(『お手軽気血ごはん』より)
気を増やし、血を増やそう!
こんにちは。国際中医薬膳師の瀬戸佳子と申します。東京・青山にある夫が営む鍼灸院で、「薬膳部」として、漢方相談をしながら、食事のアドバイスを行っています。
こういうスタイルにしているのは、鍼灸院に駆け込む人のいろんな不調は、実は食べ物が大きくかかわっていることがものすごく多いからです。
患者さんの大半は「血虚(けっきょ=貧血)」の状態
鍼灸院には、さまざまな症状を抱えた患者さんが来院されます。頭痛、肩こり、腰痛、生理痛をはじめ、体力がない、だるくて元気が出ない、眠れない、食欲がない、万年風邪をひいている、原因不明の体調不良がずっと続く……などなど。
2~3個の自覚症状にとどまる人もいれば、不調のデパートのような人も。
患者さんの8割が女性ですが、その大半が少なくとも東洋医学で言うところの「血虚」、つまり「貧血」が症状になんらかの影響を与えています。
さらに多くの人が、血虚と合わせて「気虚(ききょ=元気がない、気力がない)」や「脾虚(ひきょ=胃腸が弱い)」を併発しています。
このような状態のことを「気血両虚(きけつりょうきょ)」と呼びます。
気血両虚の人の特徴
気血両虚の人はたいてい生真面目な人が多く、責任感が強かったり、決まりごとを律義に守ろうとしたりします。
とてもよいことですが、これが逆に自分を縛り、無理しすぎて、体や心の負担になってしまうこともあるのです。残念ながら表情もどことな~く暗く、声も小さい。
行動に移すまでに何度もため息をつき、マイナス思考。体調のむらが大きく、元気な日とそうでない日の差が非常に大きいケースが多いのです。
ちょっとドッキリするような書き方をしてしまいましたが、要は体調がいまひとつなため、ご本人の持っているポテンシャルが充分に発揮できていない。これはすごくもったいないことですよね。
貧血や体力がないこと、胃が弱いことは「体質だから変わらない」と思っている人が多いのですが、実はそんなことはありません。
私たちの体は生まれたときから常に変化し続け、細胞が代謝しながら生きています。その原料となるのが食事。つまりどのような食事をとるかで、体は驚くほど変わります。
毎日の健康のために、気楽な「はじめの一歩」
日常生活の中で、健康のために自分の意思で改善でき、かつコストがいちばん少ないのも、実は食事です。
毎日の健康のために「はじめの一歩」となるような、ちょっとした工夫で元気になれる「気血ごはん」のアイデアを紹介します。
小さくても、この「一歩」がとても大切です。最初から100点を目指さず、「そこそこかな」という及第点を目指しましょう。それがキープできるようになってきたら、少しずつ上を目指しましょう。
「自分は赤点だから」と悲観しないでください。赤点は逆に考えれば、伸びしろが非常に大きいということ。食生活をちょっと変えれば、体調がすごく変わる可能性があるということです。
合言葉は「気を増やし、血を増やそう!」
「気血ごはん」を食べて気血を増やすことで、みなさまの人生がより豊かに、元気に、楽しくなればと願っています。
「気」も「血」も足りない
気血両虚って、どんなもの?
「気と血が足りない」というと、具体的なイメージがつかみにくい人もいるかもしれません。
気血両虚の症状は、日常生活の中のあらゆる不調や不定愁訴とかかわっているほか、メンタル面にも驚くほど大きな影響があります。
ここでは代表的な症状を紹介しますが、「あ、私これ、あるある」と感じる人は要注意。
「自分の体質だから」と思い込んでいたことが、実は「気と血が足りない」が原因だったりするのです。
こんな症状
昼ごはんを食べたあと、必ず眠くなる
昼ごはんを食べた直後、眠気に襲われ、頭がぼーっとする。これは、消化機能(=脾)の弱さが原因。
機能が衰えていると、消化しきれない食べ物が「痰湿(たんしつ)」という、ねばねばしたカスやゴミのようなものに変化して、気や血の通り道をふさいでしまいます。
すると食後も、せっかく得られた栄養がすみやかに脳や他の部位にたどり着けず、気血が胃腸に集中してしまい、眠くなってしまうのです。
こういう人は、朝起きてもおなかがすいていない、食べてもすぐおなかがふくれてしまう、胃もたれしやすいなどの傾向もあります。
胃腸の脾の機能を弱くするのは、甘いもの、冷たいもの、生もの、脂っこいもの。その許容量は、体質によって人それぞれです。
改善法
朝1杯のおみそ汁
東洋医学では、ある臓器が修復され、活動的になる時間帯が臓器ごとに決まっています。
朝食を食べる朝7~9時は、胃の時間帯とされています。この時間帯にきちんと養生すれば、胃が修復され、元気になり、結果として栄養がスムーズに吸収されます。
効果的な養生は「温かいものをとること」と「発酵食品をとること」。ダントツおすすめがみそ汁です。
『養生訓』で有名な江戸時代の学者・貝原益軒(かいばらえきけん)もおみそ汁の有益性を説き、「生まれてから亡くなるまで欠かせないもの」と記しています。
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お手軽気血ごはん 春の料理
あさりと春野菜のスープ
精神を安定させ、血を補う作用のあるあさり。殻ごと料理に使うと効果が高まるのでおすすめです。
材料(2人分)
● あさり | 150g |
● 玉ねぎ(薄切り) | 1/4個 |
● キャベツ(食べやすく切る) | 2枚 |
● アスパラガス(乱切り) | 3~4本 |
● 鶏スープ | 400mL |
● 塩麴 | 大さじ1/2 |
つくり方
1 あさりはよく洗い、砂抜きする。
2 鍋にスープと玉ねぎを入れ、火にかける。煮立ったらキャベツ、アスパラを入れる。
3 あさりを加え、ふたをする。あさりの口が開いたら火を止め、塩麴を入れる。
※スナップえんどうやグリーンピース、コーン、じゃがいもなどを入れてもよい。
春のイライラで胃腸を傷めやすい人は、すっぱいものは控えめに。代わりにいも類、キャベツ、豆類は胃腸を守るのでおすすめです。
本記事は『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』(文化出版局)からの抜粋です
〈調理・撮影/瀬戸佳子 イラスト/あおむろひろゆき〉
瀬戸佳子(せと・よしこ)
国際中医薬膳師。登録販売者。早稲田大学理工学部卒、同大学院理工学研究科修了。北京中医薬大学日本校(現・日本中医学院)薬膳科卒業。会社員を経て、東京・青山の「源保堂鍼灸院」にて、「簡単、おいしい、体によい」をモットーに、東洋医学に基づいた食養生のアドバイス、レシピ提案を行う。鍼灸院併設の薬戸金堂で、漢方相談も行っている。著書に、『1週間で必ず体がラクになる お手軽気血ごはん』(文化出版局)がある。
源保堂鍼灸院・薬戸金堂
https://genpoudou.com/
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大きな病気をしているわけじゃないのに、いつも体調がイマイチ。
そして、新しい何かを始めるのがおっくうで、いつもクヨクヨ思い悩む性格。
その原因、実は「気」と「血」が足りていないからかもしれません。
現代女性の大半に、漢方で言うところの「気」と「血」が不足している「気血両虚」の状態に陥っている人が多いと言われています。
この本で紹介する「気血ごはん」を実践すれば、じわじわと効いてくる、確かな手応えを嬉しく感じるはずです。