• 家畜ではなく家族として、6頭のロバと一緒に暮らす写真家の田頭真理子さん。雄ロバのダルボンを迎え入れた日のこと、そして雌ロバのプラテーラがお母さんになったときのことを綴っていただきました。見ているだけで笑みがこぼれる、田頭さんが撮影した写真と合わせてお楽しみください。

    新しい家族は、寂しがりやで甘えん坊の雄ロバ

    雌ロバのプラテーラが来て4年目の春、生後8カ月の雄ロバが私たちの新しい家族の一員となりました。名前は「ダルボン」。J・R・ヒメネスの散文詩『プラテーロとわたし』に出てくる獣医のダルボン先生から名付けました。

    画像1: 新しい家族は、寂しがりやで甘えん坊の雄ロバ

    まだ生毛が残った、あどけない表情で見つめるダルボン君。新しい土地に不安なのでしょう、年上のプラテーラに寄り添います。

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    今までずっと一頭で暮らしていたプラテーラは、弟分のダルボンがいきなりやって来て、最初は戸惑っていました。寂しがりやで甘えん坊の年下ロバの世話が面倒なのか、ちょっと冷たいそぶりを見せたりもします。

    それでもやはりロバは群れをなす草食動物、少し慣れると一緒に草を食べ、近くで眠り、寒いときには身体を寄せ合って温まり、ときにはじゃれあったりもします。

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    画像4: 新しい家族は、寂しがりやで甘えん坊の雄ロバ

    ロバの成長は早いものです。ダルボンは日に日に体つきがよくなり、立派な雄ロバになりました。でも、相変わらずプラテーラに甘えます。プラテーラが大好きで仕方ないみたいです(笑)。

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    新しい命の誕生

    ダルボンと暮らし始めて2年が過ぎた秋のある日、父との散歩の途中にプラテーラが急にうずくまりました。なんと、赤ちゃんが出てきているではありませんか! 

    ロバは元々、草をたくさん食べるとお腹がパンパンになるので、誰もプラテーラの妊娠に気づけませんでした。突然のことでびっくりした父ですが、ロバの出産に初めて立ち会うことに。

    プラテーラは、横になって一生懸命赤ちゃんを産もうといきみます。プラテーラにとっても初めての経験。苦しそうに何度も身体を動かしたり、一度立ち上がってみたりしながら、40分ほどが経過。

    赤ちゃんロバの身体の一部が見えてきました。目や口が見えて、足も見えます。足と顔が先に出てくるのは正常な出産だそうで、父も少し安心して眺めます。

    プラテーラに何も手を貸せない父は、「がんばれプラテーラ!」と何度も何度も声をかけ、それに応えるようにプラテーラも頑張りました。

    最後は、するっと全身がプラテーラの体内から抜けて、びしょびしょに濡れた小さなロバが弱々しい眼差しでこの世に出てきました。

    画像1: 新しい命の誕生

    プラテーラは横になったまま、赤ちゃんロバをずっとなめています。赤ちゃんロバは少しの間、呆然としていましたが、しばらくすると足をまっすぐ伸ばして立とうとし始めます。身体のわりに長い足を立てるのは、容易でなさそうです。

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    何度も何度も、踏ん張って立とうとしては転びます。坂の途中で産んだため、立つ勢いあまって坂を転げ落ちてしまいました。プラテーラは、慌てて起きあがって助けにいきます。

    倒れては起き上がりをめげずに繰り替えすこと20分、ついに自分の足で立つことに成功! 家族みんなで拍手して喜びました。

    母になったプラテーラは冷静で、立ち上がった子ロバの背中をぐっと口で押して、倒れないかを試しています。よろよろすると、「もっとしっかり立ちなさい」と促すのです。

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    子ロバは自分の足で歩けるようになると、母親のお乳を探しにいきます。まだ目がよく見えていないからか、プラテーラの脇の下やおしりのほうを間違えて吸おうとし、「そっちじゃないよ」とプラテーラが身体を動かしておっぱいの方へ誘導します。

    私の父は、初乳を無事に飲んだ子ロバを住処に戻しました。

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    一方、ダルボンは……散歩でプラテーラと離れた場所で草を食べていたため、赤ちゃんが産まれたことも知りません。

    散歩から戻った後も、母子の安全のために離されてしまいます。ずっとプラテーラと一緒だったダルボンは、気が狂ったように泣きました。

    プラテーラは、子ロバにべったりでダルボンに見向きもしません。ああ、男はつらいよ、、、

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    母ロバにくっついて、とことこ歩く小さな子ロバ。柔らかくふさふさとした毛、きらきらした黒い瞳、まるでぬいぐるみのようです。

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    子ロバに近寄ると、まだ人を恐れてお母さんのところへ逃げます。プラテーラもなんだか急にお母さんっぽくなり、子ロバのことばかり気にしています。

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    子ロバは、生まれてから一日経つとしっかり歩くようになりました。「もう大丈夫だろう」と、ダルボンは母子の元へ。

    ダルボンが、子ロバにいたずらをしないかどきどきしましたが、プラテーラのところへまっしぐら。プラテーラの首を噛んで離しません。よほど寂しかったのでしょう。「もう二度と離れたくないよ」という感じが、なんとも言えません。 笑

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    子ロバには、「ロッサ」と名付けました。こうしてプラテーラ、ダルボン、ロッサ、3頭のロバ親子の暮らしが始まりました。

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    田頭真理子(たがしら・まりこ)
    広島県尾道市出身。高校卒業後、写真家立木義浩氏と出会い写真家を志す。客船「飛鳥」船上カメラマンを経て、2005年キヤノンギャラリーにて初の個展「mobile sense」開催。その後フリーランスフォトグラファーとして活動を開始。2012年より尾道の実家で家族がロバを飼い始め、ロバと家族の暮らしを撮り始める。現在は、尾道と東京を行き来する2拠点で活動中。
    https://marikotagashira.com/



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