(『天然生活』2016年5月号掲載)
読めば朝から三文の徳
食のことわざ
朝飯にかけ汁は親不孝
ごはんに汁をかけて食べるとあまり嚙まずに胃に流し込むことになり、胃腸の病気になりやすいといいます。
「食べ物はしっかり嚙みなさい」とよくいわれますが、ことわざになっているところをみると、昔から、「食べ物を嚙まずにのみ込むのは体によくない」と知られていたのですね。
また、一日の始まりである朝は、かけ汁などをして急いで食べたりせず、ゆっくり食事をとるくらいの心の余裕がないといけないという意味でもあると思います。
朝の果物は金
朝に食べる果物は体にいいということわざです。
「朝のりんごは金」ということわざもよく聞きますが、スペインやポルトガルでは「朝のオレンジは金、昼には銀、夜には人を殺す」という、いささか物騒なことわざがあります。
果物にまつわることわざといえば、日本では「柿が赤くなると医者が青くなる」、英語圏では「りんご(トマト)が赤くなると医者が青くなる」ということわざがあります。
朝茶は三里戻っても飲め
朝、飲むお茶は災難よけになり福を呼び込む、という説があります。飲むのを忘れると縁起が悪いといわれることもあるようです。
たしかに、朝、起きてお茶を飲むと頭がすっきりしますね。ただ、三里といえば約12㎞。「七里戻っても飲め」ということわざもありますから、そんなに歩いたのに戻るのはちょっと大変ですね。
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読めば朝から三文の徳
健康のことわざ
朝、出かける前に針を使うと、その日、怪我をする
「出針は使うな」という言葉もあります。
さあ出かけようというときに針仕事をするのは気もあせり、怪我をすることもあります。前もって、着ていく服の点検をしておけば、そんなことにはなりません。
また、「着針、出針は縁起が悪い」ともいいます。「着針」とは服を着たままその服の繕い物などをすること。もちろんこれも、「出針」をしてはいけない理由と同じですね。
朝一杯の水を飲むと通じがよくなる
朝、起きたときに水を飲むと腸を刺激するからとのことですが、ほかにも、寝ている間にドロドロになった血液を水分補給によってサラサラにするなど、よいことが多いようです。
水を飲むと目も覚めますし、習慣にしている人も多いでしょう。簡単な健康法なので、昔から行われていたのでしょうか。
早寝早起き病知らず
解説するまでもないことわざですね。早寝ができるということは、その日一日、しっかり動いたということでしょうし、反対に考えると、早寝早起きができる人は健康だということにもなるかと思います。
電気がなかった時代は、ろうそくや油の火など薄暗い明かりしかなかったので仕事もはかどらないし、不経済だという考えもあったのでしょう。もちろん現代でも、早寝早起きをすれば節電できますよね。
<解説/海野凪子 イラスト/山元かえ>
海野凪子(うみの・なぎこ)
日本語教師。大阪生まれ、大阪在住。著書に、外国人ならではの日本語の使い方や疑問を綴った『日本人の知らない日本語』(メディアファクトリー)、『「国際人」はじめました』(大和書房)、『大和言葉つかいかた図鑑』(誠文堂新光社)など多数。
山元かえ(やまもと・かえ)/イラスト
1978年生鹿児島育ち 主に生活や子供に関するイラストを中心に活動。 2006年より型染めによる作品制作もしている。
http://torerocamomillo.ciao.jp
インスタグラム:
https://www.instagram.com/millokae/
参考文献/『世界ことわざ辞典』北村孝一編(東京堂出版)、『いつでもどこでも使えることわざハンドブック』(池田書店)、『生きるヒント 日本のことわざ 世界のことわざ』北村孝一著(幻冬舎文庫)、『日本語を使いさばく 故事ことわざの辞典』(あすとろ出版)、『総解説 知りたい言葉の由来を読む 豊かな知識を育む実用百科 新装版 世界の故事・名言・ことわざ』(自由国民社)
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです