(『心地よく、ていねいに、ゆとりを楽しむこれからの暮らし方』より)
心地よい住まいは、使い勝手と温度管理が大切
家を建てるとき、外観は近所の景色に溶け込む杉板張りで瓦屋根の和風に、内装やインテリアは洋風で生活スタイルに合わせたもの、という希望がありました。
イメージ通りの家ができましたがすぐに住むことはなく、今年になってフルタイムで住み始めました。
家を建ててから時間が経過しているので、白っぽかった外壁の板もいい具合に汚れてきて、それこそ周りの景色に溶け込んでいい感じになっています。
そして実際に住んでみてあらためて思うのは、家は外観も大切ですが、もっと大事なのは住み心地。部屋の使い勝手もそうですが、部屋の温度管理ができているかどうかは、年齢を重ね、これからの健康を考えると、より重要な課題となってきます。
鹿児島では、四季で一番厳しいのは夏の暑さ。エアコンもありますが、家自体にそもそも暑さが入らない工夫をしています。西側の窓に遮光シートを貼ったり、よしずを立てたり。湿気対策には茶箱や除湿機を使って工夫しています。
そして意外に思うかもしれませんが、鹿屋の冬は厳しい寒さです。
昼間ベランダに日が当たっているときは気温が20℃くらいあるので、火鉢を置いて日向ぼっこをしながらお茶を飲むのが何よりの楽しみです。
でも朝は、霜が降りるほど寒い日も多く、夏の暑さ対策になっている木造で風通しのいい家を温めるのが難題です。基本は蓄熱の暖房器具を使っていますが、それだとその部屋しか温まりません。
窓から冷たい外気が入ってくるので、風呂場には瞬時に温まる赤外線ヒーターを置き、トイレはじんわり底冷えがしないように窓の下にオイルヒーターを置いています。
窓が一番冷たい外気が侵入する場所なので、カーテンも重要です。裏地を入れた厚めのもので、冬用はドアの下の隙間から寒さが侵入しないように長めに作るのがおすすめです。
とにかく家は住んでみないとわからないことも多いですね。生活する中でいろいろと見えてきて、気がついたときがチャンス。そのままにするのではなく、どうしたらいいのかを考え続けることが大切だと思います。
すぐに解決することばかりではなくても、気にしていれば、人の家だったり、お店だったり、雑誌などからアイデアが見つかることもあります。そうして小さな工夫を重ねることが、自分らしい理想の家に近づく第一歩ではないでしょうか。
最近、我が家で気になっているのが部屋のライティング。夜になると本を読む場所が限られてしまい、もっといい方法がないかと考え中です。
ケーブル地獄もどうにかしたいですが、これはすべての配線が決まってから最後に取りかかるべき部分ですね。
まだまだほかにもあるのですが、気になるところを夫婦で相談しながらひとつずつアイデアを出し合って直していけば、家の中にお気に入りスペースが増え、日々の暮らしがより快適で、豊かなものになっていくと思います。
本記事は『心地よく、ていねいに、ゆとりを楽しむこれからの暮らし方』(扶桑社)からの抜粋です
門倉多仁亜(かどくら・たにあ)
1966年生まれ。ドイツ人の母、日本人の父をもち、ドイツ、日本、アメリカで育つ。国際基督教大学を卒業後、外資系証券会社に入社。東京、ロンドン、香港で勤務する。結婚後、夫の留学のために再びロンドンへ。長年興味のあった料理とお菓子を学ぶために、ル・コルドン・ブルーへ入り、グランディプロムを取得する。帰国後、料理教室をはじめ、現在は鹿児島県鹿屋市在住。雑誌や書籍などで料理やドイツのライフスタイル全般を紹介する仕事をしている。著書に『心地よく、ていねいに、ゆとりを楽しむこれからの暮らし方』(扶桑社)、『ドイツ式暮らしがシンプルになる習慣』『365日の気づきノート』(ともにSBクリエイティブ)など多数。
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2020年、東京から鹿児島に住まいを移した料理研究家・門倉多仁亜さんの暮らしの日々を綴ったエッセイ集です。鹿児島での生活と新たな習慣、おしゃれと食事のはなし、家族とのつき合い方、コロナ禍で考えたことなど。衣食住にまつわる工夫や、日々の習慣、機嫌よく過ごすための心がけなど、さまざまなテーマで暮らしのヒントをお届けします。 年齢を重ね、環境の変化を前向きに楽しむタニアさんの、ゆとりある、ていねいな暮らしを多数のカラー写真とともに紹介します。