チベット香で場を浄化し、オンとオフを切り替える
前回紹介した、わたなべさんの朝のルーティンに欠かせないのが、お香を焚く こと。毎朝、神棚に水をあげ、チベット香を焚いて祈ります。
これは、ネパールで共に暮らしたチベット人家族の習慣をそのまま続けているのだそう。
現地では、祈りを捧げる際、場を浄化する ために使われるチベット香。
一般的に流通しているお香の多くが化学的な香り付けがされているのに対し、ヒマラヤ産のハーブや鉱石などの 天然成分のみ で作られています。
「チベット医学で使われることもあるほど、薬効の高いお香でもあります」というわたなべさん。
ホリスティックな治療体系をもつ伝統的なチベット医学では、まず脈診で患者の状態を把握してから自然成分の医薬を処方しますが、鼻から吸う薬としてお香が使われることもあるのだといいます。
「寝付けない、疲れがとれないなど、症状に合ったお香を焚くと、不思議と症状が落ち着きます。身体の緊張をほぐし、循環を高める効用があるのだと思います」
わたなべさんが、チベット製の香箱でお香を焚いてくれました。立ちのぼる香りは、ほんのりスパイシー。
「草っぽい」と言われることが多いという、まさに自然そのものの香りは、心をすうっと落ち着かせてくれました。
ふだんのわたなべさんは、朝にお香を1本焚いて「読経 → お祈り → 呼吸法 → 瞑想 → ヨガ」というルーティンを終えた後、お香を半分に折って2本にして手に持ち、お清めをしながら家じゅうを回って全ての部屋の窓を開け、空気を入れ換えます。
それから、多くの時間を過ごすリビングと、気が入る玄関に1本ずつ置き、焚き終わったら窓を閉めます。
「家も自分も清めることで、爽やかに1日を始められます。冬でも毎日行いますよ(笑)。この後に仕事を始めるので、オンとオフを切り替えるきっかけにもなりますね」
身体も心もやわらぐ、ヒマラヤンハーブのマッサージオイル
もうひとつ、わたなべさんの身体を整えるために手放せないものが、チベット医学に由来するマッサージオイル。
「こちらは完全に医薬品として扱われていて、疲労や筋肉痛などに効果的。さらに香りがいいので、身体も心もやわらぐんです」
鼻を近づけてみると、ふんわりやわらかな甘さの、リラックスできる香しさ!
ナツメグやジンジャーを始めとした ヒマラヤ産ハーブ が配合されているそうですが、スパイスっぽさは全くなく、あくまでやさしく甘い香り。
フレグランスとして楽しむ人もいるとの話にも頷けます。
場を清め、安らぎをもたらす香りの効果を改めて感じた今回。
暮らしに取り入れる際も、ぜひ自然の恵みを活かしたものを選びたいと思いました。
〈写真・文/高瀬由紀子〉
わたなべ かおり
ai, 主宰・デザイナー。東京でフリーグラフィックデザイナーとして活動中に、世界を一人旅してまわる。7年間のヒマラヤ暮らしを経て、2010年に帰国。東京を拠点に活動後、2014年に香川・仏生山へ移住。ネパールの作り手との商品製作を続けながら、極楽仏生山暮らしを満喫中。
http://aistore.jp