• 「趣味は、暮らし」と笑う、料理家・横山タカ子さん。日々、保存食をつくり、運針をし、庭の手入れをする、四季とともにある日常を、自分流に、自由に楽しんでいます。それは、遊び心に溢れ、同時にとても美しい。そんな信州の季節に寄り添った、横山さんの四季の暮らしを、ご一緒に、ぜひお楽しみください。今回は、冬の保存食のお話です。
    (横山タカ子・著『信州四季暮し』より)

    信州で食物が収穫できるのは、半年間だけです。それだけに、採れたものを大切に保存し、飽きずに食べまわす知恵が備わったのでしょう。米、豆類はもちろんのこと、秋の野菜も越冬野菜として、しっかり年越しし、お彼岸ころまで食べるので、困ることはありません。

    ことに野菜の保存方法は漬物で、たくさん発酵食品にします。野沢菜漬け、たくあん、すんき漬けなどは代表的なもので、三度三度の食事と農閑期のお茶請けに欠かせません。食物繊維たっぷりの発酵食品を食べて長寿になっているのでしょうね。

    画像: たくあん漬けは漬物の定番。軒先で大根を干して、ぬかで漬けます。冬の間中、お茶請けとしても、食事の供としても、大切にいただきます。

    たくあん漬けは漬物の定番。軒先で大根を干して、ぬかで漬けます。冬の間中、お茶請けとしても、食事の供としても、大切にいただきます。

    調味料も、ぬかに塩、味噌、酒粕にしょうゆ、糀に三五八(さごはち)とさまざまで、ひとつの野菜でもいろいろな味で愉しむことができます。お餅を凍り餅にするなどの、寒さを利用しての保存食作りも欠かすことのできない作業です。我が家ではもっぱら寒干しの大根干しですね。寒中の干し大根は白く、カラッとした出来栄えです。

    ちなみに、長野ではよく見かける寒ざらし粉はお米を干したもので、虫が付かず、高級品とされています。寒中でも、信州は忙しいですね。

    たくあん漬け

    画像: たくあん漬け

    材料(作りやすい分量)

    ● 大根8kg
    ● 紅芯大根、からいも合わせて2kg
    ● 漬け床
    ・生ぬか2kg
    ・塩800g
    ・砂糖1.5kg
    ・渋柿の皮(干したもの)200g
    ・なすの皮(干したもの)150g
    ・赤唐辛子15g

    作り方

     大根、紅芯大根、からいもは、1週間ほど干す。

     大きなビニール袋や器に、漬け床の材料を入れ、混ぜ合わせる。

     漬物容器の底から1cmくらいまで、を振り入れてから、大根、紅芯大根、からいもとぬかを交互に入れ、野菜の重量の2〜3倍の重石をする。

     3日で水が上がりはじめる。食べ頃は約1カ月後から。

    松前漬け

    画像: 松前漬け

    材料(作りやすい分量)

    ● 大根1kg
    ● 塩大根の重量の2%
    ● A
    ・しょうゆ80ml
    ・みりん60ml
    ・砂糖20g
    ・するめ(極細のもの)45g
    ・切り昆布35g

    作り方

    大根はいちょう切りにし、塩をして2時間ほどおく。水分をよく絞り、容器にAとともに入れて漬ける。翌日から食べられる。

    *冷暗所か冷蔵庫で2週間ほど保存可能。


    <撮影/本間 寛>

    横山タカ子(よこやま・たかこ)
    料理研究家。長野県大町市生まれ、長野市在住。長年、保存食を中心とした長野の食文化を研究すべく各地に赴き、料理名人から教わる。長野県の特徴でもある、野菜をたっぷりと使った保存食は「適塩」で作り、季節の食材は手をかけすぎず、素材を生かしてシンプルに食べることを信条とする。地元の農作物を広める活動にも尽力。大の着物好きでもある。


    『信州四季暮らし』(横山タカ子・著)

    天然生活の本
    『信州四季暮らし』(横山タカ子・著)

    『信州四季暮らし』(横山タカ子・著)

    A5判
    定価 1,700円+税
    ISBN978-4-594-08353-3

    扶桑社より発売中



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