毎日やってくる、地域猫の「しろこ」
4年前の秋。いまの家に引っ越してきたら、ご近所のボイラーの上で、2匹の黒猫が寝ていました。
1匹は真っ黒で体が大きく通称くろちゃんと呼ばれていて、もう1匹は体が小さく白い靴下とよだれかけをしたような柄で通称しろちゃんと呼ばれていました。2匹は地域猫で、避妊手術をされていたり、ご近所でご飯をもらったりしている姉妹猫でした。
2カ月くらいたったある日、通称しろちゃんが私の後をついてきました。そして、玄関を開けたらなんのためらいもなく家の中にも入ってきたのです。
すぐに出たいっていうかなーと思っていたのですが、ずっとゴロゴロ喉をならしていて終始ご機嫌。
そのうち、毎日毎日やってきては入ってくつろいでいく日々が続きました。
夜中でも家の周りで鳴いて、入れるまで待っているまでに。段々と家にいるときの方の時間が長くなってきました。
病気の発覚とともに、迎え入れることに
接する時間が増えてくると、しろちゃんの異変に色々と気づくようになりました。病院へ連れて行くと、いくつかの病気が。定期的に治療をした方がいいとのことでした。
そして、体重が3kgと小さかったのですが、すでに10歳くらいのシニアということがわかり、このまま外で暮らすのは難しいと判断して「中川しろこ」としてうちの家族として迎え入れました。
家でのトイレもすぐに覚える順応性の高いしろこ。ですが、最初は外に出たがるかと思いきや、やわらかい布団というものを知ってしまい、2階の寝室にことあるごとに行きたがったり、冬の寒い日は、窓を開けると寒いみたいでそっぽ向いて反対に行ってしまうほど。
しろこは、ずっとずっと家で暮らしたかったのかもしれませんね。
また、外猫として10年ほど暮らしていたとは思えないほどの人好きの甘えん坊ぶり。
人に撫でてもらうのが大好き。人の膝に乗るのが大好き。
いつも、一緒にいる家族だけではなく、お客さまにももちろん甘えん坊。「元野良ちゃんでもこんな猫もいるんだね」ってよくいわれます。
しろこ、おしゃべりさんで頑固な一面も。
かまってくれなかったり、気に入らないことがあるとずっと鳴き続けるかボイコット。どんなに暑い日でも布団に潜り込んで寝たいなど、なかなかマイペースなしろこです。
いま、約14歳。
腎臓の数値がひっかかるようになり、体の衰えも感じる時はあるけれど、少しでもしろこらしい毎日を過ごさせてあげれたら、私たち家族は幸せです。
一方のくろちゃんは、人間があまり好きではなく近寄ってきてくれませんが、ごはんを地域の方にもらっていて、いまでも元気に地域猫として頑張っています。
猫もそれぞれ。
外ですごしたい子もいれば家で過ごしたい子もいる。
外で過ごしたい子、外でしか暮らせない子には、地域猫として温かい気持ちで見守っていただけたらと思います。
中川たま(なかがわ・たま)
料理研究家。
神奈川県・逗子で、夫と娘と猫のしろこと暮らす。ケータリングユニット「にぎにぎ」を経て2008年に独立。著書に『自家製の米粉ミックスでつくるお菓子』(家の光協会)など多数。2023年9月中旬に『いも くり なんきん、ときどきあんこ』(文化出版局)が発売予定。
Instagram:@tamanakagawa