はじめまして! こまきしょくどうです
こんにちは、精進料理研究家の藤井小牧です。
今月から天然生活Webにて、日々の暮らしのこと、食への取り組みのこと、私が関わる活動のことや、もちろん「こまきしょくどう」おかみとして毎日向き合っている精進料理のことなどをまとめて連載させていただくことになりました。どうぞよろしくお付き合いください。
はじめましての方も多いと思いますので少し自己紹介。神奈川県鎌倉市の海の近くで生まれました。一番小さい時の記憶は春の暖かい日。きらきら太陽で反射している海に、船が通る時のポンポンという音を聞きながら、公園で芝滑りやつくし取りをしていたことを思い出します。
今はおしゃれな住宅地ですが、私の子どもの頃は自然の中で遊ぶのにとてもよい土地でした。春は母と海でワカメ拾いや、父と山で山菜を摘んだり、夏になると小さい家庭菜園できぬさややトマトを収穫したり、夜になると大きいガマガエルの月光浴を、庭に出て眺めていました。
秋は落ち葉を集めて腐葉土づくりの手伝いをして、冬は父が漬けるたくわん用の干し大根を、庭中に吊るしたり、母が仕込む味噌づくりを手伝っていました。家の目の前にある柿の木の餌台に果物をのせておき、台湾リスが警戒しながらも雪が降るなか電線をつたい、餌台に渡り上手に果物を抱えて食べている姿を観察したり、そんなことをしてぼんやりしながら過ごしていました。
わが家は精進料理を教える仕事をしていました。父は料理教室をしたり、本を書いたり。母は父の手伝いをしながら私たち姉弟の服をつくったり、手づくりおやつをつくってくれていました。今考えると、世の中的にバブルに差し掛かろうとしている時代に、世間から少し離れた生活だったなと、東京の街中に住む今改めて思います。
子どもの頃、東京に行った時の過ごし方と言えば、父の出版社に連れて行ってもらい、ご馳走を食べてくることくらいでした。
そしてあれよと時間が経ち、それはすごく長い長い反抗期を経て(またその話は、何かのおりで……。語るほどではありませんが)、父の亡き後、2014年に「カフェ風精進料理 こまきしょくどう 鎌倉不識庵」として、秋葉原に精進料理のお店をオープンいたしました。
2020年、おかげさまで6年が経ち、日本の方だけではなく世界中からたくさんのお客さまにお越しいただいています。
動物性不使用、ネギ・ニラ・ニンニク類の五葷抜きをベースにした、日本のおいしい醸造調味料・乾物・豆腐などを使用して、日本の食文化が全部詰まっている定食を、世界の人々にも日本のおいしい知恵を精進スタイルで提供しています。
父の時代にも、母のレシピにもないメニューを考える私の新しい精進料理は、昔からのうちのお客さまにも喜んでいただいているようです。
私の子どもの頃のおやつは、父の精進料理教室の残り物でした。そのおやつの代表がこの胡麻豆腐です。大人はワサビ醤油で食べますが、私は黒蜜やアイスをのせてもらっていました。
皆さんもたくさんつくって、おかずにもデザートにもしてみてくださいね。
豆乳胡麻豆腐のつくり方
材料(つくりやすい分量)
● ごまペースト | 大さじ1 |
● 豆乳 | 230ml |
● 水 | 230ml |
● 葛粉 | 80g |
作り方
1 豆乳・水・ごまペースト・葛粉をフライパンに入れ、火をつけず葛粉が溶けるまで木べらでよく混ぜる。
2 混ざったら火をつけて木べらでよく混ぜる。強火で3分くらい混ぜると固まってくるので、弱火にして5分ぐらい練り上げる。表面に艶が出てきたら火を止め型に入れ、ラップをして乾燥を防ぎ、冷蔵庫に入れ固める。
3 冷え固まったら切り分けて、お好みの味付けでいただく。
藤井小牧(ふじい・こまき)
東京・秋葉原にある「カフェ風精進料理 こまきしょくどう」店主。臨済宗僧侶であり、精進料理家としても知られる藤井宗哲氏と、精進料理家の藤井まり氏との間に生まれ、幼いころより精進料理とともに育つ。現在はお店に立つかたわら、東京の生産者・加工業者を応援する活動「メイドイン東京の会」にも参加している。2020年3月に『こまき食堂』(扶桑社)が発売。