(『朝作って、夜仕上げる 段取りごはん』より)
朝の料理が、頭の準備体操
家に帰ったらすぐに晩酌をはじめたい
「疲れている時はもやしの袋を開けるのもめんどうで」と、冗談まじりの本音トークがたのしい谷山さん。
仕事の後の晩酌のために、朝のうちに「あとひと息」のところまで、おつまみの支度を進めておくのが日課です。
「朝、料理をするのは目覚まし代わりでもあるんです。私は通勤が短いので、料理をしながら手を動かしたり、順番を考えたりすることで、仕事前の準備体操をしているような感覚。夜はすぐ呑みたいし、呑んじゃうと洗い物をするのも嫌でしょう。だから洗い物がなるべく出ない手順を考えるのが、けっこうおもしろくて。最近では包丁を使わないでも仕上げができるぐらいに、段取りが進化したんですよ」
日中は、いざ仕事がはじまれば何が起こるかわかりません。「うまくいかなくてやさぐれたりすれば、帰ってからちくわにチーズをつめる気にもなれない」と笑います。
でも、朝のうちにちまちまと準備しておけば「ああ、今日はちくわにチーズがつまってるんだ。あれを焼いて食べるのうれしいな」と思いながら一日をすごせる。
朝の作り置きは、夜の自分のために “おたのしみ” を仕込んでおくことなのです。
たのしく料理をするために
平日は、夫の帰りを待ちながらの晩酌タイム。ただいまの声がきこえたら、自分と同じおつまみをさっと出せる点も都合がよくて、今のような支度のスタイルにたどり着きました。
揚げ物やパスタなどのできたてがおいしい料理は一緒にいられる週末にたのしみます。
「かつては煮物や煮びたしをまとめて作っていたけれど、飽きるし味も落ちるしで、食べきれないことも。この頃は食材を使いやすいように整えておいて、その日の気分でアレンジがきくようなレパートリーを増やしています。大人のふたり暮らしだから “多めに作りすぎない” のはすごく大事。そして、下ごしらえしたものは “2~3日で使い切る” と決めています。それ以上あると忘れちゃうし、食べたくなくなっちゃうから。冷蔵庫にあるな……と見つけたら、すぐに何かとまぜる。見なかったことにしない(笑)」
めんどうだな、と思う気持ちをそのままにするのが苦手な谷山さんは、先手を打ってすっきりしたくて、いろんな対策で日常に風を通している様子。料理のモチベーションをあげるために、買い物の仕方にもひと工夫が。
「料理をするのがたのしみになるような食材を買いたいんです。野菜は地元野菜を専門に売っている八百屋さんが、わくわくしていいんですよ。お肉や魚は多少高くてもいいものを選びます。乾物や調味料も個人店や専門店で探すか、旅先で買うのもおたのしみです。休みの日に余裕があれば、夫に車を出してもらって農協直売所とか個性派のスーパーマーケットに遠征することも。マンネリになりがちな自分の料理に変化がつけられます」
時々は、気分転換にお総菜を買うこともありますが、そのまま出すとわびしいし、罪悪感もちょっぴり。だからお総菜を葉ものと和えてサラダ仕立てにしたり、軽く火を入れたり、ひと手間を加えて気持ちを盛りあげます。
料理の支度はまるでリレーのよう。毎日続けていけば、少し残ったものをまわせてどんどんラクになる。そのリレーを途切らせまいと、谷山さんは今日もせっせと朝の仕込みに向かいます。
買い物
料理をするのがたのしくなる食材を買う
野菜はご近所の「しゅんか しゅんか」で、新鮮な地元野菜を選びます。いい食材に出合いながら料理に向かう気持ちを盛りあげて。
すぐにしまえない時はかごにひとまとめ
買い物した食材をどうしまうかが段取りの勝負。ひと手間かけられない時は、そのまま冷蔵庫に入れたりせずに、見える場所に一時置き。
元気な時に買い出しに行き、しまう前にチームを分ける
ひき肉はすぐ使えるよう、しょうがや塩、酒などをまぜてから保存。
白菜、ブロッコリーなどかさばる野菜はカットして保存袋へ。
残った野菜は保存袋にまとめておき、早めに使えるように意識する。
ミニトマトは洗ってへたを取り、つぶれないように保存容器へ。
青じそは少しだけ水をはった瓶につけておくと、ながもちします。
葉ものは水を入れた花瓶に挿して見える場所へ。早めに使います。
くふう
乾物をつねにスタンバイしている
薬膳の本で身体にいいと読んでから、きくらげがマイブームに。大好きなお豆ときくらげは、すぐ使えるように水で戻しておきます。
何を食べたか献立をメモしておく
時々は、一定期間、食べたものをカレンダーにメモしてみます。後から読み返すと「そうだ、あれ作ろう」と献立のヒントに。
一週間のうち半日は作り置きにあてる
余裕がある日はキッチンにこもり冷蔵庫の整理と補充。買い出しをして野菜をしまったり、煮豚やハンバーグだねを作って冷凍したり。ゼロから料理をすることがなくなって、リレー方式におかずが決まるように。
<撮影/馬場わかな 構成・文/石川理恵>
谷山彩子(たにやま・あやこ)
1966年生まれ。セツ・モードセミナーを卒業後、HBギャラリー勤務を経て、フリーランスに。暮らしまわりのモチーフを得意とし、『暮しの手帖』をはじめとする雑誌の挿し絵、書籍の装画、広告のイラストなど幅広いジャンルを手がけている。
http://taniyama3.tumblr.com/
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