• 6月6日から6月20日ごろの二十四節気七十二候
    日本の“四季折々の自然の美しさ”や“伝統行事の楽しみ”を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントを『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた、暦法研究家・井上象英さんが伝えます。

    2021年の「夏至」から始まり、一年間お届けしてきた「暮らしのこよみ」。今回が、最終回です。

     

    6月6日 1時26分
    二十四節気・芒種(ぼうしゅ)

     

    “芒”を持つ植物の種をまく季節

    “芒”はイネ科の植物の穂先にある突起のことを指し、“芒種”はその種をまくころのことをいいます。

    実際に稲の種をまくのはもう少し早い時期で、芒種は田植えの時期です。

    現代のように機械に頼ったり、天気を事前に知ることができなかった昔は、稲の出来不出来は神まかせ。

    田んぼに水を張る時期は、笛や太鼓ではやしながら豊作を祈る田植え神事を行いました。

    これらの神事は現在もさまざまな形で行われる日本の伝統文化です。

    芒種の期間の七十二候

    6月6日から6月10日ごろ
    芒種初候・ 蟷螂生[かまきりしょうず]

    画像: 6月6日から6月10日ごろ 芒種初候・ 蟷螂生[かまきりしょうず]

    「蟷螂」とは「カマキリ」のこと。

    この時期、白い泡のような卵のかたまりの中から、小さなカマキリが驚くほどたくさん孵化します。

    小さくても親と同じカマ状の前足を高く挙げる姿勢は、生命力の強さを感じさせます。

    しかし、たくさん巣立っても生き残るれるのはほんの少し。

    カマキリは害虫も食べてくれる益虫なので、みつけたら成長をあたたかく見守りたいものです。

    6月11日から6月15日ごろ
    芒種次候・ 腐草為蛍[くされたるくさほたるとなる]

    画像: 6月11日から6月15日ごろ 芒種次候・ 腐草為蛍[くされたるくさほたるとなる]

    「腐草」とは、山から流れ出る清水の行く先々の川や畑の畔などに、垂れて腐った枯れ草のこと。

    腐った草がホタルに化けるとは、まさか!と思うでしょうが、そんな草のなかでホタルが幼虫から成虫になるという比喩なのです。

    静かな闇の中で楽しげにホタルが舞うようになる時期

    夜の川辺で点滅する小さな光は、見るものを不思議の世界に誘ってくれますね。

    6月16日から6月20日ごろ
    芒種末候・ 梅子黄[うめのみきばむ]

    画像: 6月16日から6月20日ごろ 芒種末候・ 梅子黄[うめのみきばむ]

    産毛をまとってふっくらとした梅の実も、いよいよ収穫の時期となり、徐々に黄色くなってきます。

    「梅雨」に「梅」という言葉が使われるほど、この時期は梅にとって大切な時期。

    収穫のタイミングを逃してはいけません。

    梅は昔から滋養や健康によいとされ、漢方薬の原点ともいわれます。

    梅干しや梅酒、梅ジャム、梅シロップなど、保存食としてさまざまに姿を変え、我々の暮らしを豊かにしてくれます。

    ありがたい季節のめぐみですね。

    * 二十四節気

    四季の移り変わりをわかりやすくするために一年を24等分したのが二十四節気。もともとは2000年以上前の、古代中国の天体観測からつくられた暦法です。二至(冬至と夏至)二分(春分と秋分)を軸として、その中間に四立(立春・立夏・立秋・立冬)がつくられており、その間をさらに前半と後半に区切ることで二十四節気と称しています。

    * 七十二候

    七十二候とは、二十四節気を気候の変化でさらに細分化したもの。ひとつの節気を「初候」「次候」「末候」という三つの“候”に区分。約5日という細かい期間を、草花や鳥、虫などの様子で情緒的に言い表しています。

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    *本記事は『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)からの抜粋です。
    *二十四節気、七十二候の日付は2022年の暦要項(国立天文台発表)などをもとにしたものです。日付は年によってかわることがあります。

    <イラスト/山本祐布子 取材・文/野々瀬広美>

    井上象英(いのうえ・しょうえい)
    暦作家、暦法研究家、神道教師、東北福祉大学特任講師。100年以上の歴史を持ち、日本一の発行部数の『神宮館高島暦』の主筆を長年務め、現在は、企業・各種団体などで講演活動、神社暦や新聞雑誌等の執筆活動など、多方面で活躍。著書に『365日、暮らしのこよみ』(学研プラス)、『こよみが導く2021年井上象英の幸せをつかむ方法』(神宮館)など多数。

    一年間、ご愛読いただきありがとうございました。この連載でご紹介した「二十四節気」と「七十二候」の楽しみはほんの一部。『365日、暮らしのこよみ』には、日本特有の四季の美しさを感じながら暮らすヒントが満載です。興味をもった方はぜひ、こちらも読んでみてくださいね。


    画像: 二十四節気・芒種(ぼうしゅ)|井上象英の暮らしのこよみ

    井上 象英
    「365日、暮らしのこよみ」(学研プラス)
    定価:1,870円

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    『神宮館高島暦』で長年にわたり主筆を務めた暦法研究家の井上象英さん。その知識は、神道学、九星気学、論語、易経、心理学にも及びます。この本は暦を軸に、日本の伝統行事や四季折々の自然の美しさや楽しみ方を誰にでもわかる、やさしい口調で語っています。1月1日から12月31日まで、日本の四季や文化伝統を日々感じながら、心豊かに暮らすヒントが満載です。



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