(別冊天然生活『天然ねこ生活』掲載)
初めての猫との暮らしは、新たな発見の連続
アメリカン・ショートヘアのトトが角田光代さんの家にやってきたのは、2010年のこと。それまでは犬派で、猫を飼いたいと考えたことはなかったという角田さん。
「漫画家の西原理恵子さんに初めてお会いしたとき、突然“うちの猫が子どもを産んだら欲しい?”と聞かれて、“欲しいです”と答えてしまって。子猫を待っている人が6人いたから、7番目に生まれた子が来ることになったんです」
当時、鳥を飼っていた角田さん。一緒に飼うことを不安に思っていましたが、「アメショーは代々飼われてきた家猫だから、爪を研いだり悪さをしたりしない」といわれたのが決め手になったそう。
「本当に静かでいい子です。やっぱり鳥は見て狙うので仕事場に移しましたが、悪さはまったくしないですね。気を引きたいときに、してはいけないとわかっていて、障子を破ったり流し台に乗ったり、わざとダメなことをしたりはします。怒るとしょげるから、こっちが悪いことをしている気がしてしまうんです」
夫婦ともに出張が多いという角田さん。できる限りどちらかがいるようにしていますが、どうしてものときは知人の家に預けるそう。でも帰ってくると抱っこをさせてくれなかったり、目を見なかったり、明らかにすねているのだとか。
「人のことが好きで、すごくさびしがりや。ずっとくっついて歩いています。どちらかひとりいないのも嫌で、気分が安定しないみたい。遊ぶ時間が足りないときも吐いちゃうんですよ。それを防ぐために、ごはんのあと夫が1時間くらいみっちり相手をしています」
トトと暮らす前と後では、世界がすっかり変わってしまったと話す角田さん。一番変わったのは、猫に対する見方なのだそう。
「猫の顔がみんな違うこと、男顔と女顔があること、人の言葉をしゃべることがわかりました。とくに一匹で飼われている猫は、表情で何を話しているかわかりますね。以前、人見知りの猫のいる家に遊びに行ったとき、猫が『こないでーっ』っていったんですよ。あっ、しゃべったって、びっくり」
もちろんトトも、言葉を発さなくても話します。角田さんに起こされるまで布団の上でまっすぐ寝ていたり、どこか人間のようなトト。角田さんに新しい世界を見せつづけてくれているようです。
飼い主がアテレコ
うちの猫時間
今日はなんのフリ?
靴や置きもの、タオルのフリをして、ひとり遊びをするトト。飽きてしまったら、じっとりうつむいて動かなくなります。
トトの春夏秋冬
留守番中はずっと寝ているトト。そっとお布団をかけて出かけます。
夏。廊下、台所、ベッドの下と場所を選ばず、へそ天姿で背中を冷やすトト。
キャットタワーの一番上にある、ハンモックに入ると、秋の始まり。
床暖房の効いた床で、体を開いて背中を温めるトト。気持ちがよさそう。
おやつください
おやつが欲しいときはごはん処に座って、じっと見ます。
もうちょっと欲しい、のおねだりポーズ。
「もっとくれるまで、動きませんよ」といいたそう。
「くれないの? くれないの?」切ない表情で訴えつづけます。
演技派……!?
ご主人の帰りを待ちながら、寝ていると思ったら……。
帰ってくる音がしたら、サッと起きて待っていたフリ。
運動音痴だけど……
曲がりきれずに壁にぶつかったり、ちょっぴりドジなトト。
レーザーの光を追いかけるときは、テンションが上がって、高くジャンプ。
自慢の一品は「手づくりのおもちゃ」
市販のおもちゃより、ご主人がつくるおもちゃがお気に入り。耳栓やイヤホンのゴムは、材料としてストック。
猫の時間割
07:00 | 角田さんに起こされる |
07:30 | 朝のごはん、また寝る |
角田さんは仕事場へ | |
17:30 | 帰宅 |
18:00 | 夜のごはん |
19:00 | 人のごはんのあと遊ぶ |
22:00 | おやつ |
23:00 | 一緒に就寝 |
<取材・文/赤木真弓>
角田光代(かくた・みつよ )
1967年神奈川生まれ。作家。1990年に「幸福な遊戯」で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。トトとの暮らしを描いたフォトエッセイ、『明日も一日きみを見てる』(KADOKAWA)が発売中。
※記事中の情報は『天然ねこ生活』本誌掲載時のものです
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