写真について:山の家の入り口の脇に積まれた、たくさんの薪。これらは前年のもの。「すっかり乾燥して、いい火を生み出してくれそうです」と山戸さん
(『天然生活』2017年1月号掲載)
冬を越すための支度
料理家として東京で仕事をしていた山戸ユカさんが山梨・八ケ岳に居を移したのは、2013年9月のことです。山戸さんのご両親が経営するペンションに向かい合うようなかたちで、ご主人と山の家を新築し、その1階でレストラン「DILL」を営んでいます。
取材に訪れたのは2016年10月中旬。山の短い夏はとうに退散していました。家のすぐ下には小川があり、水の流れる音、鳥の鳴き声が心地よく響きます。そして、冷たく澄んだ空気が、あたり一帯に広がっていました。
「朝晩はもうグッと冷えますよ。ちょうど来週、薪ストーブの煙突の掃除が入る予定なんです」
1階がお店、2階がプライベートスペースという間取りで、暖房器具は薪ストーブのみ。雪はさほど多くないという場所ですが、冬一番の冷え込みとなるとマイナス15℃になることもあるそう。家中を暖めてくれる薪ストーブは、山の家には欠かせないものです。
「薪割りは夫の担当なのです。薪の確保から、割り、乾燥まで、さらには、ストーブの内部や外側の掃除も行います。薪ストーブがあるおかげで、外がどんなに寒くても室内は20℃ほどに保てるんです。薪をたっぷり確保してあると、どこか安心できます」
暖をとるための下準備と、オーガニック野菜の保存食
薪ストーブをはじめ、暖をとるための段取りは、ほかにもありました。お店用とプライベート用に、たくさんのブランケットを用意したり、寝袋を冬用のものに替えたり、植物の霜対策をしたり。あらゆる寒さ対策は、やはり山の家ならではといった印象です。
さらには、夏に収穫した野菜で保存食をつくることも大切な冬支度のひとつだといいます。
「ふだんは車移動ですし、スーパーもそう遠くはないけれど、日持ちする保存食は、東京にいたころよりずっと重宝。地元でオーガニックの野菜をつくっている農家さんと契約しているのですが、最盛期には私もお手伝いし、2016年の夏は100kg近くトマトを収穫しました。時間ができると、それらをせっせと加工します」
たとえば、トマトはトマトソースやドライトマトに、ハラペーニョはピクルスに。それぞれ、野菜や肉、魚など、地元の食材と組み合わせ、ランチやディナーのメニューにお目見えします。
「干しきのこ」のつくり方|山戸ユカさん 八ヶ岳の冬ごもり「定番の保存食」へ⇒
「セミドライトマト」のつくり方|山戸ユカさん 八ヶ岳の冬ごもり「定番の保存食」へ⇒
「ハラペーニョのピクルス」のつくり方|山戸ユカさん 八ヶ岳の冬ごもり「定番の保存食」へ⇒
冬の楽しみ|山戸ユカさん 八ヶ岳の暮らしへ⇒
<撮影/三村健二 構成・文/結城 歩>
山戸ユカ(やまと・ゆか)
ご主人とともに2013年9月に山梨・八ケ岳の山麓に移住。自宅のキッチンを開放するようなスタイルでレストラン「DILL」をオープン。
山梨県北杜市長坂町大井ケ森984-6
TEL.0551-45-7512
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです