権利書を探して
経済状況が逼迫しているときは、気持ちまで暗くなる。
若い時は体力も気力も充実しているので、経済的に多少困窮していても、「どうにかなるさ」との気持ちもある。
だが、残り時間が見える年齢ともなると、経済的逼迫は、精神的逼迫へと繋がりかねない。経済的ゆとりは、大切である。
先立った母の諸遺産は、経済的ゆとりへと繋がるので、私は、経済状況が即見える貯蓄、保険は、早々と処理した。
だが、土地の権利書に関しては「土地は地球のもの」と、のんびりと構え、名義変更は面倒だと、始末を友人任せにすべく権利書を渡し、その後放置していた。
数年を経て、時間があるから名義変更を思い立った。
が、粗忽者の私は、権利書の行方をすっかりと忘れてしまっていた。家中くまなく探したが見当たらない。真っ青に。
数度にわたり、保管場所をアチコチ探したが、手掛かりすらもない。
挙句、実家の新潟まで探しに行ったが、見つからない。
妹と相談し、「大した土地でもないから諦めよう」と結論。
だがもしや?と友人に連絡を取ってみた。するとあっさりと「在るよ」
権利書は事なきを得たが、これから先の物忘れは頻繁に起こりうる。
人生終い、永代供養、墓始末、急がねば!
<文/阿部絢子 イラスト/北村人>
阿部絢子(あべ・あやこ)
生活研究家。消費生活アドバイザー。「万人が家事を科学的に効率よくスムーズにこなすには?」を研究、提唱し続ける。『老親の家を片づける ついでにわが家も片づける』『老いのシンプル節約生活』(ともに大和書房)、『ひとり暮らしのシンプル家事』(海竜社)など多数。