(『暮らしをそのままの自分に寄せて』より)
家事をしない夫が成長するまで
結婚した当初、夫は家事をしませんでした。なんでもパパッと、私がこなしてしまっていたのです。けれどある日、「ふたりの暮らしなのに私だけが家のことをするのはおかしい」と大爆発。それをきっかけに、夫はどんどん家事参加率を高めていきました。最初が0で、私が100だとしたら、今の夫は60くらいでしょうか。成長~!
最初は、皿の洗い方、戻す場所、洗剤ストックの定位置など、アルバイトに教えるように順序立てて教えていきました。そのかいあって、何を聞かなくても自分で皿を洗えるように。
家事をしてはじめて収納の大切さに気づいた夫は、「これは……『片付けたくなる部屋づくり』だ!」と私の本のタイトルを叫んだものです。ものを戻しやすいとは、無駄な動きをせずに家事をするには、という仕組みの部分にようやく気づいたのでしょう。
それを聞いた私は、ドヤ顔。「よしよし気づいたか」という気持ちと、「今かい」とツッコミたい気持ちのはざまにおりました。
夫の参加で、「仕組みの不都合」に気づいた
料理だけはできなかったものの、洗濯やお風呂掃除、曜日を把握してのゴミ出しなど、夫は着々と家事の担い手になっていきました。
当事者になると、仕組みの不都合にも気がつくようになってきます。たまに手伝うだけではわからなくても、毎日繰り返すことで「なんか面倒だな」がわかってくるのです。
そんなとき夫は、「よう、整理収納コンサルタントさんよ!」となぜかラップバトル調で訴えてきます。「ふきんの場所がわかりにくいよ、あんたプロだろなんとかしろよ」みたいな。
そう言われるとこっちも引っ込んでいられませんから、彼にわかりやすい収納に変えてみます。すると、それが自分のラクにもつながったりしていい勉強になるのです。
「やりにくい」「忘れる」「取りにくい」の理由に向き合う
最近の〝夫に寄り添わせる必要あり〟な案件は、せっかく導入したみつろうラップを使ってくれないこと。こういうときは、夫に要取材です。
彼がもし、「忘れちゃうんだよね」と答えるならば、彼の目に入る場所を定位置にする必要があります。毎朝使うトレイと置くのがよさそうでしょうか。
何にせよ、「やりにくい」「忘れる」「とりにくい」などの理由があるはず。ものを片付けてくれないときも同様で、家族に「こうしてほしい」がある場合はヒアリングすることが解決への第一歩となります。
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本多さんのひとこと
ものも収納も、使う人に合わせることが大切です。人が合わせるのは難しい。
〈撮影/佐山裕子 文/本多さおり〉
本記事は『暮らしをそのままの自分に寄せて』(主婦の友社)からの抜粋です
本多さおり(ほんだ・さおり)
生活重視・ラク優先の整理収納コンサルタント。収納で大事にしているのは、ラクに片付いて家事がしやすい仕組みづくり。その考え方を重視し、誰でも自分の生活に落とし込めるような提案を心掛けている。夫、長男(5歳)、次男(3歳)の4人家族で、2020年よりフルリノベーションした中古マンション(変則ワンルーム65㎡)に暮らす。リノベーションでは、家族皆がのびのびできて家事動線のいい伸びやかな間取りを実現。主な著書に『片付けたくなる部屋づくり』(ワニブックス)、『悦な収納のすすめ』(主婦の友社)、『今の暮らしを快適に変える収納レッスン』(宝島社)などがある。
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人気整理収納コンサルタント本多さおりさんが語る、自身の基準づくりの紆余曲折には暮らしがラクになるヒントがいっぱい!
整理収納コンサルタント、本多さおりさん。本多さん自身の基準づくりの紆余曲折が本書で明かされます。自分は変わらないし、変えなくていい。でも、自分をとりまく環境や仕組みを変えて、自分に寄せることで、生きやすくなる。「生活重視、ラク優先」という本多さんの考え方には、気持ちをラクに暮らしていくヒントがたくさん。