• 1974年に竣工した、建築家・阿部勤さんのご自宅。名建築と謳われるその家は、愛するものにあふれ、豊かで、おおらかな空気に満ちていました。今回は、阿部さんのアイデアの源、2階にあるアトリエの様子を拝見します。
    (『天然生活』2016年7月号掲載)

    阿部家の片づけの3カ条
     効率よりも楽しさを優先する
     見せたくないものは目の届かない所に
     無理に分類しない

    アトリエ
    視界に入るものが建築のアイデアソースに

    画像: 2階にある仕事場は、ぐるりと窓に囲まれた、庭の木々を眺められる明るいスペース。ここにも、好きなものしか置かれていない

    2階にある仕事場は、ぐるりと窓に囲まれた、庭の木々を眺められる明るいスペース。ここにも、好きなものしか置かれていない

     定規や道具はいつもデスクに出しておく

    いつも使う仕事道具は、いちいちしまわない。とくに作業の途中ならば、出しっぱなしにしておいたほうが、再開するときもスムーズ。もちろん、道具は、お気に入りのものを選んである。

    画像: 1 定規や道具はいつもデスクに出しておく

     触って眺めるお気に入りのもの

    窓辺に並べておくのは、インスピレーションを与えてくれる大好きなもの。日の光を受けて映えるような、ガラス製のものが多くなる。ときには気分転換に、手に取ったり眺めたり。

    画像: 2 触って眺めるお気に入りのもの

     好きな本は平積みにして何度も読む

    作業机の後ろにある大きめのローテーブルには、ふとしたときに手に取りたい、気に入った本を並べている。専門書から、絵本、小説までジャンルを問わず、とくに分類することなく置く。

    画像: 3 好きな本は平積みにして何度も読む
    画像: 建築作品のスケッチには、長年、月光荘のノートを愛用。いつでも見返せるように本棚にまとめて保管

    建築作品のスケッチには、長年、月光荘のノートを愛用。いつでも見返せるように本棚にまとめて保管

    変化に合わせた微調整が居心地のよさを生み出す

    暮らしはスケッチに似ている、と阿部さんは考えます。

    初めから決め込んで線を引くのではなく、鉛筆を滑らせながら、短い線を幾つも重ねるうちに、少しずつ全体の形が見えてくる。どの線を太くするのか、どの線を残すのか。自分の描きたい姿を、その時々で感じ取るままに線を重ねる。

    「生活は、変化と選択の連続。無意識に小さな取捨選択をしながら、細かな調整を加えていく。居心地のいい空間は、それを繰り返し、つくられていくのでしょう」

    阿部家の間取り

    画像1: 阿部家の間取り


    <撮影/柳原久子(https://water-fish.co.jp/) 取材・文/福山雅美 イラスト/須山奈津希>

    画像2: 阿部家の間取り

    阿部 勤(あべ・つとむ)
    1936年生まれ。早稲田大学第一理工学部建築科卒業後、坂倉準三建築研究所入所。1975年、室伏次郎氏とともにアルテック建築研究所設立。自邸は「中心のある家」と呼ばれ、住宅建築の名作とされる。著書に『暮らしを楽しむキッチンのつくり方』(安立悦子氏との共著/彰国社)など。


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