(『天然生活』2017年3月号掲載)
「ここにあったらいいな」でできた、吊り下げる台所
ほとんど移動していないように見えたのに、気がつくと、あっという間にバーニャカウダが完成していました。
野菜の皮をむいて、きざむ。蒸し器に入れて火にかける。ソースをつくる。福田春美さんは流れるような動作で料理を進めます。
その間、歩きまわったり、戸棚を開け閉めしたりする音は、ほとんど聞こえてきません。
すべての調理道具や器が、立ったまま、手を伸ばせば取れる場所に収納されている からです。
「下ごしらえは、いつもコンロの横にある、このワゴンの上でしています。バットやボウルはワゴンの下から、ピーラーは、後ろの棚にあるガラス瓶から取ります。体を横に向けると、そこはコンロの前。要するに私、なるべく動きたくないんですよね(笑)」
料理をする際の自分の動きや使いやすさを考えた末、福田さんがたどり着いたのが、「吊り下げる」収納。
天井やタイルに取り付けたバーや合計3台あるワゴンの取っ手などに、たくさんのS字フックがかかっています。そこに吊るされているのは、鍋、木べら、キッチンクロス、ざるが入ったかごなどなど。
ダイニングテーブルから手が届くワゴンには、調理後に使うハンドクリームなどを袋に入れて吊るしています。
どれも、福田さんが「ここにあると便利だな」と、位置はもちろん、高さも考えて配置したもの。
さまざまな道具がにぎやかに並んだ台所からは、料理をする楽しさがあふれ出ているようにみえます。
福田さんの考える「吊り下げる収納」のメリットは、大きく3つ。
まずは、なんといっても 取りやすい こと。引き出しを開け閉めするといったアクションを省略でき、作業がよりスムーズになります。
ふたつ目は、収納しながら乾燥もできるので、清潔さを保てる こと。
3つ目は、何がどこにあるか、一目瞭然 なこと。これは、ホームパーティ好きな福田さんにとっては大事なことです。
「週に一度は友達と食事会をしていますが、たいてい、みんなで料理をするんです。すべての調理道具や器が見える状態にしておけば、何がどこにあるか、いちいち聞かれなくてすむでしょう」
スムーズで便利な家事動線。バーニャカウダができるまで
1 お気に入りのエプロンを調理の前に装着
キッチンの隅には、好きなエプロンが常に数枚、吊るしてある。実はここ、玄関から入ってすぐの位置。食事会に来た友人たちも、好きなエプロンを手に取って、福田さんと一緒に料理を開始。
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2 道具や皿に手が届くワゴンの上で下ごしらえ
台所の中央にはイケアで買ったワゴンが2台。コンロ前のワゴンにはお鍋やバット類を収納。後ろのオープン棚に手を伸ばせば調理道具や皿が取れるので、ここで下ごしらえをするのが定番。
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3 体の向きを変えてコンロでソースづくり
ワゴンの前に立っていた福田さん、振り向くと体はコンロの前へ。ここで鍋を火にかけてソースをつくる。切った野菜を蒸し器に入れて蒸すのも同時に。から、ほとんど動いていない。
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4 使い終えた道具はシンクでつけ置き
ソースを混ぜていたスプーンなどは、使い終わったらすぐ、コンロの横のシンクへ。水と洗剤を入れて置いてあるジャグに入れる。こうしておけば、あとで洗うときに、簡単に汚れを落としやすい。
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5 ダイニングテーブルに盛りつけて完成
完成したソース、蒸し上がった野菜などを、コンロからダイニングテーブルへ運ぶ。その距離、わずか3~4歩。蒸し野菜はせいろごと、生野菜はカッティングボードに並べて華やかな食卓に。
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福田さんのキッチン間取り図
〈撮影/有賀 傑 取材・文/嶌 陽子 イラスト/木波本陽子〉
福田春美(ふくだ・はるみ)
ブランディングディレクター。ファッションディレクターとして活躍した後、渡仏。帰国後、ライフスタイルにまつわるさまざまな商品のブランディングを行う。
インスタグラム:@haruhamiru
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです