(『天然生活』2016年5月号掲載)
読めば朝から三文の徳
天気のことわざ
朝虹に川超すな
朝虹は西の空に見えるそうです。
西の空に雨雲があって、それに太陽の光が当たって虹が出るということで、その雨雲が東にだんだん移動してくるので、その日は天気が悪くなるというのです。
ほかにも「晩の虹は江戸へ行け朝の虹は隣へ行くな」ということわざがあります。また、イギリスには「朝の虹は羊飼いの憂い、夕方の虹は羊飼いの喜び」ということわざがあります。
天気に関することわざは「ただの言い伝え」と侮れないものが多いですね。
朝雨はひでりの元
ほかに、「朝雲は日照り」という、似た意味のことわざもあります。いずれも、朝のうちに天気が悪くても一日中ではない、ということです。
イギリスでは「朝の晴れ過ぎ、午後は雨」という逆のことわざがあります。これだけみると、日本のことわざは楽天的な感じがしますね。
イギリスには、ほかにも「朝の雨で旅をやめるな」ということわざがあるのですが、これは、日本にも「朝雨に鞍置け」という同じ意味のことわざがあります。
朝雨と女の腕まくり
朝になって降り出した雨はたいしたことはなくやがて晴れる、という意味のことわざです。
「腕まくり」とは、けんかをする前に袖を肩のほうへまくり上げる様子のこと。「女の」とつけて、非力な女性が腕まくりしてもたいしたことはない、ということになります。
最近は、力にものをいわせる女性もいるとのことですが、さてどうでしょう。
同じ意味で「朝雨に傘いらず」ということわざもあります。
<解説/海野凪子 イラスト/山元かえ>
海野凪子(うみの・なぎこ)
日本語教師。大阪生まれ、大阪在住。著書に、外国人ならではの日本語の使い方や疑問を綴った『日本人の知らない日本語』(メディアファクトリー)、『「国際人」はじめました』(大和書房)、『大和言葉つかいかた図鑑』(誠文堂新光社)など多数。
山元かえ(やまもと・かえ)/イラスト
1978年生鹿児島育ち 主に生活や子供に関するイラストを中心に活動。 2006年より型染めによる作品制作もしている。
http://torerocamomillo.ciao.jp/
インスタグラム:
https://www.instagram.com/millokae/
参考文献/『世界ことわざ辞典』北村孝一編(東京堂出版)、『いつでもどこでも使えることわざハンドブック』(池田書店)、『生きるヒント 日本のことわざ 世界のことわざ』北村孝一著(幻冬舎文庫)、『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』(あすとろ出版)、『総解説 知りたい言葉の由来を読む 豊かな知識を育む実用百科 新装版 世界の故事・名言・ことわざ』(自由国民社)
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです