(別冊天然生活『がんばらない片づけと収納』より)
家族のための家だから、くつろげるのが第一
後藤さんの片づけは、ご本人いわくおおざっぱ。片づけの基本はまず、ものの住所を決めること……そんなふうにも言われますが、その基本すらちょっと緩めて、“一時置き場”をつくっています。
「ざっくりでいいと思うんです。家は、世間様のものではない、家族のための空間なんですから。 みんなが、何がどこにあるかわかって、窮屈な思いをしないこと。それが、わが家の片づけと収納 におけるルールです」
空間によって柔軟にルールを変えるのも、意識していること。
家族がくつろぐリビングは、雑多な印象にならないようにある程度は扉やふたのついたものに収納する。
対して、機動性を重要視したい台所は、むだなアクションなく目当ての道具が手に取れるように“全部出し”収納に。そのあたりのバランスの取り方もまた、後藤さんらしくいい塩梅です。
アクションを減らす収納
気分よく家事をするためには、ストレスのない収納が大切。 使用頻度や効率で、ものの住所を決めていきます。アクションを減らすための工夫について伺いました。
台所は全部出し収納に
忙しく立ち働くこの場所では、調理台前の定位置から、よく使うツールに難なく手が届くことが重要。衛生のためにも乾燥させたい道具は、吊り下げ収納にするのもアイデア。
食器の“レギュラー”棚をつくる
日常の食卓で使う食器はおおよそ決まっているから、手に取りやすい高さのオープン棚に収納します。
扉の開け閉めが面倒になるし、日々出し入れしていればほこりがたまる暇もありません。
棚板には布を敷き、すべり防止に。
アイロン道具はかごにまとめて
アイロン本体とともに、当て布やしわ伸ばし スプレーなどもひとまとめ。
スプレー類は1カ所に、など、“もの”で収納場所を分ける人も多いですが、“用途”を切り口にするのも方法。
面倒な家事に気軽に取り組む工夫でもあります。
毎日使うものは専用の置き場を
いま、気に入っている“レギュラー”のアクセサリー類は、トレイに飾る感覚で。
「ここで身に着けて気持ちをオンにして、帰ったらここで外してオフになる。着け外しと収納場所が一緒だと、失くす心配もありません」
歳を重ねたからこそ、暮らしやすさ、維持のしやすさを大切に
「もうね、歳を重ねると片づけに関してそこまでエネルギーを持てないですよ。この先は、いま以上にもっと面倒になってくると思うんですね。これからの収納は、自分で折り合いのつくところを いかに見つけるのが大切だと思います。引き出しに収まっていればよし、引き出しの中までは細かくルールを決めない、ですとか。整っていることも大切ですが、暮らしやすさ、維持のしやすさもポイントなのではと思っています」
〈撮影/小禄慎一郎 取材・文/福山雅美〉
後藤由紀子(ごとう・ゆきこ)
静岡県沼津市で暮らしの道具の店「hal」を営む。背伸びすることのない暮らし方を綴ったエッセイなどで人気。YouTubeチャンネル「後藤由紀子と申します。」や音声プラットフォームVoicy「ささやき女将のごきげんRadio」など、さまざまなジャンルに挑戦中。小田急電鉄が主宰する「ママカレ」では「ご機嫌に暮らす工夫 〜仕事のこと、わたしのこと〜」ゼミの講師も務める。
インスタグラム:@halnumazu
※ 記事中の情報は取材時のものです
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後藤由紀子さん、坂井より子さん、美濃羽まゆみさん、一田憲子さん、石川博子さん、井上由季子さんなど、17人の方の片づけや収納の工夫をまとめました。
片づけは十人十色。自分の性格や暮らしに合った、それぞれの“がんばらない片づけ"が続く秘訣です。
毎日続くことだから、できるだけ無理なくシンプルに。家で過ごす時間が、もっと楽しく快適なものになりますように。
【CONTENTS】
第1章 片づく家の工夫/第2章 心地いい収納/第3章 自分のペースで整理整頓/ドミニック・ローホーさんに聞く シンプルって、暮らしに必要ですか?