• 年末年始ならではの決まりごとを、ディスプレイデザイナーのミスミノリコさんに伺いました。あわただしくも、楽しい空気をはらむこの時季。毎年必ずやっていることはありますか?
    (『天然生活』2018年1月号掲載)

    ディスプレイデザイナー ミスミノリコさん
    小さな手仕事と山形・鶴岡でのお正月

    店舗のディスプレイの仕事をしているミスミノリコさん。準備を含めると、実際より1~2カ月、前倒しして行事や季節が移り変わっていくのだといいます。

    「お正月は毎年、夫の実家である山形・鶴岡へ行っています。その前後はあわただしくもあるけれど、お正月ならではのゆったりとした時間も楽しんでいますね」

    手仕事が得意なミスミさん。お正月の小さな飾りをつくったり、ぽち袋や箸袋を自作したり。その作業の実に楽しそうなこと!

    画像: ディスプレイデザイナー ミスミノリコさん 小さな手仕事と山形・鶴岡でのお正月

    たくさんの人が目にするディスプレイと、家の中だけのこまごまとした事柄。両方の面白さを知っているからこその大切な時間です。

    鶴岡から戻ったら、家族だけの静かなお正月を味わいます。

    お膳の椀には山形の伝承野菜である甚五右ヱ門(じんごえもん)芋を使った、具だくさんのいも煮をよそいます。

    「山形の里いもがあまりにおいしくて大好物になりました。いも煮といえば秋ですが、冬にも食べたい一品。えびを加えて、お正月アレンジにしました」

    年末年始の準備は、もうすぐ始まります。

    ◇ ◇ ◇

    12月中旬
    ぽち袋、箸袋を自分でつくる

    画像: 赤とゴールドの組み合わせが、どことなくお正月らしい印象。「色選びや配置で印象がガラリと変わって楽しいですし、手軽にできますよ」

    赤とゴールドの組み合わせが、どことなくお正月らしい印象。「色選びや配置で印象がガラリと変わって楽しいですし、手軽にできますよ」

    手づくりスタンプのアイデアが豊富なミスミさん。真っ白いぽち袋に赤とゴールドのスタンプを押せば、このとおり。

    小さな丸い点はめん棒、細長い棒は市販のゴムパッドを削ってつくったもの。

    12月中旬
    味噌づくりも、できたら年内に済ませて

    画像: 友人でもある「五味醤油」から取り寄せた米麴、大豆、塩がスタンバイ。フォトジェニックな大黒さまのイラストがかわいい。「五味醤油」では、“手前みそキット” も販売している

    友人でもある「五味醤油」から取り寄せた米麴、大豆、塩がスタンバイ。フォトジェニックな大黒さまのイラストがかわいい。「五味醤油」では、“手前みそキット” も販売している

    毎年、友人たちと集まってする味噌づくり。

    「寒仕込みというだけあり、1月や2月につくることが一般的ですが、年明けは意外とあわただしいので、できれば年内にやりたいと思っています」

    ここ数年、取り寄せているのは、山梨・甲府市の「五味醤油」のもの。

    12月中旬
    クリスマスの小さな飾りを楽しむ

    画像: 背の高い赤い実は薔薇の実。木製のケーキスタンドで高低差を出した小さなしつらい。かわいらしいけれど子どもっぽくない。絶妙なさじ加減は、さすがディスプレイのプロ

    背の高い赤い実は薔薇の実。木製のケーキスタンドで高低差を出した小さなしつらい。かわいらしいけれど子どもっぽくない。絶妙なさじ加減は、さすがディスプレイのプロ

    ディスプレイの仕事のなかでメインともいえるのがクリスマス。そのため、自宅の飾りは控えめに。玄関の収納棚が季節のしつらいの定位置。

    キャンドルや小さなツリー、赤い実を飾れば一気にクリスマスムードに。「お皿にまとめると散漫にならず、おすすめです」

    12月28日
    手に入るお花で、お正月飾りをつくる

    画像: 玄関の扉に飾って。市販のお正月飾りほど主張が強くなく、さりげない存在感。「お花屋さんでその時季に手に入るもので十分だと思います」

    玄関の扉に飾って。市販のお正月飾りほど主張が強くなく、さりげない存在感。「お花屋さんでその時季に手に入るもので十分だと思います」

    お正月飾りも毎年、手づくりしているミスミさん。材料屋さんで、しめ縄と稲の小さなリースを手に入れ、水引と、そのときにあるものでササッとつくる。

    この日は、ピラカンサスの実とカンガルーポー、ヒエの実で。

    「紅白の水引が入ると、お正月感が増しますね」

    12月31日
    帰省のお供は、音楽と小さな繕いもの

    画像: 友人から繕いを頼まれているという靴下。かぎ針でモチーフを編み、穴に付けてポイントにする予定。小さな道具と材料でできるから、移動にも最適

    友人から繕いを頼まれているという靴下。かぎ針でモチーフを編み、穴に付けてポイントにする予定。小さな道具と材料でできるから、移動にも最適

    繕いや編み物などは、お正月休みにもってこい。山形の実家に持っていって、あき時間にチクチクすることも多いそう。

    「青木隼人さんの音楽を聴きながら手仕事をするのが、この季節の楽しみ。ギターの音色は、雪景色を眺めながら新幹線で聴くのにもぴったりです」

    1月1日
    初詣では夫の実家、山形・鶴岡の出羽三山神社へ

    画像: キッチンに入る扉の上のスペースを神棚の場所にしている

    キッチンに入る扉の上のスペースを神棚の場所にしている

    画像: 出羽三山神社のお守り。出羽三山では山伏修行も行っていて、ミスミさんも数年前に夫とともに参加したそう

    出羽三山神社のお守り。出羽三山では山伏修行も行っていて、ミスミさんも数年前に夫とともに参加したそう

    ミスミさんと料理家の夫・マツーラユタカさんが結婚式も挙げた羽黒山の出羽三山神社。

    冬は、とくに雪に包まれた厳かな雰囲気が素晴らしいそう。

    「12月31日に夜通し行われる火祭り「松例祭」も見もので、毎年、ここを訪れるのを帰省の楽しみにしています」

    1月3日
    お屠蘇で、お正月の気分をさらに盛り上げて

    画像: お屠蘇はガラスの酒器に入れ、お猪口は小さなカップで代用。あえてそろいでないのが、いい雰囲気。酒器とカップをのせた丸い小さなお盆は、夫のマツーラさんのおばあさまから譲り受けた

    お屠蘇はガラスの酒器に入れ、お猪口は小さなカップで代用。あえてそろいでないのが、いい雰囲気。酒器とカップをのせた丸い小さなお盆は、夫のマツーラさんのおばあさまから譲り受けた

    「ここ数年、友達や酒屋さんにいただいたこともあり、今度も手に入れたいと思っています」

    ティーバッグのような形状をしたお屠蘇に原酒とみりんを注ぎ、5~6時間おいて抽出させる。山椒や桂皮、陳皮などが入っていて、体も温まる。薬局で売っていることも。

    1月3日
    家に戻ってから、好きなものづくしのお膳

    画像: 丸餅は岡山の「蒜山耕藝」の「蒜山○餅」。菊の酢のものは山形の「もってのほか菊」を使用。お盆と菊をのせた器も山形のおばあさまが使っていたもの。箸袋は折形の本を見ながら和紙と水引で作製

    丸餅は岡山の「蒜山耕藝」の「蒜山○餅」。菊の酢のものは山形の「もってのほか菊」を使用。お盆と菊をのせた器も山形のおばあさまが使っていたもの。箸袋は折形の本を見ながら和紙と水引で作製

    山形から自宅に戻ったら、夫婦でお正月を楽しむ。おせちではなく、好きなものを少しずつのせて、お膳のスタイルで。いも煮、丸餅とあんこ、菊の酢のもの。

    「あんこ炊きも、お正月ならでは。いつもはあせってしまうけれど、ゆっくり炊いて待つ時間を楽しみます」




    〈撮影/有賀 傑 構成・文/結城 歩〉

    みすみ・のりこ
    暮らしの装飾家/ディスプレイデザイナー。店舗のディスプレイや雑誌、書籍のスタイリングを手がけるほか、暮らしを楽しくする手作りやディスプレイアイデアを発信する。2019年に夫の故郷である山形・鶴岡市にカフェ&セレクトショップ「manoma」をオープン。近著に『お気に入りの衣服を繕う』(KADOKAWA)など。
    Instagram:@min_msmi

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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