(『80歳。いよいよこれから私の人生』より)
慌ただしい毎日に、季節の行事でひと息を
季節の行事は、意識して楽しむようにしています。
慌ただしい毎日では、どうしても日々を楽しむのを忘れてしまいます。
「障がい児・者の親の会」のメンバーとも、「親たちで楽しく盛り上げていこう」と言って、積極的に季節の行事を企画したり、家でした行事の様子を報告し合ったりしてきました。
6人家族だったときのお正月は、お客様も多かったのでおせちを作ったり、鰤を1尾買ってきてさばいたりしていました。
でも今は、家族3人で過ごす静かなお正月です。
黒豆、数の子、紅白なますくらいは作り、元旦はお雑煮を食べます。
あとは、3人で焼肉をしたり、お好み焼きをしたりと、好きなものを食べています。
お花を飾って少しだけ華やかにもして。こんな小さなお正月も、今は楽しいです。
節分には紅白豆を作って
今年の節分は紅白豆を作ってみました。
大豆を煎って、砂糖をからめるだけ。砂糖に少し食紅を入れると赤い豆に。
紅白で並べて盛ると、見かけが華やかになります。
甘くておいしいので、年齢分以上に食べてしまいます(笑)。
たくさん作って保存し、節分以降も3時のおやつによく登場しました。
3月の節句のときは、七段飾りのお雛様を飾ります。
娘が生きていたときは、「出すのもしまうのも面倒くさいな」と飾らない年もありました。亡くなってから、娘に見せたいと思い、毎年飾っています。
お雛様を飾るときは、娘と会話をする大事な時間です。そのために、半日ほど予定を空けておきます。
「1段目はなんだっけ?」「牛車は右? 左?」なんて話しながら。
結局わからずに、取り扱い説明書を見ることになりますが(笑)。
毎回ひと仕事ですが、飾り終えると「がんばったー!」と達成感があります。家に来た人にも喜んでもらえるのがうれしいです。
5月は、ヨモギなどで和風ハーブ湯を
5月の節句は、兜の飾りを出し、ちまきを食べます。それから、菖蒲湯。
菖蒲が手に入らないときは、野原でつんできたヨモギ、家にある柿の葉などをまとめて、和風ハーブ湯にします。
湯船に入れるだけですが、青葉の香りが爽やか。柿の葉は美肌効果があるそうです。
9月の仲秋の名月のときは、お月見団子を作って、ススキと一緒に飾ります。
親の会のメンバーとLINEでお飾りを見せ合って盛り上がります。
家族の誕生日には、牛肉のステーキを食べてきました。
障がい児を連れて外食するのは難しいから、家で少しだけ贅沢を。ソースは義母の秘伝のものを受け継ぎました。みんなでワインを飲んで、非日常を楽しみました。
今でも、3人それぞれの誕生日にはステーキを食べます。
本記事は『80歳。いよいよこれから私の人生』(すばる舎)からの抜粋です
<撮影/林ひろし>
多良久美子(たら・くみこ)
昭和17年(1942年)長崎生まれ。8人きょうだいの末っ子。戦死した長兄以外はみな姉妹。2歳のときに被爆。翌年母を癌で亡くし、父と姉たちに育てられる。
高校生のときに父の会社が倒産し、進学を断念。24歳で結婚後、4歳で麻疹により最重度知的障がいとなった息子を育てる。娘は早逝。
80歳を前に、長く携わってきた社協の仕事を引退、「障がい児・者の親の会」は相談役に。「これからは私の時間!」と、これまで忙しい日々で細切れにしかできなかった趣味の織り物やピアノに、どっぷりつかる日々。料理やインテリアなど「家時間」を楽しむのが好き。
姉は、12万部のベストセラー『87歳、古い団地で愉しむ ひとりの暮らし』(すばる舎)の多良美智子さん。
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