(『天然生活』2022年4月号掲載)
姿勢は心と体の健康につながっている
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
「姿勢をよくしよう」とはよくいわれることですね。これは単に見た目だけの問題ではありません。
最近、姿勢と心身の健康にはとても深い関係があるということが明らかになっていて、研究が発展している分野のひとつなのです。
人の体は200個以上の骨が組み合わさることで支えられています。下半身の要となるのが腰椎の下にある仙骨で、上半身の要が首と下顎です。骨はすべてが有機的につながっていて、一カ所でもバランスが崩れるとすべてに影響が出ます。
体のどこかに負担がかかると、楽になろうとして自然にとる姿勢が固定され、それが悪い姿勢になっていく。その悪い姿勢がまた、心身に負担をかけるという悪循環に陥るのです。
そもそもよい姿勢とは、どういう状態なのでしょう。大切なのは自分が苦しくない態勢で、体にも負担がかかっていないこと。
チェック方法としては、立ったときに横から見て耳の穴、肩の中心、股関節、外くるぶしが一直線になっているのがよい姿勢です。
座る際は、椅子の背もたれに背中が付くくらい深く座り、足の裏が床についていること。膝を曲げたときの角度が90度だとよいでしょう。
ところがパソコンやスマートフォンなどを使う現代の生活ではどうしても背中が丸まり、肩が前に出る姿勢、いわゆる猫背になりがちです。
猫背になると肺を圧迫し、呼吸が浅くなります。血管も圧迫され、血流が悪化。筋肉もかたまるほか、体のねじれから内臓や神経にも負担がかかります。
このように姿勢の悪さは肩こりや腰痛などだけではなく、便秘、冷え、うつ病など、さまざまな心身の不調につながるのです。
よい姿勢を常に取り続けようと無理をするのもかえって不自然ですが、やはり意識しないと姿勢は変わりません。難しく考え過ぎず、「猫背になっていないか?」と折に触れて意識する習慣をつけましょう。
30分に一回は休憩をとったり、伸びや深呼吸をしたり、同じ姿勢をとり続けないように工夫するといいでしょう。家族同士、お互いの姿勢を注意し合う習慣を持つのもおすすめです。
最後に、寝ているときの姿勢について。寝相がよくないというのは決して悪いことではありません。実は人間は寝ている間、無意識のうちに体の悪いところをかばい、楽な姿勢をとっているのです。
寝相をよくしようとせず、寝ている間にさまざまな姿勢がとれるように、十分なスペースをとって眠るのがよいと思います。
〈取材・文/嶌 陽子〉
本間真二郎(ほんましんじろう)
小児科医・微生物学者。2001年より3年間、アメリカにてウイルス学、ワクチン学の研究に携わる。帰国後、大学病院での勤務を経て2009年、栃木県那須烏山市に移住。現在は同市にある「七合診療所」の所長として地域医療に従事しながら、自然に沿った暮らしを実践している。著書に『新型コロナ ワクチンよりも大切なこと』(講談社ビーシー)など。2児の父。