• 1974年に竣工した、建築家・阿部勤さんのご自宅。名建築と謳われるその家は、愛するものにあふれ、豊かで、おおらかな空気に満ちていました。今回は、お気に入りの道具たちに囲まれたキッチンの様子を拝見します。
    (『天然生活』2016年7月号掲載)

    阿部家の片づけの3カ条
     効率よりも楽しさを優先する
     見せたくないものは目の届かない所に
     無理に分類しない

    キッチン
    お気に入りの道具を見せて、料理する気分を盛り上げる

    画像: どこに何があるのか一目瞭然。物はたしかにたくさんあるけれど、あるべき場所、手に取りやすい位置に収まっているから、料理中にあれこれ捜すことはない

    どこに何があるのか一目瞭然。物はたしかにたくさんあるけれど、あるべき場所、手に取りやすい位置に収まっているから、料理中にあれこれ捜すことはない

     水切りかごに道具をまとめる

    こまごました道具類は、うどんの水切りざるの中に差しておく。シンクのすぐ横にあるので、洗ったあとにすぐ戻すことができるのも便利なところ。道具それぞれのデザインが見えるのも楽しい。

    画像: 1 水切りかごに道具をまとめる

     シンク下にはよく使う鍋を収納

    よく使う鍋は、シンク下に設置したワイヤーラックに。引き出し式になっているため取り出しやすい。日常の料理で使う機会の少ない大きな鍋類は、裏の食器棚の上にまとめてある。

    画像: 2 シンク下にはよく使う鍋を収納

     レードルはレンジフードにかけて

    使う所に、使う道具を。レードルや泡立て器などは、IHクッキングヒーター付きの作業台の近くに。レンジフードにかけられ、宙に浮いたその様子は、キッチンを不思議な雰囲気に。

    画像: 3 レードルはレンジフードにかけて
    画像: インゴ・マウラーがデザインしたキャンベルのスープ缶の照明の横には、本物のキャンベル缶を。 “実用ではないもの” も多数

    インゴ・マウラーがデザインしたキャンベルのスープ缶の照明の横には、本物のキャンベル缶を。 “実用ではないもの” も多数

    一本、芯が通っていればその人らしい家になる

    暮らすうえで、自分はいったい何を最優先したいのか。ブレてはいけないのは、そこだけだと阿部さんは話します。

    「たとえば、僕は効率よりも、楽しさとその場所にいることで感じられる心地よさを優先したい。そこで、 “必要だけれど目にしていたくないものは、しまう” というルールが生まれる。少しくらい不便でも、目に入ることで違和感が生まれるのなら、わざわざ戸棚まで取りにいくという、その非効率を受け入れるほうがずっと楽だというわけです」

    もちろん、効率を最優先したい人だっているはず。なにも、それが味気ないと否定するわけではありません。そこに一本、芯が通っていれば、その人らしい家に仕上がっていくのです。

    「家には、『こうあるべき』なんてものはないと思うんですね。その人がどうありたいか、それだけなんです。そこさえブレなければ、その一点に向かって収斂され、まさに、その人そのものといった空間ができ上がっていくはずです」

    阿部家の間取り

    画像1: 阿部家の間取り


    <撮影/柳原久子(https://water-fish.co.jp/) 取材・文/福山雅美 イラスト/須山奈津希>

    画像2: 阿部家の間取り

    阿部 勤(あべ・つとむ)
    1936年生まれ。早稲田大学第一理工学部建築科卒業後、坂倉準三建築研究所入所。1975年、室伏次郎氏とともにアルテック建築研究所設立。自邸は「中心のある家」と呼ばれ、住宅建築の名作とされる。著書に『暮らしを楽しむキッチンのつくり方』(安立悦子氏との共著/彰国社)など。


    This article is a sponsored article by
    ''.