世界中で愛されるスーパーフード「ビーツ」
ビーツは「テーブルビート」とも呼ばれ、地中海沿岸、北アフリカの国々が原産です。ヒユ科の根菜で大根の仲間。和名を「火焰菜(かえんさい)」といいます。
「甜菜糖」の原料となる「てんさい」の変種で、「てんさい」は色が白いビーツといったところでしょうか。
天然のオリゴ糖を含むので、甘くてぎゅっと硬くて、土のような鉄のような味わいがあり、加熱するとうま味が増すだけでなく、加熱しても栄養が減らないというありがたい野菜です。
ウクライナやロシアでは、ボルシチをはじめ、サラダやピクルス、煮込みといったさまざまな料理にビーツを使います。
消費量はおそらく世界で最も多いと思いますが、寒さの厳しい過酷な環境で彼らが健康を維持してこられたのは、ビーツのおかげといっても過言ではないでしょう。
またビーツは、アジア、ヨーロッパをはじめとするユーラシア各国から北アフリカ、アメリカ、中南米に至るまで世界各国で食べられています。
ジュースやサラダをはじめ、さまざまな方法で煮たり焼いたり、普通の根菜として扱われています。
ビーツは、ポリフェノール、天然オリゴ糖、食物繊維がたっぷりのスーパーフード!
ビーツは「食べる輸血」とも呼ばれ、ビタミン、ミネラルが大変豊富。
ビーツの赤はベタシアニンというポリフェノールで、美肌におすすめです。また、天然のオリゴ糖を含むので、腸内環境の改善にもぴったり。
ロシアでは本当にポピュラーな野菜で「ビーツがあれば医者いらず」といわれるほどです。
女性に嬉しい栄養素がいっぱいです!
ベタシアニン(ポリフェノール) ……アンチエイジングに
天然のオリゴ糖 ……腸内環境を整える、コレステロールの抑制、老廃物排出
ビタミン、ミネラル ……血液サラサラ、体内デトックス、コレステロール値の低下、貧血予防
ヨード分 ……記憶力アップ
カリウム ……高血圧予防、むくみ解消
鉄 ……貧血改善
マグネシウム ……骨粗しょう症予防
パントテン酸 ……動脈硬化、血中コレステロールの合成を促す
NO(エヌオー・一酸化窒素) ……血流の循環をよくする、疲労回復や冷え性、肩こりに
ベタイン ……肝機能を強くする
食物繊維 ……便秘解消、ダイエットに
ビタミンB群(葉酸も含む) ……美肌に、妊婦に
ゆでて甘酢漬けに
ビーツは、ゆでてから甘酢漬けにすると土っぽさが抜けてコクが増し、生とはまた違ったおいしさになります。
甘酢漬けにすることでサラダやあえものほか、さまざまな料理に活用しやすくなります。
皮付きの丸のまま1時間近くゆでる方法は、ロシアでもどこの国でも一般的で、私自身ずっとこうしてきましたが、とても時間がかかります。
ゆでると色素が流れ出るのを心配してのことなのでしょうが、普通の野菜と同じように、小さく切ってゆでても大丈夫です。
ひとつだけコツがあって、ゆで汁に色素が流れ出ても、ゆで続けることです。
すると、やわらかくなる頃には色素が戻り、もとの色に。時間もかなり短くて済みます。
ビーツの甘酢漬けの作り方
材料(作りやすい分量)
● ビーツ | 1個(500g) |
● 甘酢(酢3カップ、水3カップ、砂糖1/4カップ、塩大さじ1/2を合わせたもの) |
作り方
1 ビーツは皮ごと洗ってさいの目に切る。鍋にビーツを入れ、かぶる位の水を注いで火にかける。
2 ゆでていくと次第にゆで汁に色が抜け出る。
3 さらにゆでていくとビーツがゆで汁を吸い戻す。そこまでゆでてやわらかくなったら火を止める。
4 きれいに洗った瓶にビーツを入れ、甘酢を注ぎ入れて漬け込む。
※砂糖の量は好みで調節して下さい。
※冷蔵庫で2週間ほど保存可能。
ビーツの甘酢漬けを使って
エストニア風サラダの作り方
Салат рассолс(サラート ラッソールス)
出合った国 【 エストニアほかバルト3国、ロシアをはじめとする旧ソビエト連邦 】
ビーツのほか、じゃがいも、りんご、きゅうり、にんじんなどの野菜に、酢漬けのにしん、豚肉やハムなどの肉類もすべて角切りにしてサワークリームであえた、日持ちのするおかずサラダです。
翌日になると全体がピンク色に染まり、食べてみるまでどれがどれかわからなくなるのがまた楽しい。
タリンに住む知人は、ピンク色がおめでたいので、新年に必ず作るそう。にしんの代わりにいわしやしめさばなどでも。
一晩おくと、色鮮やかに染まります。
材料(4人分)
● ビーツの甘酢漬け | 1カップ |
● にしん(あじ、いわしなど、好みの青背の魚でもよい) | 1尾 |
. 下味(塩大さじ1/2、砂糖大さじ1/4) | |
● きゅうりのピクルス | 1本 |
● りんご | 小1/4個 |
● じゃがいも | 1個 |
● 豚ロース厚切り肉 | 1枚 |
● 玉ねぎ | 小1/4個 |
● ソース | |
・プレーンヨーグルト、生クリーム | 各大さじ1 |
・マヨネーズ | 大さじ1 |
・マスタード | 小さじ1 |
・塩、こしょう | 各適量 |
● ハーブ(ディル、パセリなどのみじん切り) | 適量 |
● 酢 | 1/2カップ |
作り方
1 にしんは3枚におろして下味をふり、1時間以上ねかせる。さっと水洗いし、酢に浸ける。15分ほどおいてさいの目に切る。
2 きゅうりのピクルスはさいの目に、りんごは皮付きのまま、じゃがいもはゆでて皮をむき、豚肉は10分ほど中火でゆで、ざるに上げて水けをふいて同様にさいの目に切る。玉ねぎは粗みじんに切る。
3 ボウルにソースの材料をすべて入れ、よく混ぜ合わせる。
4 3のボウルににしんの酢漬け、ビーツの甘酢漬け、2の素材を加えてよく混ぜ合わせる。 器に盛り、ハーブを散らす。
〈料理/荻野恭子 撮影/kumonmiwa スタイリング/久保原惠理 取材・文/吉田佳代〉
荻野恭子(おぎの・きょうこ)
料理研究家。栄養士。東京生まれ。実家が飲食店を経営していたため、子供の頃から料理に興味をもつ。女子栄養短期大学卒。1974年よりユーラシアほか65か国以上を訪れ、現地の家庭で料理を習い、食文化の研究を続ける。自宅にて「サロン・ド・キュイジーヌ」を主宰。著書に「手づくり調味料のある暮らし(暮らしの手帖社)」「うま辛発酵だれ(文化出版局)」ほか多数。世界各国のビーツ料理と荻野流セオリーを紹介する『ビーツ、私のふだん料理』が扶桑社より発売中。
サロン・ド・キュイジーヌ
https://www.cook-ogino.jp/
※ 記事中の情報は2020年4月10日現在のものです
『ビーツ、私のふだん料理』(荻野恭子・著)
世界各国のビーツ料理と、荻野流セオリーを詰め込んだ、一冊まるごと「ビーツ」の本
定価:本体 1,500円+税
ISBN978-4-594-08459-2