハーブの自己主張しすぎないほのかな香りが、口の中にふわっと広がる。「後味がさっぱりしているので、和洋、甘辛を問わず、おやつとも好相性ですよ」
香ばしいお茶にハーブをプラスして
柿の葉と番茶だけでも十分おいしいけれど、ローズマリーとミントを加えることで、味に奥行きが生まれる。ホットはもちろん、冷やして飲むのもおすすめ。
飲み方
焙じ方
干した野草を手でくだきながら、フライパンに入れる。どくだみの茎は硬いので、ハサミで3cm程度に切っても。弱火にかけ、木べらなどで混ぜ、香りが立ったら、火からおろす。新聞紙などの上で冷まして完成。焙じる時間は、5分ほどを目安に。
煎じ方
鍋で水1リットルを沸騰させ、茶葉を約5g入れる。小さな泡がぷつぷつ立ったら火を弱め、10分ほど煮出す。火を止め、5分ほどおいたら完成。煮出し時間や放置時間を変えると、濃くなったり、味わいが増したり、味に変化が。その変化も愉しんで。
<撮影/鈴木静華 取材・文/宇野津暢子>
前沢リカ(まえざわ・りか)
旬の野菜の力を生かした料理でもてなす「七草」店主。和食、割烹などのジャンルを超えた、やさしく個性あふれる献立が人気。著書に『野菜の料理教室』(KADOKAWA)など。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです