(『天然生活』2016年7月号掲載)
阿部家の片づけの3カ条
一 効率よりも楽しさを優先する
二 見せたくないものは目の届かない所に
三 無理に分類しない
キッチンとパントリー
お客さんから見えない側は、すっきりとしまう収納
1 カトラリーは小引き出しに、中は箱で仕切って
カトラリー類を収納しているのは、事務機器メーカーのスチール製引き出し。浅めなので、カトラリー入れにはもってこい。サイズの合う箱を入れて、用途別に仕切れば、より使いやすく。
2 米びつと炊飯器は、もちろん隣同士が便利
組み合わせて使うものは、並べて置いたほうが断然、便利。というわけで、米と炊飯器はセットで。米びつとして使うのは、ふた付きのブリキ缶。湿気たら困る焼きのりも一緒に入れておく。
3 ざるやトレイは立てて収納し、取り出しやすく
立てておくことで、省スペースになるとともに、重ねて収納した場合よりも一枚ずつの形がはっきり見えるから、取り出すときも楽になる。ブックエンドを利用するアイデア。
◇ ◇ ◇
よく収納テクニックとして挙げられるのは、物を用途別や種類別に分類すること。しかし、頭のなかだけでの分類は、往々にして誤差が生じます。
そこで採用したいのが、 “とりあえず” の分類法。とりあえず、使う場所に置く、作業台の上にのせる。不便を感じたなら、そのつど、よりよいと思う場所に移動させる。物に導かれるままに、どんどん移動させていくのです。
そしてあるとき、ひとつの場所から動かなくなる。そこが、本来あるべき場所。最初から分類することなく、物自身が動きたがっている方向へ動かしてやれば、的確な居場所が決まるのです。
「頭ごなしに、文房具はここ、調味料はここ、などとひとまとめにしなくてもかまわないんですよ。極端なことをいえば、 “男っぽい、女っぽい” とか、自分の感覚で分類してもかまわない。たとえ他人には理解しがたい分類でも、自分の物差しで決めたならば、それはそう簡単にはくずれませんから、雑然とした感じにはなりません」
阿部家の間取り
お気に入りの道具を見せるキッチンで、料理する気分を盛り上げる|片づけが楽しい家/建築家・阿部 勤さん ⇒
2階のアトリエには好きなものだけを。視界に入るものが建築のアイデアソースに|片づけが楽しい家/建築家・阿部 勤さん ⇒
<撮影/柳原久子(https://water-fish.co.jp/) 取材・文/福山雅美 イラスト/須山奈津希>
阿部 勤(あべ・つとむ)
1936年生まれ。早稲田大学第一理工学部建築科卒業後、坂倉準三建築研究所入所。1975年、室伏次郎氏とともにアルテック建築研究所設立。自邸は「中心のある家」と呼ばれ、住宅建築の名作とされる。著書に『暮らしを楽しむキッチンのつくり方』(安立悦子氏との共著/彰国社)など。