夏は家庭菜園をしているご家庭も多いのでは? トマトやナスの初収穫を喜ぶ声をよく耳にします。そこで今回は、家庭菜園や野菜をテーマに選んでみました。
『ソフィーのやさいばたけ』(ゲルダ・ミューラー作 ふしみみさを訳 BL出版)
待ちに待った夏休み。
ソフィーは田舎のおじいさんの家に泊まりに行きました。
そこには広い畑があり、今年はソフィーのための畑も用意してあります。
ラディッシュ、ニンジン、レタス、と好きな野菜の種を畑にまくソフィー。
種はとてもちいさくて、まくのは意外とむずかしいことをソフィーは知ります。
夏から、秋、冬と、畑で必要な作業をおじいさんからソフィーが教わるにつれて、わたしたちも一緒に学ぶことができるようになっています。
テントウムシはアブラムシを食べてくれる益虫だということや
(テントウムシの幼虫って見たことありますか? 将来、テントウムシになるとは思えない姿をしています)
夜にはコウモリが野菜を食べる虫を退治してくれていることなど、
畑にまつわるさまざまなことも、知ることができます。
最後にソフィーは、野菜の種をおじいさんにプレゼントされて……。
日々、成長していく野菜の姿に一喜一憂し、採れたてのみずみずしい野菜をいただくときには、心の底から満足感が得られる家庭菜園。
ベランダ菜園でもいいから、やってみたい!と思わせてくれます。
『トマトさん』(田中清代作 福音館書店)
「ある なつの ひるさがり。
まっかに うれた トマトさんが
トマトのきから どった、と おちた。」
地面に落ちてしまった、大きなトマトさん。
太陽がぎらぎらと照りつけ、暑くてかないません。
同じように落ちたミニトマトたちは、ころころと転がって、近くの小川に飛び込んでいくのに。
そこへ、とかげさんたちがやってきました。
とかげさんから、小川に行こうと誘われても、泳ぐのなんか、みっともとない、と断るトマトさん。
でも本当は……。
素直になって、ありのこや虫、とかげたちに手伝ってもらい、小川に飛び込んだトマトさんの表情を、ぜひご覧いただきたいのです。
なんとも気持ちよさそうで、みずみずしくて。
トマトさんには悪いけど、がぶりとかぶりつきたくなりました。
『すいかのプール』(アンニョン・タル作 斎藤真理子訳 岩波書店)
すいかは野菜か果物か論争が起こりそうですが、どうしてもご紹介したかった、この絵本。
「まなつの お日さま あっつあつ。
すいかはすっかり じゅくしています。」
一般的にはすいか割りでもして、みんなでわいわい食べるところですが、
この絵本では、違います。
すいかのプールが、プール開きするのです。
種をすぽっと抜いて、ちゃぷんと浸かれば、いい気持ち。
続々と村人たちが集まってきて、すいかのプールに飛び込みます。
文はとても少なくて、素朴で懐かしい雰囲気の絵で、お話は進みます。
すいかのプールで泳いだことなんか、ないのに、
すいかの実に足を踏み入れたときのサクッとした感触や、
周囲に漂う甘い香り、
海に入ったときのような、ちょっとべたべたする肌の感じなど、
ほんとうに体験したような気分が味わえます。
すいかを食べながら自由に空想すれば、忙しない日常の、ちょっとした休止符になると思います。
長谷川未緒(はせがわ・みお)
東京外国語大学卒。出版社で絵本の編集などを経て、フリーランスに。暮らしまわりの雑誌、書籍、児童書の編集・執筆などを手がける。リトルプレス[UCAUCA]の編集も。ともに暮らす2匹の猫のおなかに、もふっと顔をうずめるのが好き。
<撮影/神ノ川智早(プロフィール写真)>