• ラムの香りをまとったレーズン入りのバタークリームを、さっくりと香ばしいクッキーでサンドした“マルセイバターサンド”に、坂本直行氏の手描きの花柄が愛らしい包装紙。北海道といえばの “あのお店”に、料理研究家のウー・ウェンさんが訪れました。

    「大きな愛を感じる、居心地のいいお店」

    帯広駅からほど近い繁華街に建つ、六花亭帯広本店。街の喧騒が一瞬感じられなくなるのは、店舗の周囲に植えられたとりどりの植物と、凛と建つ本店の佇まいのせいかもしれません。

    実はウーさん、六花亭のお菓子は食べたことがあるものの、お店を訪れるのはこれが初めて。でも、不思議なご縁を感じていました。

    「自宅を設計した建築家の高市忠夫さんが六花亭の一部店舗を設計していらして、『六花亭のルーバーと同じだよ〜』なんて話していらしたから、ずっとご縁を感じていたんです。だから、今日はここに来られてとてもうれしいです」

    画像: 訪れたのは落葉し始めた頃。店長自ら掃き掃除をして、清々しい空気が流れていた、帯広本店入り口。六花亭は、路面店の場合、どんな街中にあっても必ず敷地内に緑を植えるスペースを設けている

    訪れたのは落葉し始めた頃。店長自ら掃き掃除をして、清々しい空気が流れていた、帯広本店入り口。六花亭は、路面店の場合、どんな街中にあっても必ず敷地内に緑を植えるスペースを設けている

    その言葉どおり、お店に入るなり目を輝かせながら店内をあちこち動き回り、次々にかごにお菓子を入れていくウーさん。「仕事を忘れて、申し訳ございません!」とチャーミングに笑います。

    「『さあどうぞ買ってください!』というのではなくて、まるで『ゆっくり自由にご覧になってくださいね』とお声がけされているような、居心地の良さを感じます。

    お菓子それぞれを見ても、子どもから若い方、ご年配の方まで、みんなが好きなものが幅広く揃っていますよね。それからこのお値段。子どもが500円玉を握りしめて買いに来ても、たくさん買えるでしょう? 大きな器と、心からの愛を感じます」

    画像: 六花亭のシグネチャー的存在である、坂本直行氏の花のイラストレーション。その絵柄を存分に生かした包装が目を引くポテトチップスは、原材料がじゃがいも、塩、植物油だけというシンプルさ

    六花亭のシグネチャー的存在である、坂本直行氏の花のイラストレーション。その絵柄を存分に生かした包装が目を引くポテトチップスは、原材料がじゃがいも、塩、植物油だけというシンプルさ

    画像: 坂本直行氏の花柄は、文房具などの雑貨にも。お菓子と一緒に渡すのも素敵

    坂本直行氏の花柄は、文房具などの雑貨にも。お菓子と一緒に渡すのも素敵

    地元のおやつ屋さんであるという矜恃

    ウーさんの感想を伝えると、店長は「地元のおやつ屋さんであることが六花亭の原点なんです。それは、創業者の時代から今も変わりません。だから、北海道のお土産として選んでくださることはとてもありがたいことですが、それはあくまで原点の延長線上にあった、うれしいおまけのようなもの。

    まずは何よりも地元の方が親しめることを大事にしていていますし、リピーターのお客様ほど、光栄なことはありません。

    観光客の方でも、ポイントカードを持っていらっしゃったり、毎年のように訪れてくれるお客様もいらっしゃったりするんですよ」と一点の曇りもないまっすぐな笑顔で答えてくれました。

    「心を込めてお土産を」

    さて、ウーさんのお買い物はというと、頭に次々に浮かぶあの人へ、この人へと思いを巡らせながら、かごには到底おさまりきらない量になっていました。

    「これはうちのお嫁ちゃんに。贈り物って、ただモノをあげればいいっていうものじゃない。心が大事でしょう? 心を込めたものは必ず伝わります。このお土産を受け取ったとき、きっと彼女なりに感じることがあると思うのよ。まだ若い彼女に、お土産ひとつからも、そういったことを体験して、学びに変えていってほしいと思っているんです」

    画像: お嫁さんへのお土産を「ウー・ウェンのわがままセットよ」とユーモアたっぷりに話すウーさん。季節で絵柄が異なる缶(このときの缶は「かぼちゃ」)に、好きなお菓子を詰めてもらった。あらかじめお菓子がセットされたもの(「六花セレクト缶」)や、缶だけでも購入可能

    お嫁さんへのお土産を「ウー・ウェンのわがままセットよ」とユーモアたっぷりに話すウーさん。季節で絵柄が異なる缶(このときの缶は「かぼちゃ」)に、好きなお菓子を詰めてもらった。あらかじめお菓子がセットされたもの(「六花セレクト缶」)や、缶だけでも購入可能

    くまなく店内を歩き回って、お嫁さんだけのために選んだとっておきの詰め合わせ。ウーさんは、きっとさらりとさりげなく、このお土産を手渡すことでしょう。

    でも、そこに込められた、つくったひと、選んだひとの思いは、おいしいお菓子に軽やかにのって、きっと彼女の心の奥底をじんわりと温めてくれるに違いありません。

    ※  ※  ※

    訪れたのは…

    ウー・ウェン
    料理研究家。ウー・ウェンクッキングサロン主宰。中国・北京出身で1990年に来日。雑誌や書籍にて一般家庭でもつくりやすい中国料理を紹介し、人気を博す。著書に、『体と向き合う家ごはん』(扶桑社)、『本当に大事なことはほんの少し』(大和書房)など多数。

    ※  ※  ※

    SHOP DATA
    六花亭帯広本店
    住所:北海道帯広市西2条南9丁目6
    電話:0120-12-6666
    営業時間:9:00~18:00
    喫茶室営業時間:11:00〜16:30(LO16:00) ※毎週水曜定休
    ※季節によって変動あり

    〈撮影/古瀬 桂 取材・文/遊馬里江〉




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