(『天然生活』2013年8月号掲載)
基本を押さえて、心に残る一通に
「いまは、メールでのやりとりが中心で、手紙をもらう機会は年に数回、という人が大半です。だからこそ、手書きの手紙は、数行の短い文面でもうれしいものです」と話すのは、手紙文化愛好家のむらかみかずこさん。
「ですから、ふだんの手紙は、あまりマナーを堅苦しく考えず、会話をするように、等身大の言葉で綴りましょう。目上の方へのお礼状など、改まった場面では、基本の構成やマナーをおさらいしておくと、失礼のない手紙が書けます。基本を身につけたら、相手との関係に合わせて自由にアレンジを加えてみて」
ふだんの手紙では、便箋や切手などを選ぶときに「自分らしさ」を演出すると、書くのが、より楽しくなります。
「たとえば、名前が百合子なら、ゆりの絵柄のレターセットをそろえてみたり、写真が趣味なら、カメラ柄の便箋を使ったり。そんな遊び心が、相手にとってはうれしいサプライズ。心に残る手紙になり、相手との距離も縮まります」
下の5つのポイントを参考に、自分自身も楽しみながら手紙を書きましょう。
手紙を書くときの5つのポイント
手紙の文面だけでなく、便箋や切手などからも気持ちは伝わるもの。文章や字に自信がなくても、自分らしい手紙に仕上がります。
1 便箋を選ぶ
デザインや紙の質感が好きなものを選びましょう。便箋に季節の花などの絵柄があれば、文頭に綴る季節のあいさつの代わりにもなります。
2 筆記用具を選ぶ
筆記用具によっても、手紙の印象は変わるもの。便箋の紙質との相性も考えて選んで。気持ちを伝える手紙には、万年筆がおすすめ。インクのにじみが、文字に味わいや温かみを添え、その人らしさが表れます。
3 文章を考える
改まった手紙の場合は、形式にのっとったマナーも大事ですが、ふだんの手紙では、それほど気にしなくても大丈夫。「上手に書こう」と構えずに、メールを打つような感覚で、飾らない言葉で気持ちを伝えましょう。
4 手書きで文字を綴る
字には、書く人のコンディションが出るので、さわやかな天気の日や午前中などに書くのがおすすめ。また、青や茶色のインクのペンで書くと明るい印象の手紙になり、字に自信がない人でも楽しく書けます。
5 切手を貼る
季節や相手の趣味にちなんだ、絵柄の美しい記念切手を貼って送ると、「自分のことを思って選んでくれた」と喜ばれます。蝶々の切手と花の切手など、幾つか組み合わせて貼るのも、楽しいアイデア。
ひと工夫でより印象的に心に残る手紙のアイデア
身近なものを便箋代わりにして、思わず笑みがこぼれる手紙に。
メッセージ付きのうちわを、お中元と一緒に
うちわに、夏のあいさつや、贈るものについてのコメントなどを書いてお中元に添えれば、季節感あふれる送り状に。パタパタあおぐたびに、相手も楽しい気持ちになるはず。
感想を書いたしおりを本に挟んで
本を貸すときや返すときには、「楽しんで!」「感動しました」などと書き添えたしおりも一緒に。しおりは、きれいな包装紙やメモ用紙を、縦長に切って代用しても。
一筆箋にメッセージを添えて座席表に
ホームパーティでは、それぞれの席に、ひと言メッセージを添えた一筆箋を。それぞれの招待客に合ったデザインの一筆箋を選べば、より心のこもったおもてなしに。
大きめの便箋でお金を包んで返す
少額のお金を返すときには、大きめサイズの便箋に、「ありがとう」「助かりました」など、ひと言お礼を書き込み、お金を包んで渡すと、大人の女性らしい配慮が伝わります。
<取材・文/神坐陽子 イラスト/サノマキコ>
むらかみかずこ
一般社団法人手紙文化振興協会 代表理事。いまの時代に合う気持ちが伝わる言葉や手紙の書き方を提唱。手紙・文章の書き方の通信講座を運営するほか、全国各地に手紙の書き方講師を育成。著書・監修書多数。
サノマキコ/イラスト
神奈川生まれ、神奈川在住。主な活動は、雑誌や書籍等に生活や健康に関するイラストを描くこと。毎年「GINZA HAKKO 木の香」にてグループ展を開催。次回開催予定は2021年1月26日(火)~1月31日(日)
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