(『天然生活』2021年12月号掲載)
冬の暮らしの一番の楽しみは薪ストーブ
「冬の朝、畑や田んぼ一面に真っ白な霜が降りて、まるで霜の花が咲いているよう。朝日が昇って光が差し込み、キラキラ輝いてとてもきれいなんです。冬の一番好きな風景です」
四国のちょうど真ん中に位置する高知県土佐町。自然豊かな山間の町で、中島子嶺麻さんは夫の洋介さんと5人のお子さんと暮らしています。
2013年に家族で土佐町に移住。古民家を改修、水は山水を引き、薪で火をおこして毎日の料理をつくっています。五右衛門風呂やコンポストトイレも手づくり。この地にあるものを工夫して使いながら、自分たちが使ったものは土に返す、循環する暮らしを大切にしています。
2015年から、この場所で暮らしを感じてもらいたいと「むかし暮らしの宿 笹のいえ」をオープン。心地よいと思える暮らしを等身大で。目の前の人も物事もそのままをまず受けとめる。子嶺麻さんや洋介さんの人柄にひかれ、循環する暮らしに共感するお客さまが訪れます。
「冬の暮らしの一番の楽しみは薪ストーブ。薪ストーブに火がともるからこそできる手仕事がいろいろあります。温かな火に守られているようで、安心するんです」
オーブン付きの薪ストーブは隣町の鉄工所でつくってもらったもの。薪ストーブの周りはいつもおいしい香りに満ち、冬の暮らしを支えてくれます。
朝の時間割
07:00 | 起床 |
07:15 | 薪ストーブでお湯を沸かして白湯を飲む |
07:20 | 湯たんぽのお湯で洗顔 |
07:35 | 朝ごはんをつくり、上の子を見送る |
07:45 | 下の子を起こし、朝ごはんを食べさせる |
08:15 | 味噌汁を飲む |
08:30 | 下の子を送り出す |
08:35 | 鼻うがいをする |
08:40 | やきいもができる |
07:15 お湯を沸かして白湯を飲む
冬の朝、薪ストーブに火を入れるのは洋介さん。部屋が暖まったころ、子どもたちも起きてきます。
「薪ストーブの上にはいつも、お湯を沸かすやかんを置いています。お湯があれば安心」
子どもたちを学校や保育園に送り出したあと、薪ストーブの隣に座ってほっとひと息。忙しい朝、ゆっくりと白湯を飲む時間は心を整えてくれます。白湯は体を内側から温め、冷え性の改善や美肌効果も。山から引いている水は甘く、体にやさしく染み渡っていきます。
07:20 湯たんぽのお湯で顔を洗う
冬の間、毎日大活躍する湯たんぽ。知人から譲り受けたブリキ製の湯たんぽです。
「夜寝る前に薪ストーブで沸かしたお湯を注ぎ、厚めのバスタオルなどで包んで布団の中に入れておきます。湯たんぽのおかげで足元もぽかぽか。ぐっすり気持ちよく眠れます」。
目覚めた朝、吐く息は白くても、湯たんぽにはまだほんのりと温かさが残っています。その湯を洗面器に注いで、顔を洗います。山水がとても冷たい冬。温かなお湯に、毎朝ほっとします。
08:15 味噌汁を飲む
大根や白菜、小松菜、春菊。そのときにある畑の野菜を薪ストーブの上でコトコト。すり鉢に味噌と少量のだしを合わせ、ゆっくりと溶きながら鍋に加えます。
自家製の味噌は、洋介さんが育てたお米でつくった麴と、畑で育てた大豆で仕込んだもの。
麴を多めに入れてつくった味噌はじんわりと甘い。新しい1日が始まる朝、今日も元気に過ごせるように「朝はお味噌汁から、という気持ちでつくっています」。家族でいただく味噌汁は、体を内側から温めます。
08:35 鼻うがいをする
鼻が詰まりやすくなる冬に欠かせないのが鼻うがい。
「ボトルにぬるま湯を入れ、汗くらいのしょっぱさになるような量の塩を加えたら、溶けるまでよく振ります。前かがみになって顔を傾け、ボトルを押しながら片方の鼻に湯を流し入れて、反対の鼻から出します。ゆっくりと交互に何度か繰り返すと、詰まりが取れて鼻の通りがよくなります」
毎日続けることで風邪予防にもなり、鼻の粘膜も鍛えられます。ときにはお風呂で温まりながらすることも。
08:40 やきいもができる
小さな鉄のフライパン、「スキレット」にさつまいもを数本入れ、もう一枚のスキレットでふたをして薪ストーブに入れておきます。
「1~2時間もしたらいい香りがしてきて、焼けたなあってわかるんです。これは学校や保育園から帰ってきた子どもたちのおやつ。子どもたちはやきいもが大好き。あっという間になくなってしまいます」
万が一、やきいもが余ったらスライスしてもう一度オーブンへ。甘くておいしい干しいもは、外出時のおやつに。
朝が楽しくなるアイテム
ごはんのお供
自家製味噌にごまや素焚糖(すだきとう)を加えてゆずに詰め、干してつくるゆべしは冬の保存食。梅干しは知人から頂いたもの。
豆炭で温めた服
豆炭は石炭などを固めたもの。火をつけ、専用容器に入れて使います。洋服で包み込むと、ほかほかと温かな服のでき上がり。
<撮影/石川拓也 取材・文/鳥山百合子>
中島子嶺麻(なかじま・しねま)
『きれいになる「ゆるマクロビ」玄米と野菜のワンプレートごはん』(家の光協会)など著書多数。https://www.facebook.com/sasanoie.kochi
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです