“おいしいアイデア” のポイントは、ちょっとずつ “ズラす” こと
「ポイントはね、“ズラし” なんですよ」とのっけから種明かしする金子さん。
たとえば卵サンドなら、定番の “卵+マヨネーズ” から味わいを一歩ズラしてマヨネーズの半分を豆乳に替えて軽さを出す。
「そういえば、卵サンドのマヨネーズ+卵って、要するにほぼタルタルソースだよね?」と気づけば、シャキシャキの玉ねぎときゅうりを加えて、贅沢タルタルソースサンド、的に仕上げてみる。
あるいは、形状をズラして、「卵はみじん切りと限らず輪切りにしても、そりゃ間違いなく “卵サンド” ではある」と意表をついてみる。
さらには、「誰がニワトリの卵と決めた? ウズラの卵もいってみよう!」とミニなかわいさのサンドを披露する。
実は、このような発想の転換を詰め込んでまとめ、パンのおいしさをとことん追求した著書まで持っている金子さん。なんとそのメニュー数は146種類! 先日、テレビでも紹介され、話題にもなっています。
ご本人いわく、「メニュー案を出しても出しても終わらず、アイデアを極限まで絞りとられた」とのこと。
せっかくなので、その入魂の一冊から個人的なベスト8を教えていただくことにしました。
しかも、ここは念を押されたのですが、あくまで「順不同」。ベスト8までしぼるのも心苦しいのに、そこに順位まではつけられないとおっしゃる。なんたる大きなパン愛!
ではさっそく発表いたしましょう。
金子健一さんセレクト! 超個人的ベスト8(順不同)
1 のっけバタートースト
材料とつくり方
食パン1枚を縦3等分に切り、断面から切り込みを入れてポケット状にする。トースターで2分ほど焼き、切り込みにスライスしたバター3gずつを入れる。
2 きな粉バタートースト
材料とつくり方
常温でやわらかくしたバター10gにきなこ小さじ2を混ぜ合わせる。イングリッシュマフィン1枚を厚さ半分に切って、トースターで2分ほど焼き、断面にきなこバター適量をぬる。
3 ねぎしらすピザトースト
材料とつくり方
イングリッシュマフィン1個は厚さ半分に切る。片側の断面に、しょうゆ小さじ1/3とマヨネーズ大さじ1を合わせたものをぬり、万能ねぎの小口切り1/2本分、しらす大さじ1、白髪ねぎ適量、スライスチーズ1枚をのせて霧吹きをし、1分30秒ほどトーストする。仕上げに粉山椒少々をふり、トーストしたもう1枚でサンドする。
4 タンタン風ポテサラサンド
材料とつくり方
フライパンにごま油小さじ2を熱し、とりひき肉80g、長ねぎのみじん切り7cm分、練りごま大さじ2、コチュジャン小さじ3、酒大さじ2、塩ひとつまみを炒め合わせて肉味噌をつくり、マッシュしたじゃがいもに混ぜる。ロールパン1個に切り込みを入れ、断面にバター適量をぬり、ブロッコリースプラウト適量とフィリングをはさむ。
5 バナナフレンチトースト
材料とつくり方
イングリッシュマフィン1個は厚さ半分に切り、フレンチ液(裏ごししたバナナ1/2本分、溶き卵1/2個分、生クリーム50ml)に、途中、返しながら30分ひたす。フライパンにバター5gを熱し、パンを入れ、ふたをして弱めの中火で2分30秒ほど焼く。こんがりと焼き色がついたら返し、ふたをして弱火で2分ほど焼く。焼き上がったらメープルシロップ適量をかける。
6 クリーミーフレンチトースト
材料とつくり方
バゲットは端を落とし、15cm長さに切る。表面(皮)にフォークで穴をあけ、味がしみ込みやすくする。長さを3等分にし、フレンチ液(溶き卵1個分、牛乳100ml、きび砂糖大さじ2、クリームチーズ40g)と一緒に密閉容器に入れて、ひと晩おく(途中、何度か返す)。断面が上になるよう耐熱容器に並べ、トースターに入れて、6分ほど焼く。こんがりと焼き色がついたら、こげないようにアルミホイルをかぶせ、追加で1分ほど焼く。仕上げに粉糖を適量ふる。
7 さんま蒲焼とセロリのクリーミーホットサンド
材料とつくり方
耳を落とした8枚切り食パン1枚をホットサンドメーカーにのせ、汁けをふき取ったさんまの蒲焼き(缶詰)2切れ、セロリの薄切り3cm分、クリームチーズ20gをのせて、粗びき黒こしょう少々をふる。もう1枚のパンでふたをして両面焼き上げる。
8 マンゴーヨーグルトサンド
材料とつくり方
ヨーグルト100gに粗くきざんだドライマンゴー4枚分を入れて、ひと晩、冷蔵庫におき、マンゴーに吸水させる。ドッグパン1個に切り込みを入れ、マンゴーヨーグルトをはさむ。
“いまの気分” のパンを、ピンポイントで見つけよう!
「この本のいいところはですね、ページをめくりながら『あ、これを食べたいな』とつくっていただくことはもちろん、『パンは手元にあるけれど、いまひとつ食べたい味が見つからないな』というときにも、気分にぴったりのおいしいパンを見つけることができることなんです」
著書『ぱんぱかパン図鑑』を手に、そう話す金子さん。
なぜなら、バタートースト、チーズトースト、卵トースト、など各章の扉には、こんなマトリクスがついているから。これが、“図鑑” たる所以。
さらにそれぞれのレシピには、食感の面白さ、あっさり感、お手軽度など、さまざまな視点での点数化がなされているのです。
たとえば卵サンドなら、「お腹はそんなに空いていないから軽めでいい。とはいえ、ちょっと冒険したいから、和風の味つけで……おお、“しば漬けマヨ卵”、おいしそうだぞ!」と、いま食べたい味がピンポイントで見つかるのが便利なのです。
あれこれ眺めているうちに、だんだんお腹がすいてきて、いつの間にか軽食でなく「がっつり」の方に目が移っていくのがありがちなパターンなのですが。
軽めのおやつ感覚から、ごはんがわりのガッツリ系、さらに洋風、和風、エスニックまでを網羅。麺棒でのばす(!)、くるくると巻く……などなど、驚きのテクニックも盛りだくさん。
パンの新たな可能性を開く、『ぱんぱかパン図鑑』。この1冊さえあれば、あなたのパンライフはさらに充実することうけあいです。
<料理/金子健一(つむぎや) 撮影/有賀傑 取材・文/福山雅美>
金子健一(かねこ・けんいち)
料理家。1974年神奈川県横浜生まれ。学生時代、和食店でのアルバイトがきっかけで調理師免許を取得。コピーライターを経てパン職人の道へ。東京・中目黒、原宿で愛されていたパン屋「オパトカ」の店長としてメニュー開発にも携わる。そののち、2005年にマツーラユタカとともにフードユニット「つむぎや」を結成。ケータリング、イベント、雑誌へのレシピ提案など幅広く活躍している。2017年に妻の地元長野県松本市に拠点を移し、ご縁のある農家さんのお野菜などを中心に旬を味わう食堂「Alps gohan」をオープン。『あっぱれ!おにぎり』(金園社)、『和食つまみ100』(主婦と生活社)、『お昼が一番楽しみになるお弁当』(すばる舎)など著書多数。146種類におよぶパンメニューのアイデアを詰め込んだ『ぱんぱかパン図鑑』が電子書籍に続き、2020年5月に復刊。テレビでも紹介され、話題沸騰中。
Alps gohan Instagram @alps.gohan