(『天然生活』2022年1月号掲載)
ナチュラルな掃除と除菌
使うのはこの4つ
油汚れに、研磨剤として
重曹
家じゅうの酸性汚れに使える基本の洗剤。軽い酸性汚れは1%の重曹水でふき取り、二度ぶき不要。粉のままクレンザーとしても使う。クエン酸と合わせて発泡させるとこびりつき落としにも。
使用上の注意
漆器やプラスチックなどに粉のまま使用するのは、傷の原因になるのでNG。畳やアルミ製品に重曹水を使うと変色することも。
水アカ、石けんカスに
クエン酸
水アカ、石けんカスなどのアルカリ性の汚れを落とす。アンモニア臭・焼き魚・タバコなど、アルカリ性の強いにおいのもとになっている汚れを落とすのにも使える。
使用上の注意
錆びの原因になるため、すすぎはしっかりと。有毒な塩素ガスが発生するので、塩素系洗剤とは混ぜないこと。天然石には使用不可。
頑固な汚れとカビ対策に
過炭酸ナトリウム
酸性の汚れを落とす力が強く、除菌、漂白、ギトギトの油汚れにも効果があり、食器やふきん、調理具の漂白に。発泡力を利用して、排水口や洗濯槽の掃除にも使える。
使用上の注意
アルカリ性が強いので、使用時はゴム手袋などを使い、目に入ったらすぐに洗い流す。重曹同様、畳やアルミ製品に使うと変色することも。
除菌と油汚れ、水を嫌う場所に
アルコール
除菌作用があり、二度ぶき不要。カビが生えやすい場所にも便利。油汚れも溶かして落とすことができる。家電やコンセントなどをはじめ、水で洗い流せない場所の掃除にも使える。
使用上の注意
ニスやワックス塗装の家具は、塗装がはがれる可能性があるのでNG。揮発性が高いので広い範囲の掃除には不向き。
掃除する場所が違っても、4つの洗剤で十分きれいに
面倒な掃除も、少ない道具で手間を減らせば、負担も少なくなります。それはシンプルで小さく暮らすルールにも通じるもの。
ナチュラルクリーニング講座が人気の本橋ひろえさんは、「場所別にいろいろな洗剤を買いそろえるのは、置き場所も管理も大変ですよね。ナチュラル掃除なら、基本的に重曹・クエン酸・過炭酸ナトリウム・アルコールの4つの洗剤があるだけで十分きれいにできます」と語ります。
掃除する場所が違っても、同じ種類の汚れなら、同じ成分の洗剤を使えば落とせます。
家の中の汚れは、「ほこり・砂・泥」「酸性の汚れ=油・食べ物のカス・体から出る汚れ」「アルカリ性の汚れ=水アカ・石けんカス」「カビ・雑菌」の4つ。
ほこりや砂は水分がないので洗剤を使わなくても大丈夫。
酸性の汚れにはアルカリ性の重曹、アルカリ性の汚れには酸性のクエン酸で中和して汚れを落とします。
カビや雑菌には除菌効果のあるアルコール、しつこい汚れには除菌・漂白効果のある過炭酸ナトリウムを使います。
ナチュラル洗剤のメリットは安心・安全に加えて、すすぎが不要、もしくは簡単という点。
「合成洗剤はしっかりとすすがないと洗剤が残りやすく、それが掃除の手間を増やします。米ぬかやみかんの皮のような食品由来の洗剤は、一見エコなようでも食品成分が雑菌やカビのもとになり、すすぎをしっかりしないと新たな汚れを呼ぶことになります」
コロナ禍で「消毒」や「除菌」にアルコールを使う人が増えています。
70%くらいの濃度が高い消毒用エタノールは新型コロナウイルスの消毒に効果がありますが、カビ予防や除菌、掃除を目的としているため、35%濃度に薄めたアルコール水を使用します。
迷ったら、「重曹」か「クエン酸」のどちらかを
「効率的にナチュラル掃除をするには、いくつかのポイントがあります。まずひとつは、熱の力を上手に利用することです」と本橋さん。
コンロの油汚れは、使ってすぐなら熱が残っているので、水ぶきだけでもきれいに。つけおきをするときも、お湯を使うことで汚れ落ちが劇的にアップします。
「熱を利用するという意味では、重曹水はお湯でつくることも大切です。重曹は水では溶けないので、必ずお湯で溶かします。ちなみに、粉の重曹には汚れ落としや消臭効果はありません。粉のまま重曹が使えるのはクレンザーとしてだけなので覚えておきましょう」
また、重曹水やクエン酸水は濃度が高いほうが効果が高まる、と考えるのは間違いだそう。
「濃度は1%もあれば十分。重曹は8%までしか水に溶けず、それ以上は粉となって残り、ふき取りの手間が増えるだけです」
どの汚れにどの洗剤を使っていいのか覚えられないという人もいるかもしれませんが、
「迷ったら、重曹かクエン酸のどちらかを使ってみてください。重曹で落ちなければクエン酸が正解。たとえ間違えても問題ありません」
日常の掃除はもちろん、今年は大掃除もナチュラル掃除で手間を減らしてみませんか。
本橋さん愛用アイテム
本橋さんのお気に入りは「シャボン玉石けん」のシリーズ。「掃除で日常的に使うことを考えると100円ショップは、実は割高。ある程度量がある方が結果的にお得」。アルコールは消毒用エタノールを薄めて使用。
適材適所のアイテム選びが大切
ナチュラル掃除は、場所と汚れに合わせて正しい洗剤を選ぶことがポイントです。
台所
キッチンの汚れはほぼ食品と油汚れなので、重曹が活躍。汚れがついたらすぐに掃除を。五徳のこげ付きや排水口のヌメヌメも毎日の掃除を習慣にして。
リビング
ほこりなどの乾いた汚れにはハンディワイパー、電化製品など、水が苦手な場所の手アカや食品汚れにはアルコールが便利。換気口も定期的にアルコールで掃除を。
*布や合皮素材にはアルコールが使えますが、素材や加工によって使えないものもありますので事前にご確認ください。
お風呂
浴槽や床、小物類の汚れは、体の角質(アカ)が原因なので重曹で。鏡や蛇口の汚れは主に水アカなのでクエン酸、カビは過炭酸ナトリウムで掃除を。
トイレ
便器全体はアルコールで除菌掃除。アンモニア臭の原因となる尿石やにおいが気になるときは、クエン酸を。便器の輪染みなどしつこい汚れは過炭酸ナトリウムで。
掃除道具のこと
掃除の手間を減らすには、洗剤だけではなく、道具選びも重要。
「風呂掃除は乾きやすく雑菌が繁殖しにくい薄手のメッシュクロス、ふき掃除は乾きやすく目の細かいマイクロファイバークロス、ほこりにはハンディワイパーがおすすめです」
保存容器のこと
「重曹やクエン酸など粉状のものは、はちみつ用ボトルが少量を出せて計量をしやすいので便利」
過炭酸ナトリウムはガスを発生するので、ボトルに入れる場合はひと月に1度はふたを開けること。スプレーボトルはアルコール使用可能か確認して
洗剤のいらない掃除
ほこりや砂など水分のない汚れはあえて洗剤を使わなくてもOK。
「リビングのほこりはハンディワイパーで、玄関の砂ぼこりはほうきで掃けば十分汚れを落とせます。砂などの掃除に掃除機を使う場合は、そのあとの掃除が楽なので紙パック式がおすすめです。しつこい汚れが固まったら、その汚れに合わせた洗剤を使ってみてください」
できるだけ掃除をシンプルにすることも小さな暮らしの知恵です。
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〈監修/本橋ひろえ 撮影/林 紘輝 取材・文/工藤千秋 イラスト/カトウミナエ〉
本橋ひろえ(もとはし・ひろえ)
理系出身の知識を生かした科学的な解説を主婦目線で行う「ナチュラルクリーニング講座」が人気。著書に『ナチュラルおそうじ大全』(主婦の友社)など。
ブログ:安心♪ 安全♪ ラクチン♪ Natural Cleaning
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです