写真について:工房に隣接する小さな部屋で夕食を。大学時代を過ごした沖縄で琉球料理を覚えた直実さん。この日は、かまぼこをビラ(青ネギ)で巻いた「びらがらまち」や、なすと厚揚げを炒めた「なーしびたしやー」を
(『天然生活』2017年1月号掲載)
木と金属で家具をつくる工房兼自宅
朝7時半。工房に最初にやってくるのは、奥さまの直実さんです。工房の周りを散歩したり、仕事の段取りを考えたり。1時間半ほど遅れて、ご主人の喬彰(たかあき)さんが到着。
「僕は夜型で、夜遅くまで本を読んだり音楽を聴いたり。寝るのは深夜1時、2時になることも。逆に妻は朝型。結婚当初は、無理してペースを合わせようとしましたが、いまでは、それぞれが自分のリズムで暮らせばいい、と考えるようになりました」と喬彰さん。
沖縄の美術大学で同級生だったふたり。喬彰さんは、デザインを学んだものの、写真に興味をもってドイツに留学。直実さんは彫刻を学び、ひと足先に卒業して、ワーキングホリデーで渡独。ふたりで、いろいろなものを見てまわったのだといいます。
「『これ、いいよね』というものが同じでした。教会の手すりや椅子の背もたれなど、使ってどんどん飴色になるもの……。そして、使っては消えていくデザインではなく、自分の手でつくって残っていくものをつくりたいと思うようになりました」と喬彰さん。
帰国後、工房のために机や椅子をつくったのが、家具づくりを始めるきっかけに。鉄と木を組み合わせ、時を経たようなぬくもりのなかにも強さやシャープさを感じるのが「枯白」の特徴です。喬彰さんが椅子のフレームをつくったら、直実さんが脚をつくり、座面の革張りは喬彰さんが担当。
「彼は機能と形を考えるのが好き。夢を描き、どんどん前に進んでいくタイプです。逆に私のものづくりは、いつも直感。ただし、慎重なので、“文鎮” みたいな役目かな」と笑う直実さん。
そんなふたりだから、日々の段取りもバラバラです。工房での作業中も、ほとんど話をしないそう。休みの日は、喬彰さんは釣りへ、直実さんは図書館へ。でも、食事時になれば、喬彰さんが焼いたパンと直実さんの料理が食卓に並び、ふたりで「おいしいね」と食べるひと時が楽しい……。
違いを認めあうから、互いに補いあい、ひとりの力以上のものを生み出せる。ふたりだからこその豊かさを味わうことができるのかもしれません。
枯白の時間割
06:30
直実さん起床
散歩、家事
07:30
喬彰さん起床
朝食の準備
07:45
朝食
08:30
喬彰さんはメールチェックと見積もり制作
08:45
直実さんは工房で制作
11:00
昼食の買い出し
食事の支度
12:00
スタッフも交えて3人で昼食
打ち合わせ
13:00
直実さんは梱包、発送作業
喬彰さんは工房で制作
15:30
コーヒーブレイク
16:00
ふたりとも工房で制作
19:00
夕食の支度
19:30
夕食
20:00
自由時間
23:30
直実さん就寝
0:30
喬彰さん就寝
<撮影/辻本しんこ 取材・文/一田憲子>
枯白(こく)
木工教室を営む父のもとで木工を始めた喬彰さんは大学でデザインを学んだのち、写真に興味をもちドイツに留学。直実さんは喬彰さんと同じ大学で彫刻を学び、卒業後、ワーキングホリデーでドイツへ。帰国後、ふたりで、時を経て美しくなる家具や小物をつくる「枯白」を立ち上げる。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです