(『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』より)
80歳であけたピアス。いくつになっても忘れないおしゃれ心を
おしゃれ好きだった姉の影響で、若いときからおしゃれが大好きです。
80歳のとき、ピアスの穴をあけました。
「ピアスの穴をあけると運命が変わる」などと言われますが、そんな深刻な理由はありません。
耳にはイヤリングを必ずつけていました。「耳が決まらないと、全身が決まらない」と思うのです。
でも、イヤリングはなくしやすく、それが悩みの種でした。
そのことを、たまたま習い事の年下のお友達に話したところ、「ピアスにしたらいいわよ」と提案されました。彼女は長年ピアスを愛用している人でした。
病院を紹介してもらい、私も思いきってピアスの穴をあけることに。
けれども、ピアスも洋服などに引っかかり、わりと落とすのです。引っかからないタイプのピアスはないか、そのお友達に聞くと、「ちゃんとあるわよ」と教えてくれました。
以来、外れにくい、フープタイプのピアスを愛用しています。寝るときも入浴するときも、1日中外さないので、なくさなくなりました。
唯一の例外は、40日に1回、パーマをかけに美容院に行くときだけです。
生前整理の中で食器は減らしましたが、洋服はなかなか減らせません。
お気に入りの洋服を長く着る方です。
モラの教室で出会ったお友達は、自分で洋服を作る人でした。手仕事系の習い事では、日常的に手作りを楽しんでいる人が多いのです。
その人に作ってもらった洋服は、今でもずっと愛用しています。
私は藍染めや絣(かすり)が好きで、気に入った生地を見つけたら購入し、彼女に渡すと、とても素敵な洋服に仕上げてくれました。
世界にたった1つしかない、オリジナルの洋服。着れば着るほど体になじみ、色褪せも味になっています。これからも、大事に着続けようと思います。
いつも行っている高齢者コミュニティの中に、着物を洋服にリフォームする教室があり、参加しています。
近所のリサイクルショップで、1枚100〜200円で古い着物が買えるので、それを利用。ワンピース、ツーピース、スカートなどを作りました。ミシンは使えないので、全部手縫いです。
洋服を作ってもらっていたお友達に比べたら、まだまだ下手ですが、「自分で作った!」という喜びはあります。
コロナ禍でなかなか外出もできませんでしたが、食事に出かける機会も少しずつ増えてきました。
そんなときは、お気に入りの洋服を着てネックレスをし、いつもより少しおしゃれをします。
おしゃれはやっぱり、心を浮き立たせてくれますね。
本記事は『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』(すばる舎)からの抜粋です
〈撮影/林ひろし〉
多良美智子(たら・みちこ)
昭和9年(1934年)長崎県生まれ。55年前、神奈川県の現在の団地に引っ越す。7年前に夫を見送り、以来ひとり暮らし。昔から、お金をかけず家を居心地良くする工夫が大好き。読書や裁縫、映画鑑賞など「ひとりで過ごす時間」をこよなく愛する。65歳で調理師免許を取得、簡単でおいしい料理作りを楽しむ。そんな日常を2020年、当時中学生の孫が動画に撮り、「Earthおばあちゃんねる」としてYouTubeにアップ。またたく間に人気チャンネルとなり、登録者数が14万人を超える。最多再生動画は220万回超。「こんなふうに年をとりたい!」の声が殺到している。
◇ ◇ ◇
87歳の今も、50年以上住む古い団地で、ひとり暮らしを続ける多良美智子さん。長年かけて、居心地良く整えてきた部屋で、「最期まで過ごしたい」。そのために、健康に気を遣った暮らしや、何気ない日々の楽しみ、ひとりでできる趣味もたくさん。
年をとり、できないことが増えるのは仕方ない。できることを大いに頑張り、楽しもう――。そんな前向きな姿勢が、孫の撮るYouTube「Earthおばあちゃんねる」で大反響を呼び、あっという間に登録者数6万人に。この本では、「今が一番幸せです」と言いきる美智子さんの、生き方の秘訣を大公開。希望に満ちた「ひとり老後」を迎えたい方への指南書です。