• 奈良県でパンとサンドイッチをはじめとするパワーフードを生み出し続けている森田三和さん。25年以上にわたりつくり続けてきたパンの面白さと、森田さんのお店「MIA’S BREAD」に隠された秘密を綴ってもらいました。

    『ミアズブレッドのパンとサンドイッチ』のこと

    画像: 森田三和さんの著書『ミアズブレッドのパンとサンドイッチ』

    森田三和さんの著書『ミアズブレッドのパンとサンドイッチ』

    この本はパンのつくり方とそのパンを美味しく食べるサンドイッチをそれぞれに一例ずつ書いたものです。

    基本的にパンのつくり方はひとつです。それを形を変えること、ブレンドを変えることで表情が変わり、食べ方も変わり、レパートリーが広がっていくことを知って欲しいと思いました。なのでここにあるのはほんの一例です。だけど、ひとつのつくり方さえ覚えれば、一生楽しめるくらいバリエーションが広がると思うのです。

    画像: 何度も焼きたくなる、あきのこない「基本のパン」

    何度も焼きたくなる、あきのこない「基本のパン」

    形として、基本のローフ(分割も型もいらないパン)からプチパン、クッペ、マフィン、ベーグル、ピタ、フォカッチャ、ミニローフ、パンドカンパーニュ・イギリスパン、ブルマンブレッド と形を変えたものが1章に10種類載っています。

    それぞれにブレンドを一種。これを掛け算すると100種類ものパンは焼けるわけです。さらに2種ブレンド3種ブレンドにしたりスパイスをプラスしたりしていくと(ゴマと玄米、イチジクとくるみとシナモンなど)300は超えるでしょう。2章を加えると無限になりますね。それに加えてサンドイッチも組み合わせて行くと一生飽きないと思います。

    そのうち自分の好きな形に変えていくのもいいでしょう。

    毎日パンに向き合うことは、いまを生きるそのものです

    画像: ライ麦、キャラウェイ、くるみのパン ド カンパーニュを使った、「ハム、チーズ、トマトのサンドイッチ」

    ライ麦、キャラウェイ、くるみのパン ド カンパーニュを使った、「ハム、チーズ、トマトのサンドイッチ」

    お料理でも何度もつくっているうちに、なにも見ないで、そして自分が食べたい味をつくれるようになります。パンも同じで、何回も向き合って同じことを繰り返しているうちにコツや意味がわかってくるようになり、そのうちパンと心が通じ合えるようにもなります。

    パンづくりに大切なのは感じる心です。毎日気温も湿度も変わるのでその日その日に感じて対処すること。いまを生きるそのものです。逆にパンづくりが感性さえも育ててくれるのではないかと思います。

    画像: シンプルなパンは、温度や湿度、そのときのこね方によって焼き上がりの表情が変わります

    シンプルなパンは、温度や湿度、そのときのこね方によって焼き上がりの表情が変わります

    おいしい生地さえつくれるようになったら、それをどれだけ楽しむか?と楽しんでいるうちに私の場合は、パンに名前をつけて「MIA’S BREAD」ができ、そのうちお店になったという感じです。

    これは人生の色々にも通じることで、好きなものを見つけたら深く知りたいと思うのが自然なのです。なのであちらこちらと比べずに好きなものを深く知るということは、何かを始める扉のようものだと思います。

    でもつくることが簡単になって、いつでもつくりたくなっても、次の問題は「美味しくできるかどうか?」「自分が生み出すものが受け入れられるかどうか?」。でも結局は自分がつくりたいものをつくり、自分が美味しいと思えばいいのです。そう思えた時に肩の力が抜けて作品がよくなるだと思います。

    自分の生活に合わせたパンのつくり方が、私のレシピ

    画像: グラハム入りイギリスパンでつくった「豆腐ステーキとひじきの炒めサラダのサンドイッチ」

    グラハム入りイギリスパンでつくった「豆腐ステーキとひじきの炒めサラダのサンドイッチ」

    ミアズブレッドのパンレシピは、簡単で覚えやすくて、毎日でもつくることができる。そしてアレンジがきく。自分の生活に合わせたパンのつくり方です。

    いわゆるパン屋さんのレシピ本のように業務用のつくり方を家庭用にアレンジしたものではなく、これが原型です。この原型がパン屋さんになったのです。いまもこのレシピの掛け算です。

    もともとひとりでつくっていたときはこの基本のレシピの倍量の600g を朝2時に起きて時間差で30種類捏ねるという日々でした。手ごねは不可能な量なので、こね機を4台並べて順番にいれて、こねあがったら密閉保存容器に移して発酵させる。発酵機は使わず自然に発酵してきた順に生地を分割、整形して行くという繰り返しです。そのうち焼きあがりタイムがやって来て、焼いている間に次の生地をこねだすという感じ。

    午後からは予約にパンに合わせて計画を組んでひたすら計量と仕込みです。

    そういう日々を25年近く続けることができました。

    想像するだけでもかなりの重労働でしょうが、それができたのはつくったパンを全部誰かが食べてくれるからです。つくりたい欲が止まらない感じでした。何より、パンを介して人に会えるのが最大の喜びでもあります。いまもそうです。

    画像: サンドイッチは、パンと野菜の両方が生き生きと美味しく味わえること

    サンドイッチは、パンと野菜の両方が生き生きと美味しく味わえること

    これはパンを職業にした場合の話ですが、毎日つくる必要もなく、気分転換につくるもよし、お正月のお餅のように1年に一度つくるもよしです。それそれの付き合いでいいと思います。

    でもパンが自然に発酵していく様子は家族が増えたようで、とても楽しいものです。

    パンの発酵する香り、育っていく感じ、出来上がったときの喜びは、生き物と向き合っているような感覚があります。焼き上がりの形も色もひとつとして同じものはないのは手づくりならではのもの。人と同じです。

    なにがいいたいかというと、1日に30種類のパン、この基本の量の60倍をつくれるのだから、ひとつの生地ならご飯を炊くようにつくれるくらい気軽なものだということです。

    材料の役割を覚えておくことも大切な要素です

    画像: 材料の役割を理解すれば、パンと「会話」ができるようになります

    材料の役割を理解すれば、パンと「会話」ができるようになります

    ・砂糖 色づきをよくし発酵の手助けになる(イーストのエサ)

    ・塩 引き締める 粉の味を引き立たせる(抜くと生地がだれてまとならなくなります)

    ・オイル 風味が加わる、生地を大きくする。潤滑油になるのでつくりやすい

    ・イースト パン酵母 生地をふっくらと発酵させるためのもの

    ・水 適量加えて混ぜ合わせることによって発酵が始まる。水分量でパンの表情が変わる

    ・温度 高くなると発酵が早くなってイースト臭がする。低いと時間がかかる。標準は30℃前後

    手ごねでつくるのなら150gの粉をいくつか軽量しておけば気軽(夏は冷蔵庫に)。

    半分は砂糖とイースト入り、半分は塩入りにしておくとさらに楽。

    ショートニングも測ってジップロックに入れて冷蔵庫に保存しておく。

    気が向いたら水さえ測ればつくれます。

    ちなみに私は、お米も買って来たら1.5合(225g)ずつに分けて小分けにしてます。

    これを踏まえてもう一度この本を読み返していただけたら、無限に広がって行く世界観を感じていただけると思います。

    パンの形×ブレンド×大きさ、そしてそれぞれのサンドイッチ=無限大! です。



    〈撮影/結城剛太〉

    画像: 森田三和 絵を描くように自分が食べたい味かたちをつくり続けて1973年ごろ、「MIA'S BREAD」が自然発生的にオープン。パンから始まり、サンドイッチ、スープ、カフェへと広がり20年を機に店舗を地元ならまちに移店。生まれ育った懐かしい景色に囲まれて相変わらずパワーフードを生み出す日々を送っている。扶桑社より、著書『ミアズブレッドのパンとサンドイッチ』の新装版が発売中。 http://miasbread.com/

    森田三和
    絵を描くように自分が食べたい味かたちをつくり続けて1973年ごろ、「MIA'S BREAD」が自然発生的にオープン。パンから始まり、サンドイッチ、スープ、カフェへと広がり20年を機に店舗を地元ならまちに移店。生まれ育った懐かしい景色に囲まれて相変わらずパワーフードを生み出す日々を送っている。扶桑社より、著書『ミアズブレッドのパンとサンドイッチ』の新装版が発売中。
    http://miasbread.com/

    ◇ ◇ ◇

    天然生活の本『ミアズブレッドのパンとサンドイッチ』(森田三和・著)
    天然生活の本
    『ミアズブレッドのパンとサンドイッチ』(森田三和・著)

    天然生活の本『ミアズブレッドのパンとサンドイッチ』(森田三和・著)


    B5判
    定価:本体 1,400円+税
    ISBN978-4-594-08514-8


    本誌プレゼントへのご応募はこちら

    お得な定期購読はこちらを
     (富士山マガジンサービス)

    読みもの,おいしいもの,パン,パンづくり,ミアズブレッド,森田三和

    This article is a sponsored article by
    ''.