• 東京・秋葉原にある、カフェ風精進料理のお店「こまきしょくどう」おかみの藤井小牧さんによる、日々の暮らしや食などを綴る連載です。精進料理のレシピもときどき紹介。今回は、愛知県の赤味噌のおはなしと、だしのいらない切り干し大根の味噌汁のつくり方です。

    愛知県の大学に通っていた頃に、知り合いのお家で料理の手伝いをしていたときに「味噌汁に味噌を入れておいて」といわれたので、だしに入れた野菜が煮えたところで、火を止め味噌を入れました。その時にお家の方に教えてもらったことを今でも覚えています。

    「火を止めて味噌を入れたらおいしくないからだめよ!」

    私は関西生まれの父、北海道生まれの母で育ちは神奈川県。郷土の味というものをあまり意識することなく育ちました。

    味噌汁をつくるときは、父と母が仕込んだ「米味噌」や「麦味噌」を食べて育ち、家庭科の授業で味噌汁をつくった時を思い出しても、だしで煮た野菜や豆腐に火が通ったら、火を止めて味噌を入れるのが味噌汁のつくり方でした。

    しかし、愛知県での味噌汁は火を止める前に入れて煮立たせます。さらには野菜を入れるときに入れて煮込んでもおいしいのです。

    その理由は、「豆味噌」。

    愛知県では、豆味噌が食べられています。

    豆味噌は、よく煮立てることによって特有の苦味がなくなり、旨みがしっかりと出ます。これを知らない関東人は、いや、中部エリア以外の方はなかなか豆味噌のおいしさに気付かないのです。

    味噌業界の方の話を聞かせていただくと、戦前までは町内で味噌・醤油をつくる蔵があり、そこで消費する分をつくっていたようです。そこから高度経済成長期に食が工業化し、大量生産・大量消費できる時代になりました。

    スーパーには流通のおかげもあり、様々なエリアから届いた、いろんな種類・製造方法の味噌が陳列され、その中から価格、量、ブランドなど、「味噌は嗜好品」かのごとく、自分の好みで選んで楽しめるようになってきました。

    豆味噌がなかなか身近に感じられないのは、使い方と熟成期間の長さがあります。米味噌は仕込んでから8ヶ月から1年と蔵によっての適正の期間を経て出荷されますが、豆味噌は仕込んでから二冬二夏と一年半以上寝かせます。

    うちの店では味噌汁だけでなく、車麩のトンカツ風にかけたり、高野豆腐でつくった肉味噌ソースや田楽味噌、あえものの隠し味など幅広く使用しています。

    お付き合いはまだ短いのですが、4年前に現地のイベントでご縁ができた中定商店(https://www.ho-zan.jp/)の豆味噌を使っております。

    こちらの豆味噌は煮立てなくてもおいしくいただけて、水分含有量が高くやわらかいので溶けやすく、旨みが足りないときにお手伝いしてくれる味噌なので、豆味噌に馴染みがない方にも使いやすく本当におすすめです。

    さて、その蔵は愛知県の知多半島のほぼ中央部にある武豊町にあります。温暖な気候と良質な水に恵まれた豊かな土地にあり、尾張国の時代から豆味噌文化が根付くこのエリアですが、豆味噌や小麦を使わないたまり醤油の一大生産地として、今でも生産が盛んで、蔵には数多くの木桶があり、麹からていねいに仕込んでいます。

    画像: 豆味噌に頼る日々|こまきしょくどうからこんにちは

    最近では東京の自然食品屋さんでも買えるようになり、豆味噌のおいしさを身近に感じていただける場所が増えました。

    うちの店では動物性の食品を使わないので、ふだんから動物性の食品を食べる方には物足りなさを感じるのでは?と、心配でした。でもこの豆味噌を使うと旨みが強く、味噌汁もだしがいらないくらい満足する味となります。塩分も、豆味噌は色が濃いので一見しょっぱそうですが、米味噌・麦味噌と比べて低いのが特徴です。

    昔からうちの料理教室でお話ししてきましたが、冷蔵庫に三種類の味噌があると重宝します。

    家族が好きな味の味噌、あえものに使いやすい白味噌、味がさびしいときに旨みを足す豆味噌。これだけあれば料理のレパートリーが増え、味の変化が七色になります。

    どうぞ、頼りになる豆味噌に出合ってください。

    切り干し大根の味噌汁のつくり方

    画像: 切り干し大根の味噌汁のつくり方

    材料(2~3人分)

    ● 切り干し大根(乾燥)10g
    ● 水600ml
    ● 豆味噌30g

    ※お好みで豆腐・油揚げ・小松菜などを加えても。

    画像: 材料(2~3人分)

    つくり方

     切り干し大根をハサミで細かく切り、鍋に入れ水を加える。

     切り干し大根がふやけるまで置いておき、豆味噌、好みの具材を入れて煮る。


    画像: つくり方

    藤井小牧(ふじい・こまき)
    東京・秋葉原にある「カフェ風精進料理 こまきしょくどう」店主。臨済宗僧侶であり、精進料理家としても知られる藤井宗哲氏と、精進料理家の藤井まり氏との間に生まれ、幼いころより精進料理とともに育つ。現在はお店に立つかたわら、東京の生産者・加工業者を応援する活動「メイドイン東京の会」にも参加している。著書『こまき食堂』(扶桑社)が発売中。

    「こまきしょくどう」は現在休業中。2020年5月下旬再開予定。

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    天然生活の本『こまき食堂』(藤井 小牧・著)
    天然生活の本
    『こまき食堂』(藤井 小牧・著)

    天然生活の本『こまき食堂』(藤井 小牧・著)

    B5判
    定価:本体 1,400円+税
    ISBN978-4-594-08460-8

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