(『天然生活』2021年10月号掲載)
あるものを生かしながら、暮らしの形を整えていく
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
「わが家はふだんから気軽に模様替えをしていて、DIYもその延長線上にある気がします」と話すデザイナーの山中とみこさん。同じ場所に住みつづけていると、こう変えると気持ちがいいかも、もっと使いやすくなるかもと思える部分が見えてくるもの。
山中さんもお子さんが独立したとき、いまのブランドを立ち上げたときなど、変わる暮らしのサイズに合わせてリフォームやDIYを繰り返してきました。
「次はこんなふうに変えようかなというイメージは、常に頭にあります。手元にある材料を使うので思い立ったときにすぐ取りかかれるのもDIYのよいところですね」
この一年半ほどは家にいる時間が増え、今後の生き方を考えることが多かったという山中さん。近い将来を見据え、家の中をより住みやすくするため、DIYの機会も増えたそうです。
歳を重ね、何かあったときに人に迷惑をかけないよう、まずはものを少しずつ減らして、収納もいまの自分が使いやすい場所に移動。スペースに合わせて棚などもプラスしました。
あせらず、妥協せず、あるものを生かしながら暮らしの形を整えていく。より安心で暮らしやすい山中さんの住まいは、そんなふうに手を加えながら、いまも変化しつづけています。
押し入れをオープンにし、ハンガーバーを付けて
押し入れの扉を外して使っていた収納場所にハンガーバーを取り付け、オープンクローゼットに。左右幅いっぱいにしたかったので、バーを専用の道具で、ちょうどいい長さにカット。それまで家のあちこちに収納していた洋服を一カ所にまとめることが可能に。すべてを吊るして収納できる、見やすく、選びやすいクローゼットが完成。
台所の壁に釘を打ち、引っかけ用のフックに
かごや鍋敷き、ふるいなど、軽くて素材や形が気に入っているものは、冷蔵庫わきの壁に飾りながらオープン収納。壁に釘を打つだけの超簡単DIYが台所仕事のスペースを楽しくしてくれる。
「全部を使っているわけではありませんが、キッチンで作業するときに、ちょっと気持ちがはずむコーナーになりました」
棚板を新たに付けて、パントリースペースに
以前は、孫が来たときに使う子ども用の椅子をしまっていた扉付きの収納。成長にともない椅子が不要になったので、中に棚板を付け、食品のストックを入れるパントリーに。
棚板は、リビングにつながる下がり壁(下の写真before)を解体した際(下の写真after)に出た廃材を再利用。できるだけあるものを利用し、使いやすく直すのが山中さん流。
before
after
高さを計算しながら、飾り棚を設置
元は洋服を収納していたがクローゼットに服をまとめたことでできたスペースに、最近始めたという中国茶の道具や器を飾りながら収納。パントリーと同様、下がり壁の廃材を使って棚板を数段設置。一番下の棚板の高さは、別の場所で使っていたボックス棚や小引き出しがぴったり収まるように計算して。
分別用のごみ箱をぴったりサイズに
キッチンの棚下には分別用のごみ箱を新調。置きたい場所に合わせてぴったりサイズをつくれるのがDIYのメリット。「家飲みの機会が増えて、空きびんや空き缶が、いままでのスペースに収まらなくなったので」と山中さん。四角い箱状なら組み立てやすく、キャスターを付けたことで出し入れもスムーズ。
〈撮影/中垣美沙 取材・文/野々瀬広美〉
山中とみこ(やまなか・とみこ)
大人の普段着を扱う「CHICU+CHICU5/31」(ちくちくさんじゅういちぶんのご)のデザイナー兼主宰。リネンやコットンを中心にしたワンサイズ展開の大人服のほか、布小物やベビー服なども手がける。埼玉県所沢市にあるギャラリー&ショップ「山中倉庫」を不定期オープンしているほか、全国のショップなどで展示会を開催。著書は『古い布でつくる』(主婦と生活社)、『時を重ねて、自由に暮らす』(エクスナレッジ)、『山中とみこの大人のふだん着』(文化出版局)。
インスタグラム:@chicuchicu315
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです