(『天然生活』2016年7月号掲載)
阿部家の片づけの3カ条
一 効率よりも楽しさを優先する
二 見せたくないものは目の届かない所に
三 無理に分類しない
キッチン
お気に入りの道具を見せて、料理する気分を盛り上げる
1 水切りかごに道具をまとめる
こまごました道具類は、うどんの水切りざるの中に差しておく。シンクのすぐ横にあるので、洗ったあとにすぐ戻すことができるのも便利なところ。道具それぞれのデザインが見えるのも楽しい。
2 シンク下にはよく使う鍋を収納
よく使う鍋は、シンク下に設置したワイヤーラックに。引き出し式になっているため取り出しやすい。日常の料理で使う機会の少ない大きな鍋類は、裏の食器棚の上にまとめてある。
3 レードルはレンジフードにかけて
使う所に、使う道具を。レードルや泡立て器などは、IHクッキングヒーター付きの作業台の近くに。レンジフードにかけられ、宙に浮いたその様子は、キッチンを不思議な雰囲気に。
一本、芯が通っていればその人らしい家になる
暮らすうえで、自分はいったい何を最優先したいのか。ブレてはいけないのは、そこだけだと阿部さんは話します。
「たとえば、僕は効率よりも、楽しさとその場所にいることで感じられる心地よさを優先したい。そこで、 “必要だけれど目にしていたくないものは、しまう” というルールが生まれる。少しくらい不便でも、目に入ることで違和感が生まれるのなら、わざわざ戸棚まで取りにいくという、その非効率を受け入れるほうがずっと楽だというわけです」
もちろん、効率を最優先したい人だっているはず。なにも、それが味気ないと否定するわけではありません。そこに一本、芯が通っていれば、その人らしい家に仕上がっていくのです。
「家には、『こうあるべき』なんてものはないと思うんですね。その人がどうありたいか、それだけなんです。そこさえブレなければ、その一点に向かって収斂され、まさに、その人そのものといった空間ができ上がっていくはずです」
阿部家の間取り
お客さんから見えないパントリーは、すっきりとしまう収納|片づけが楽しい家/建築家・阿部 勤さん ⇒
2階のアトリエには好きなものだけを。視界に入るものが建築のアイデアソースに|片づけが楽しい家/建築家・阿部 勤さん ⇒
<撮影/柳原久子(https://water-fish.co.jp/) 取材・文/福山雅美 イラスト/須山奈津希>
阿部 勤(あべ・つとむ)
1936年生まれ。早稲田大学第一理工学部建築科卒業後、坂倉準三建築研究所入所。1975年、室伏次郎氏とともにアルテック建築研究所設立。自邸は「中心のある家」と呼ばれ、住宅建築の名作とされる。著書に『暮らしを楽しむキッチンのつくり方』(安立悦子氏との共著/彰国社)など。