• 世田谷で2018年まで営業し、2020年6月末に、富山県立山町に移転オープンした「巣巣」。店主の岩崎朋子さんは、新しい土地に馴染みながら、新しいお店づくりを始めました。岩崎さんがつづる、富山の巣巣のこと。今回は、冬の間に描いた絵本のお話と、「巣巣」の15周年を記念して詠んだ詩 を紹介します。

    いのち巡る星

    画像: 雪の重さで折れた枝もありましたが、梅の花無事に咲きました。

    雪の重さで折れた枝もありましたが、梅の花無事に咲きました。

    ようやく雪の季節が過ぎました。まだまだ寒い日もあるのですが、春の気配を少しずつ感じます。

    雪が解けた庭からは、ふきのとうが出はじめました。梅や椿も咲いています。ご近所さんたちも、雪で折れてしまった庭木の片付けや、畑や田んぼの準備を少しづつはじめています。

    画像: 椿もあちこちで花盛り。

    椿もあちこちで花盛り。

    画像: ふきのとうも出ています。

    ふきのとうも出ています。

    画像: 周りの畑の準備も始まりました。

    周りの畑の準備も始まりました。

    3月4日からは予定通り営業も再開しました。3月18日からは木彫家はしもとみおさんの「世界でひとつの木彫り展」と、富山在住の硝子作家 金津沙矢香さんの作品展も始まっています。(4月25日まで。木、金、土、日の営業。ご来店は予約制となります。予約方法や予約状況は巣巣のwebよりご覧ください。www.susu.co.jp

    画像: 差し込む日差しが心地よい店内

    差し込む日差しが心地よい店内

    画像: 3月18日からは展示も始まっています。

    3月18日からは展示も始まっています。

    今年の富山は、1月初旬の35年ぶりの記録的な大雪をはじめ、たくさんの雪が降った冬となりました。

    巣巣は12月12日から店舗は冬のおやすみに入ったのですが、そこからずっと雪かきしていたような気がします。

    振り返って写真のフォルダを見てみると、ここ巣巣の建物がすっぽり雪に埋まった写真が5回ありました。

    もし営業していたら、駐車場の除雪ができずに毎週臨時休業となっていたことでしょう。冬の間の営業を休みにしていてよかったです。おかげさまですっかり足腰も腕もたくましくなりましたよ。

    県内で通勤の方々や、お店されている方は連日の雪かきに本当にご苦労されたことと思います。こちらは家にこもって作業の日々だったので、ありがたいことに雪の美しさを堪能していました。

    これまでも富山に移ってきて良かったなと思っていましたが、雪景色を見ていて、本当に富山に来てよかったと思ったのです。まったく呑気ですみません。

    休みの間にいろいろ製作活動ができたらいいなあ思いつつも、ノープランで突入した冬休み。雪で外出できない間に、絵を描き溜め、そこに文章をつけ冊子にまとめてみました。

    画像: 冬の間に絵を描いて冊子にまとめました。

    冬の間に絵を描いて冊子にまとめました。

    「いのち巡る星」という絵本です。以前、友人の田んぼの田植えを手伝った時にふと思ったことがきっかけで出来上がったストーリーです。

    そこの農家では、前年に収穫した米から翌年の苗を作っています。米はまた米を生み出す。当たり前のことなのだけども不思議です。何千何万回と繰り返されているその営み。今地球上にあるすべての生き物はそうして命を繋いでいます。

    まったく無機質な状態から、ここまで多種多様な生き物が発生するということが起きるのだろうか? 外の星から持ち込まれたのではないかな? と考え創作しました。

    機会があったら、どこかで絵本を手にとって見ていただけたら嬉しいです。

    画像: いのち巡る星

    ◇ ◇ ◇

    巣巣15年

    巣巣が15周年を迎えた2018年に詩の朗読のイベントをしたのですが、その時に書いた詩です。世田谷での15年間の店活動を通じて、毎日人と接することで自分の考えが次第に変わっていき、その延長として富山への移転がありました。

    久しぶりに読み返してみて、ここに載せてみたくなりました。

    巣巣15年


    10代の終わり、

    なんとなく気になって山に入り、

    木のことを学んだ。

    木、樹木、葉をつけ花を咲かせ木陰をつくる木。

    太陽の光を受け、二酸化炭素を吸収し、酸素をつくる木。

    やがて木の精に導かれ、無垢の木の家具の店を始めた。

    開業してすぐに訪れた人が告げた。

    等々力は大昔、

    富士山が噴火した時に溢れ出たエネルギーが

    一度地面にもぐってまた地表に出たところだ、と。

    朝になると扉をあけ、灯りをつけ、

    家具をみつろうで磨く。

    日々の繰り返しが織りあげた

    らせん状の巣。幾何学模様のすみか。

    誰かが来るのをひとり静かに待つ日々。

     

    しだいに、ぽつりぽつりと

    いろいろな場所から人が訪れるようになる。

    「あなたが持っているエネルギーと

    私がこの巣の中で育んだエネルギー

    それを交換しましょう」と店主は言う。

    エネルギーが満タンになると

    店主はそれを持って異国へ出向き

    その地にしかないものと交換して、巣に持ち帰る。

     

    和音を奏で、丁寧につくられたものを食す集いに人が集まる。

    よろこびの涙、悲しみの涙が流れ、幾重にも笑い声が共鳴し、

    人々が放つやわらかな光につつまれた。

    旅立つ命、生まれ出る命、どちらにも祝福と祈りを。

     

    夜が来て、また朝を迎え、

    そうして地球が4400回転ぐらいしたあとで、

    等々力にUFOが墜落したかのような大きな雷が落ち、

    変化がはじまる。

    そこに確かに"ある"のにそれまで目に入らなかったものが

    たくさん存在していることに気がつきはじめる。

    大都会の星空のように、

    新月のように、

    霧の向こうの高原のように。

    自分の支度が整うと、目に見えてくるもの。

     

    ベールのように、

    バリヤのように、

    卵のからのように、

    さなぎのように

    自分のまわりをぐるりと取り囲んでいたものが、パカリと割れ

    中から、まったく同じでまったく違う、新しい自分が生まれる。

     

    心の中にある深い森のなかの湖のほとりには

    7つの石があって

    すべての人がその石のひとつひとつをまあるく磨いて

    ぴかっと輝かせるような、そんな行程の途中にいる。

     

    今、この地球の地図の上で、

    同じ時間軸の座標の上で。

    みなお互いにエネルギーを交換しながら。

    人を裁かないこと。愛で照らしあうこと。

     

    すべての事象には、かならず光と影がある。

    影にとらわれず、心穏やかに光の方を眺める。

    心の中の石が輝く。

    つよくたくましくしなやかで

    廻りへの愛にあふれた光の人びと

    その手から生みでる、ひとつひとつの美しい表現。

    多くの人をひきつけるエネルギーと、整った波動。

     

    すべての人はこの旅のどこか途中にいる

    そして、さらなる高みにむかって

    ひとり黙々と進んでいる

     

    神が設計した完璧な生存システムをもつ

    この地球という星の上で何回も何回も生まれ生きる。

    木は地球を宇宙とつなぐアンテナ。

    何百万年前には誰もが知っていたことなのに

    いつの間にか鍵がかけられた記憶の蓋を開ける。

     

    遠くでハトが鳴いている。

    4月の終わりにしてはとても暑い日曜日の昼下がり

    誰もいない巣のなかで、

    今日も訪れる人をひとり待ちながら

    こんなことを考えている。

     


    画像: 巣巣15年

    岩崎 朋子(いわさき・ともこ)
    巣巣店主。世田谷区等々力で16年続けた家具と雑貨の店を閉店し、2020年6月富山県立山町で再オープン。New巣巣は雑貨を中心としたお茶も飲めるお店。バンド「草とten shoes」リーダー。
    https://www.susu.co.jp/
    富山県立山町鋳物師沢201−6



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