日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。
10月8日 10時39分
二十四節気・寒露(かんろ)
朝晩の空気が冷たくなってくる季節
長雨の時期も過ぎ、秋晴れの日が続くようになります。
朝晩少しずつ寒さを感じるようになり、冷気に当たった野草の露が、霜になる季節を迎えます。
東北地方ではそろそろ紅葉の時期を迎え、渡り鳥が忙しく飛び立ち始めるころです。
寒露の期間の七十二候
10月8日から10月12日ごろ
寒露初候・ 鴻雁来[こうがんきたる]
「鴻雁」とは水鳥を意味し、雁や白鳥の総称で、南方に去ったツバメと入れ替わるように、北方から冬鳥が飛来する季節です。
オシドリの飛来もこのころ。
冬から春にかけてオスの羽色は特に美しく、地味な羽色のメスと並んで泳ぐ光景を見かけるようになります。
10月13日から10月17日ごろ
寒露次候・ 菊花開[きくのはなひらく]
秋を代表する花、菊の開花の時期です。
神社仏閣の境内などでは「菊花展」が開かれることも。
中国から伝わって交配された菊は豪華で、鑑賞や仏花に用いられますが、山野に自生する野菊もかれんで美しく、季節のうつろいを感じさせます。
10月18日から10月22日ごろ
寒露末候・ 蟋蟀在戸[きりぎりすとにあり]
ここでいうキリギリスは、実は秋の虫の代表コオロギのことといわれ、この七十二候は、そのコオロギが家の戸口で鳴き始めるころという意味です。
空気に含まれる水分と微妙な温度差を感じ取り、体を震わせて鳴く様子が、秋の気配を感じさせます。
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* 二十四節気
四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。
* 七十二候
七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。
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*本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
*二十四節気、七十二候の日付は2021年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。
<イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>
井上象英(いのうえ・しょうえい)
暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。
『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。