ひりゅうずをつくる
前回、隣町に暮らす寺岡亜希子さんの黄梅ジャムのつくり方をご紹介しました。じつはその際にもう一品、お昼ごはんにと「ひりゅうず」のつくり方も習っておりましたので、ご紹介したいと思います。
普段からお肉をあまり召し上がらない亜希子さんの、定番メニューの一つだというひりゅうず。関東では「がんもどき」と呼ばれる、豆腐のおかずです。
「揚げたてがとってもおいしいのよ」と話すその笑顔に、私もお腹がなるのをこらえながら、古民家七代・米山永子さんといっしょに台所に立ちました。
ひりゅうずのつくり方
材料(つくりやすい分量)
● 木綿豆腐 | 1丁(300g程度) |
● 自然薯 | 130g |
● 人参、ひじき、大根 | お好みの量 |
● めんつゆ | 適宜 |
● A | |
・卵 | 1/2個 |
・しょうゆ | 大さじ1 |
・砂糖 | 小さじ1 |
・小麦粉 | 大さじ1 |
つくり方
1 豆腐は皿で重石をして10分ほど置いたのち、乾いたふきんに包み直して冷蔵庫に入れ、水切りをする。
2 人参は3センチほどの長さの千切りにし、ひじきは水でもどして長いものは切る。いずれも熱湯でさっとゆでてザルにあげておく。大根はすりおろしておく。
3 1の豆腐を裏ごし器で裏ごしする。
4 自然薯をすりおろし、3に混ぜ合わせる。
5 3にAを加え、全体によくなじませたら、2の人参、ひじきを加えて軽く混ぜ合わせる。
6 油(分量外)を手につけながら、5の具を団子状に丸めてバットに乗せていく。(サイズのめやすはゴルフボールよりふたまわり大きいくらい)
7 深めのフライパンに油を注ぎ、160℃に熱する。15~20分ほど、ゆっくりと揚げる。その後少し温度を上げ、カリッときつね色にする。
8 皿に盛り付け、大根おろしをたっぷりと盛り付けたら、上から希釈しためんつゆを回しかけていただく。
◇ ◇ ◇
お恥ずかしながらおせちの栗きんとん以外、ふだんの暮らしで裏ごしなど使ったことのない私。
けれどそれさえ済ませてしまえば、あとは具を混ぜて、揚げるだけ。ひりゅうずはとてもシンプルで食べ応えもあるお惣菜になるのだと、亜希子さんに教えていただきました。
たっぷりの大根おろしを盛り付け、おつゆをかけたらひりゅうずは、副菜というよりもむしろ、主役の存在感。
「見つけたら買っておく」という自然薯のおかげで豆腐のまとまりもよく、むっちりとした食感がまた、食欲を誘います。
常備菜のおから煮と、酢漬けの玉ねぎを使ったサラダ、青ネギを豚肉で巻いて焼いたものも添えて、なんとぜいたくなお昼でしょう。
ご飯は、玄米と小豆を少しの塩を加えて炊き、保温して熟成させる「酵素玄米」をもう30年以上続けている、と亜希子さん。
それは健康のためだけでなく、「これがあればいつお客様がみえても『あと少しおかずを足せばごはんが出せる』って、安心感があるのよ」と、話します。
なるほど、亜希子さんのおもてなし上手の秘訣は、こんなところにもありました。
大好きなイギリスのアンティークの話、猫たちの話に、庭の花々の話などなど。まだ出会ったばかりの私ですが、おいしいお食事をいただきながら、亜希子さんとのおしゃべりの時間は風のようにすぎていきました。
永子さんは、生家である古民家を活かしながらの暮らしをはじめたとき、亜希子さんと、今は亡き夫の正隆さんにいつも励まされ、とても勇気付けられたのだと話します。
そういえばこんな風に、さまざまな世代の方としぜんなお付き合いをする機会が、この土地に来てぐっと増えたように感じます。私もこんな風に日々を重ねていけたらいいな。
素敵な人生の先輩にまた巡り会えた喜びを胸に、お腹も心もほかほかで家路につきました。
玉木美企子(たまき・みきこ)
農、食、暮らし、子どもを主なテーマに活動するフリーライター。現在の暮らしの拠点である南信州で、日本ミツバチの養蜂を行う「養蜂女子部」の一面も
<撮影/佐々木健太(プロフィール写真)>