• 大切な鉄のフライパンがこげついた、木のお皿が欠けてしまった。そんなとき、自分ですぐにお直しができたら、安心でうれしいもの。ひとり問屋の日野明子さんに、困ったときの対処法について伺いました。今回は、自分でできる簡単お直しとトラブルを避けるためのポイントについて。
    (『天然生活』2017年12月号掲載)

    大切に長く、と思って買った台所道具、使いこなしていますか?

    漆の椀や琺瑯の鍋、木の器……大切に長く、と思って買った台所道具、使いこなしていますか?

    「土鍋にひびが入った」「鉄のフライパンが錆びた」など、いつの間にか台所道具のトラブルを経験する人も多いようです。

    台所道具に造詣が深く、イベントやワークショップを多く開催する日野明子さんに、こげたり欠けたりしたときのセルフメンテナンスについて伺いました。

    台所道具を使うのは毎日のことだから、うっかり鉄のフライパンをこがしたり、木の皿や器のふちが少し欠けてしまったりするのは、しかたのないこと。

    「大事な道具がこげたり欠けたりしたらショックだけれど、琺瑯のこげは重曹を使えば大丈夫、とか、無垢の木皿ならヤスリで削ればいい、など、セルフメンテナンスの知識があると安心ですよね。知識がなくても、なんでこんなふうになったんだろう、修理の方法は? とインターネットで調べたり、つくり手に聞いたりしているうちに、いろいろわかってくることも。そんな過程も、道具を長く使ううえでの醍醐味だったりするんじゃないでしょうか」

    自分でできる簡単お直しで、トラブル解決

    こげたり錆びたりしたときに、自分でお直しできると安心です。6つの代表的なお直しを紹介します。

    [鉄のフライパン]こげついたとき

    火加減が強すぎたり、洗いすぎてなじんだ被膜をこすり落としてしまったりして、こげつく鉄のフライパン。でも、こげつきは表面だけ。元に戻せるのでご安心を

     水を張って、こげを浮かす

    画像1: [鉄のフライパン] こげついたとき

    こげたフライパンに半分くらいの高さまで水を張り、弱火~中火にかける。沸騰したら火を止めて、30分ほど、そのまま放置する

     たわしで洗ってすすぐ

    画像2: [鉄のフライパン] こげついたとき

    の湯を捨てたら、たわしで、こげを洗い落とす。すっきり落ちないしつこいこげの場合は、目の粗い金属たわしを使うのもいい

    トラブル回避のポイント

    錆とり後は野菜屑でならす

    画像1: 自分でできる台所道具の簡単お直し6とトラブル回避のポイント/ひとり問屋・日野明子さん

    錆がでた場合。錆をとり、水洗後、弱火~中火にかけ、大さじ1の食用油で野菜屑を2~3分炒める。油がなじんだら野菜を取り出す

    使い終わりに水分を残さない

    画像2: 自分でできる台所道具の簡単お直し6とトラブル回避のポイント/ひとり問屋・日野明子さん

    水分や塩分が残ると、赤錆が出る原因に。錆び防止のため、洗ったあとは弱火~中火にかけ、しっかり水気をとばすことを忘れずに

    [鉄びん]赤錆が出たとき

    鉄びん内部の赤褐色の斑点は使い込んだ証なので心配ないが、湯まで赤褐色になったら茶がらを沸かして。茶のタンニンと鉄が結合してできた被膜が、錆びの進行を防止。

     緑茶パックを入れて湯を沸かす

    画像1: [鉄びん] 赤錆が出たとき

    の湯をひと晩おいて捨てたら、新しく水を入れて湯を沸かす。その湯が透明ならOK。まだ色がついていたら、の工程を繰り返す

     水を捨てたら赤錆を再確認

    画像2: [鉄びん] 赤錆が出たとき

    鉄びんのふたを取って、15秒ほど中火にかけ、水けをしっかりとばす。ふたは布の上に逆さまに置き、内側までしっかり乾かす

     きちんと水けをとばす

    画像3: [鉄びん] 赤錆が出たとき

    内部は、トラブル時以外、触らないこと。水を沸かすと湯垢がつき、それが自然に錆止めの役割に。使用後は余熱で蒸気を必ずとばす

    トラブル回避のポイント

    鉄びんの中は絶対に触らない

    画像3: 自分でできる台所道具の簡単お直し6とトラブル回避のポイント/ひとり問屋・日野明子さん

    内側の錆をたわしでこすり、水ですすぐ。そのあと、鉄びんに水と一緒に緑茶パックを入れて湯を沸かし、20分ほど火にかける

    [土鍋]ひびから漏れたとき

    土鍋にひびはつきものなので、怖がらなくて大丈夫。使用中に、ひびから水分が漏れたら、使い始めと同様に、おもゆを入れて中火で温め、半日以上おけば目止めできる。

     鍋でおもゆをつくる

    画像1: [土鍋] ひびから漏れたとき

    小鍋に、水と炊いたごはんを茶碗半分ほど入れて火にかけ、おもゆをつくる。米粒が溶けてなくなり、ドロドロの液体になったら完成

     土鍋に移し、目止めする

    画像2: [土鍋] ひびから漏れたとき

    のおもゆを土鍋に移して火にかける。最初は弱火、ふつふつしてきたら中火にし、沸騰したら火を止める

     半日から1日、放置する

    画像3: [土鍋] ひびから漏れたとき

    の状態のまま、半日から1日放置したら、おもゆを捨て、土鍋を水洗いする。それでも漏れるようなら、を数回繰り返して

    トラブル回避のポイント

    強火を使わない

    画像4: 自分でできる台所道具の簡単お直し6とトラブル回避のポイント/ひとり問屋・日野明子さん

    弱・中火なら芯から温まるが、強火は外側だけが急激に熱が高まる。内側との温度差で膨張率が変わり、割れるおそれも。強火は禁物

    [琺瑯の鍋]こげついたとき

    強火で炒めたり米を炊いたりすると、こげつきがちな琺瑯の鍋底。でも、重曹と油を使えば大丈夫。金属たわしとクレンザーは表面を傷つけるので使わないこと。

     湯、重曹、食用油を加える

    画像1: [琺瑯の鍋] こげついたとき

    こがしてしまった鍋に、鍋の半分ほどの高さまでぬるま湯を入れる。そこに、重曹大さじ1、食用油2~3滴を加え、中火にかける

     沸騰後、半日から1日放置

    画像2: [琺瑯の鍋] こげついたとき

    が沸騰したら火を止め、そのままの状態で半日~1日放置する。放置している間に鍋にこびりついたこげが少しずつ浮いてくる

     スポンジでよく洗う

    画像3: [琺瑯の鍋] こげついたとき

    の水を捨て、スポンジに中性洗剤をつけて洗う。こげが取れたらふきんでふき、よく乾かす。こげがひどいときはとを繰り返す

    トラブル回避のポイント

    炒めもの、揚げものに使わない

    画像5: 自分でできる台所道具の簡単お直し6とトラブル回避のポイント/ひとり問屋・日野明子さん

    水けのない炒めものをすると空焚きと同じ状態になる琺瑯の鍋。中・弱火で短時間ならよいが、高温で長時間の調理は避けたい

    [銀製のカトラリー]黒く変色したとき

    銀は酸素以外のものに反応しやすく、ガスコンロから出る硫黄分や温泉卵なども変色の原因に。黒く変色させたくなければ、毎日ふいて自然な輝きを楽しむのがおすすめ

     銀磨き液で磨く

    画像1: [銀製のカトラリー] 黒く変色したとき

    ゴム手袋をして、市販の銀磨き液をしみ込ませた布で磨く。一般的な歯磨き粉で磨いても、ぴかぴかにはならないがきれいになる

     水ですすぐ

    画像2: [銀製のカトラリー] 黒く変色したとき

    ゴム手袋をしたまま、水かぬるま湯でしっかりとすすぐ。金属とはいえ、銀は軟らかい素材なので、金属たわしなどでこするのはNG

     ふきんでしっかりとふく

    画像3: [銀製のカトラリー] 黒く変色したとき

    綿や麻の柔らかい布でしっかりとふく。使わない日も、乾いたきれいな布で乾ぶきすると、変色しにくくなる

    トラブル回避のポイント

    長く使わないときは密封して

    画像6: 自分でできる台所道具の簡単お直し6とトラブル回避のポイント/ひとり問屋・日野明子さん

    銀製品を長期間使わないときは、空気に触れないよう布に包み、密閉できるポリ袋に乾燥剤と一緒に保管。日の当たらない場所へ

    [木の皿]少し欠けたとき

    木の道具はしっかり乾かすのが基本だが、日光に長く当てると、割れたり欠けたりしやすくなるのでNG。少しの欠けなら、サンドペーパーで対処し、油分補給を

     サンドペーパーをかける

    画像1: [木の皿] 少し欠けたとき

    #120~240のサンドペーパーを使いやすい大きさにカットし、欠けた部分の木目に沿ってなでるように整える。#400で仕上げる

     乾性油を塗る

    画像2: [木の皿] 少し欠けたとき

    欠けて、ヤスリをかけた部分を含め、木の皿全体にエゴマ油などの乾性油を染み込ませるように塗る。こうすると木に潤いが出る

     油分を乾燥させる

    画像3: [木の皿] 少し欠けたとき

    新しいキッチンペーパーなどで余分な油をふき取ったら、直射日光の当たらない、風通しのよい場所に置いて、しっかりと乾かす

    トラブル回避のポイント

    長時間、水につけない

    画像7: 自分でできる台所道具の簡単お直し6とトラブル回避のポイント/ひとり問屋・日野明子さん

    オイル仕上げの木の皿や器を、長時間、水に浸すと傷む原因になる。餅など、こびりつきやすい食品はのせないほうがベター

    さらに困ったときは、職人に修理の相談を

    自分ではどうしようもなくなったときは、職人さんに迷わず相談を。おすすめのプロの相談所を紹介します。

    プロだからできること。自分だからできること

    台所道具はできるだけ自分でお手入れ、といっても、お皿が割れたり、漆がはげたり、といった修理になったら、信頼のおけるプロの手にゆだねるのがよいとか。

    「包丁研ぎや欠けた器の金継ぎ、漆器やおひつの修理など、道具を買ったお店でなくても、宅配便で受け付け修理をしてくれるプロたちが全国にいます。困ったら彼らに相談してみるのも手です」

    以前、日野さんが漆の漆琳堂に直しを頼んだときは、ふちだけを直すか、全体か、つやは最初のマットな状態に戻すか、使いづやをしっかり出すかなどを聞いてくれて、理想どおりに仕上げてくれたそうです。

    「道具を熟知しているからこその質問と仕上がり。つくり手ってすごい、と改めて感じました」

    ひどい欠けや壊れた状態をつくり手側の職人さんに見せるのは、気が引ける気もしますが。

    「いえいえ。職人さんの立場からすると、こんなふうに使うんだ、と知る機会にもなるようです。正直に『こういう扱いをしちゃいました』と伝えましょう。怒ったりしませんから、ご心配なく」

    また、包丁研ぎは、砥石があるから自分で、と思っても、やはりときどきは研ぎに出すとよいとか。

    「自分で研ぐと、研いだ直後は切れ味抜群なんですが、その状態は長続きしないんですよね。プロに研いでもらうと、トマトもすーっと切れて、気持ちいいですよ」

    ただし、人気の職人や店の場合、修理に3カ月以上を要することもあるので、道具が台所からしばらく不在になることも心得て。

    大切な漆器がはげてしまったとき
    [漆琳堂(しつりんどう)]

    画像: 大切な漆器がはげてしまったとき [漆琳堂(しつりんどう)]

    福井・鯖江市で8代続く漆専門店。漆がはげているもの、欠けているものを下地から補修し、漆で塗り直す修理を行う。盆、重箱などあらゆる漆器に対応。色の変更やつやの具合などの調整もできる。

    画像: 内田さん

    内田さん

    塗りが下地からはげたり割れたりしている場合、そこから水が入って、より深い傷になります。気づいたら早めに修理に出しましょう

    福井県鯖江市西袋町701
    info@shitsurindo.com
    10:00~16:00
    休み:不定休(Web、SNSで要確認)
    http://shitsurindo.com/

    お気に入りの陶器が割れたとき
    [うるしぬりたしろ]

    画像: お気に入りの陶器が割れたとき [うるしぬりたしろ]

    岩手・盛岡を拠点に活動する漆工芸作家・田代淳さん。ブログのメールフォームから問い合わせをし、写真添付などで割れてしまった器の状態をみて見積もり→発送→修理を行う。状態にもよるが、修理期間は約5カ月。欠片は、あればあるだけ送ると、復元性も高まる。

    画像: 田代さん

    田代さん

    器の雰囲気や、使い手の好みに合う仕上げになるよう心がけています。漆で修復したのち、漆を塗り、金や銀、錫の粉で仕上げます

    https://www.facebook.com/urushinuritashiro
    (問い合わせはFacebookページのメールフォームへ)

    おひつの箍(たが)が外れたとき
    [司製樽]

    画像: おひつの箍(たが)が外れたとき [司製樽]

    かつては町に一軒あった桶屋も、その数は減少の一途。そんななか、徳島県でおひつや桶をつくりつづける職人さんが、司製樽の湯浅啓司さん。箍が外れた、黒ずみが出た、などの問題が生じたら、早めの修理を。宅配便で現物を送り、その状態をみてから見積もり、修理。

    画像: 湯浅さん

    湯浅さん

    おひつや桶は、本来、直しながら長く使いつづける道具。不具合が出てきても、修理をすればほぼ直ります。お気軽にご相談を

    徳島県阿南市那賀川町原54
    8:00~15:00
    休み:不定休
    http://www.tsukasaseitaru.com/



    〈監修/日野明子 取材・文/宇野津暢子 イラスト/今井夏子〉

    日野明子(ひの・あきこ)
    「スタジオ木瓜」代表。“ひとり問屋”として各地の工房や工場をめぐり、百貨店・店と作家・産地をつないでいる。生活用具の展示会やプロデュースにも携わる。著書に『台所道具を一生ものにする手入れ術』(誠文堂新光社)など。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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